大発見だ!! 京都鴨川には鴨が居る!! 鴨だけでなく都鳥=ユリカモメもサギも居る。雁かと思われる一群の鳥がV字形を作って上空を飛び、川を遡って行った。川が鳥の道標になっているのが面白い。日頃京都に立ち寄ることはあっても鴨川をじっくり眺めることはついぞ無かったが、今回11月27日にはワイフと二人で鴨川近くの歴史ある町家に泊めてもらった。町家とは商家など豊かな市民の古風な家で、京都には多かった。
今年京都に「庵」という起業会社(http://www.iori-community.co.jp/)が産声を上げた。放っておけば朽ちるかマンションになるかという運命にある京都の伝統的な町家を保存する手段として、昔ながらの雰囲気を残しつつ改装し宿泊施設として提供しようという会社だ。既に数軒を運営している。私自身この企てに大いに賛成で成功を祈るや切だし、社長の梶浦氏も大株主の根岸氏も仕事上の仲間なので、応援したい気持がある。
今年米友人のGregが、高校に入った愛娘に「お祝いに世界中どこの国にでも1週間連れて行ってあげる」と提案した結果、2人で8月に来日した。旅程を予め相談された段階で京都では庵の町家を紹介した。これは結果的に大成功で大変喜ばれた。但し部屋を借りるのではなく1軒丸々借りるのだから、2人で泊まる予算には入り兼ね、庵への応援とGregの歓待のため結果的に私が若干の補助金を出した形になった。それはそれで良いのだが、そこに自分達が泊まったこともないのでは残念な気がして、宿泊のチャンスを狙っていた。それでこの度の紅葉の季節に訪れた次第だ。
Gregの時と同じ町家は四条と五条の間だった。町家の常で、幅数mの細長い家が軒を接している。部屋には古い家具やスダレなどの調度品が品よく配置され、水車の断片や醤油を搾った台らしき古材が意外性を伴って部屋を引き立てている。どこぞの料亭で使ったかとみえる包丁跡のある畳半畳ほどの巨大な調理台に感動した料理好きのワイフは「これで調理してみたい」と言った。全体的に落ち着いた雰囲気だ。雑草として生まれ育った私と違って、落ちぶれたりとはいえ田舎では筋の通った家柄のワイフは、黒光りがする柱や古い調度品は懐かしい古き良き少女時代を思い出させるらしい。「ここに1週間くらい泊まってゆっくりしたいわ」とのたまう。
遅く着いたので第1日目は半日だ。清水寺に歩いて行けるのが嬉しくて喜び勇んで出掛けた。松原通を東行すればそのまま清水道に入る。紅葉はなかなか綺麗だった。三年坂・二年坂が素敵な街に変貌していることに驚きながら秀吉とねねを祀った高台寺の紅葉を見た。夕食後青蓮院の楠の巨木がライトアップされたのを横目に東西線に乗り、京都南東部の小野まで足を伸ばした。小野小町の屋敷跡に建てたという人もまばらな随心院の紅葉のライトアップで、本堂の縁に坐り小町が日夜顔を洗ったという水音を聞きながら暫し随想の時を持った。ここは大当たりの穴場だった。
第2日は朝早く出立し、奈良南東の長谷寺に登った。ここの紅葉が今回の最高だった。転じて奈良南西の信貴山にある朝護孫子寺に登った。両寺とも紅葉に囲まれた巨大な山寺だ。京都からの長旅が報いられた紅葉だった。その後は法隆寺の百済観音に久しぶりに再会して帰路についた。
実は旅行時の常として第2日朝、夜明けを待って独りで散歩に出た。誰も通らない松原橋で鴨川を渡り、東岸の紅葉がまだ薄明かりでやっとそれと分かる木陰から西を振り返ると、有明の満月の下に川に面した町家が数軒並んでいる。その両側はマンションになってしまった。少し下流には本当に朽ちて傾いた屋根の町家もある。川沿いの遊歩道は、手を大きく振って行く老夫婦、自転車で行く人、ジョギングの若者、犬を連れた女性、太極拳のおばさん、など市民の憩の場になっている。白い都鳥、黒い鴨、灰色のサギが川面を行き交う。遊歩道沿いの植生はポリシーのない自然風になっている。紅葉した楓や桜、枝垂れ桜、百日紅、銀杏、柳などが渾然一体となって京風だ。東京より西だし東山があるから日の出は遅い。東山を赤く染めて7:10am頃日が昇ったのを機に宿に戻った。
紅葉とともに鴨川を見直した休日だった。皆さん京都の良さを保存する庵を利用しませんか。複数名で泊まればそんなに高くありません。 以上