異常気象が続く。昨年4月に聞いた気象庁の研究部長の講演では否定されたが、私はやはり異常気象が増えていると思う。マクロの変化よりミクロの変動が格段に大きいそうだが、ベースとしてのマクロの変化にミクロの変動が乗るから、異常なピーク値が頻発しているのではないかと思う。米誌Scientific Americanの12月号はジェット気流と異常気象を語った。
昨年2月中旬に我が家周辺は、住んで36年間で初の60cmの積雪に見舞われた。大雪の直後3月初めにNew Yorkを訪れた時は大寒波の余波がまだ感じられる時期だった。お会いしたPrinceton大学教授のY氏が言われた説では、ジェット気流が地球を一周するうちに120度ずつ3サイクル南北に波打つことが多く、南に下ったジェット気流の北側の寒気で、日米欧が同期して寒波に見舞われるという。日本標準時は東経135度の明石市の時間を用いているが、140度の松戸市に日本を代表して貰うと、120度離れた場所は、東経20度のWarsaw、西経100度のSan Antonio, TXとなる。実際には地形条件が加わって正確に120度で波動するわけではなく、気象現象から見ると東京・New York・London辺りが同期しているように私には思える。
ジェット気流とは何か? 例えば東経140度(でなくてもよいが)で地球を輪切りにして東側から見ると、大気の層が見えるはずだ。地球の直径1.3万kmに対して大気の厚みは極く薄い。高度11-50kmを成層圏と言い、その下が様々な対流を起こす対流圏だ。直径の千分の1ほどの薄皮だ。ジェット旅客機は成層圏の下端を飛ぶ。赤道付近(季節によって変わるから大まかな話だ)の大気は暖められて上昇し成層圏にぶつかって南北に流れ、冷やされて南北緯30度前後で地表に下る。北半球を東側から見れば時計回りの回転運動・対流だ。これをHadley Cellと呼ぶ。南半球でも対称形の現象が起こるが、北半球だけについて話を続ける。北極付近の大気は冷やされて地表に下り、温められて北緯60度周辺で上昇し、やはり時計回りの対流になる。Polar Cellと呼ぶ。その中間の北緯30-60度では両隣の下降気流と上昇気流に影響されて反時計回りの対流となる。Ferrell Cellと呼ぶ。これら3つのCellがそれぞれ回転・対流するので3つの大気温度帯が生まれ、3つのCellの2つの境界線では急峻な温度勾配ができる。
温度が高い方が空気密度は小さくなるが、地表での気圧が同一とすれば温度が高い方が膨張によって高高度まで対流層が達し、同一高度で比べれば温度が高い方が空気密度は高くなる。よって2つの境界線では南から北に空気が流れたがる気圧傾度力が働く。しかしCorioliの力で空気流は東向きに曲げられ、気圧傾度力とCorioliの力が平衡する位置で西から東に緯度線に平行に空気は流れる。これを地衡風という。2つの境界線でそれぞれ地衡風が生じ共にジェット気流と呼ばれるが、単にジェット気流という場合はより強い北側のPolar Jet Streamを指す。即ちジェット気流は対流層の上端、成層圏の真下の高度10km前後の強い西風(東向き)だ。
ジェット気流が同一緯度を鉢巻のように巡る場合もあるが、多くの場合は南北に蛇行する。或る場所の気象条件で寒気や暖気が発達すると、温度が異なるCellの境界線が南北に移動するからだ。そこに地形の特徴が加わり約120度の間隔で、東京・New York・London辺りが同時に寒暖に見舞われることが多いということだ。昨2月に東京・New York・Londonが厳冬で私が雪掻きに大汗をかいていた頃、Californiaは異常な暖冬だった。
地球温暖化が言われているが、北極圏・南極圏の温暖化は他の2-3倍のペースで進んでいるという。氷雪が融けると太陽熱を吸収し易くなるからだ。つまり北側の境界線で温度差が縮まっている。温度差が小さいと弱い寒気・暖気が生じるだけでジェット気流が影響され蛇行し易くなる。2月には通常だと北緯50度付近、米加国境周辺に流れるはずのジェット気流が北緯30度辺りまで南下してHouston, TXやAtlanta, GAが何日も雪で閉ざされたという。同時に日本列島もスッポリとジェット気流の北側に入った。寒気が弱まる夏季にはジェット気流は北に後退する。因みに大型台風増加の原因はエネルギー源の海面温の上昇が深層にまで達してきたからだ。
異常気象の主因の1つに、ジェット気流の暴れがあったようだ。 以上