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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2010年 7月 3日
         日本はポルトガル化する

 日本は今でこそGDP世界第2位の経済大国だが、50年100年のスパンで見ると、ポルトガルのような「世界の田舎」に凋落していくのだと思う。

 ポルトガルは16世紀に世界に覇を唱え、新大陸でスペインと覇権を争い、はるばる海を越えて種子島に鉄砲をもたらすほどの大国だった。しかし今は世界の田舎に過ぎない。名目GDPはUS$228T(2009 IMF T=10^12)で世界37位、一人当たりでも$21K(K=10^3)で世界32位だ。因みに同じ統計で日本は、$5,068Tで2位(EUを数えて3位。2010年には中国に抜かれる)、$40Kで17位(2000年には3位)、中国は$4,909Tで3位、$3.7Kで98位だ。ポルトガルの人口11M人(M=10^6)の97%がポルトガル人、3%が移民で、定住外国人が2%の日本に近い。但しポルトガルで興り欧米に飛躍したプラスティック会社や宇宙航空会社はある。国は田舎になったが、その国を飛び出して発展している会社だ。日本の将来はこういう姿ではないかと思う。

 山口県光市は私が幼稚園から高校までを過ごした故郷だ。父が東京から転勤して勤務した海軍工廠(兵器工場)の跡地に武田製薬工業光工場と新日鉄光製鉄所があるが、田舎町に過ぎない。主要港町として、また軍都として栄えた過去を思えば寂れた現在は残念だ。しかし田舎に留まることをよしとしない人達は大阪や東京で活躍している。カンロ飴を起源とするカンロ鰍ニいう製菓会社は、光市から興り全国区の会社になった。光市は残念ながら田舎に凋落したが、カンロ鰍ヘ本社を東京に移して頑張っているように、ポルトガル化するに違いない日本に飽き足らず志を高く持つ人・企業・大学は、日本を飛び出して世界に雄飛すればよいだけの話だ。

 日本の名目GDPの推移を見ると、1980年代まで急上昇を続けてきたが、1990年代に入った途端に横這いとなって20年間続いている。技術屋はこういうグラフを見ると「この変曲点でモードが変わった」と表現する。突発事件や政策ミスではなく、本質的な体質変化がモード変化だ。何が変わったのか? (1)円高(\250/$ @1985 → \120@1988 → \90)と(2)Network技術に支えられた経済の国際化Globalizationだ。その結果日本では、(a)企業の海外進出、(b)安い輸入品で低価格化、(c)労働市場底辺の劣化、(d)人口の高齢化→消費低迷、(e)中国経済伸長の影響 などが起こり、モードが変わったのだ。今日本企業が海外で生産している自動車やテレビがもし国内で生産されていたら、GDPは横這いではなかったはずだ。

 しかし未だにモード変化に気付かぬ大多数は「今は不況」「景気が良くなったら」と発言し、政府に景気対策を要望する。政府は経済の国際化対策に投資する代わりに、公共事業を増やして国債を積み上げてきた。理知的に考えれば今政府がやるべきことは、(m)消費税増税・法人税減税、(n)脱終身雇用、(o)自由貿易協定、(p)外資自由化、(q)英語教育改革、などなど島国日本を世界標準の国にすることだ。しかしそれは国民の望む所ではない。たとえ石原慎太郎氏が首相になってもこれらは進まないだろう。国民の望みは山間の谷に下る道路を短絡する陸橋をかける公共工事であり米価維持だ。先日も朝日新聞に「IMFは日本の消費税増税を勧告したが反対。金持の所得税・法人税を増税せよ」という投書が掲載された。それでなくても企業は海外に出て行くし、個人資産の海外逃避は止まらない。

 日本は国民の望みが政治に反映される民主主義国だ。経済国際化の痛みを伴う国際競争力強化を国民は望まない。自由貿易協定や外資導入には本音では反対で、国際ハブ空港より地方空港だ。理を説いて説得できる範囲を越える。だから日本はポルトガル化する他はない。それに耐えられない志の高い人や企業は、日本に拘泥せず世界で活躍すればよいことだ。

 つまり日本人と日本法人には2つの道がある。心地よい伝統の日本流の社会に留まる道と、日本を飛び出して世界で勝負する道だ。イチローは後者を選んだ。世界進出を目論む楽天は4月から社内公用語を英語とし、月曜の三木谷社長の訓示は英語になったという。東京大学は国際人のE理事を中心に「世界に通用する一流大学」を目指すそうだ。その志や良し。

 元スポーツマンの私は情勢判断とファイトの使い分けを知っている。上記の情勢判断にも拘わらず、ハートは故郷と日本を応援して行く。 以上