店頭で「子ども格差」と大書した表紙に興味を惹かれて、雑誌東洋経済5/17号を衝動買いした。貧困が子供の将来を妨げているという特集だった。不適切な家庭環境の子供を救済する児童施設の不足、生活保護縮小の軋轢、妊婦・幼児支援の不充分、外国籍児童の(日本国民ではなく義務ではないから)不就学、富裕層の贅沢な教育などが取り上げられている。
相対貧困率とは、世帯収入の中央値(順番に並べて中央)が日本では年収476万円なので、その半分238万円以下の世帯の割合をいう。OECDの調査はなぜか年金と失業保険を別として計算するそうだが、2000年のデータで日本は13.5%、不名誉にも米国の13.7%に次いで世界で2番目に高い。勿論日本の相対貧困層は絶対値では後進国の貧困層よりかなり裕福である。
一方、年金・税金など全て考慮した世帯収入を、世帯人数の平方根で割った等価可処分所得の格差を表わすGini係数では、日本の格差は先進国では低い方で実感と合う。高い相対貧困率と両立するためには、(1)日本の年金が充実しているか(あり得ない)、(2)他先進国より世帯人数が大きいか、(3)一億総中流で収入格差は小さいが中流からこぼれ落ちた母子家庭・低学歴家庭やWorking Poorなど下流がLong Tailを成しているか、であろう。(3)の可能性が高い。日本は低収入層の公的救済に冷たい。
東洋経済5/17号の目玉は、大阪府堺市市役所の道中氏の論文の紹介記事だ。氏は市内の貧しい390世帯を聞き取り調査し社会政策学会で昨年発表した。それによると、生活保護受給世帯の72%は高校中退以下の学歴で、親の世帯も受給している2世代受給率が43%だという。子供+片親世帯の相対貧困率が日本では57.3%に上り、トルコに次いで世界第2位というOECDのデータを引用している。また日本では30-34歳の有配偶者率が50-60%だが、非正規社員だけを見ると25%に留まるのも、格差を裏書きしている。父親が専門職・管理職なら子供の大卒率は60%だが、父親が農業・ブルーカラだと14-18%という統計も紹介されている。親に離婚歴がない子供の離婚経験率は8-9%なのに対して、親に離婚歴のある子供の離婚経験率は21-23%に達するという。このように親の家庭状況が子供に継承されるという警鐘を、道中氏は鳴らしたと記事は伝えている。
しかし同一記事中に世代継承は必然ではないというデータもあった。
0.27 | 0.25 | 0.35 | ||||
(0.38) | (0.22) | (0.35) | ||||
父職業 | ------→ | 子学歴 | ---------→ | 子現職 | -----→ | 子年収 |
| 0.44 | ↑ | 0.45 | ↑ | ||||
↓(0.47) | | ↓(0.48) | | | ||||
父職業 | --------- | 子初職 | ----------- | |||
0.25 | 0.36 | |||||
(0.27) | (0.39) |
つまり、親の家庭が良くないと子供は明らかに不利だという点は明白で大いに悲観的になるが、相関係数から見れば子供次第では充分挽回の余地があり、30年前よりはその余地は大きくなっていると読むことができる。それを助けるボランティアやNPOが生活保護家庭などの子供の補習教育に尽力すると、確実に効果が出るという報告にも救われる。 大学寮で同室だった文系の2人は共に母子家庭で、アルバイトから仕送りしつつ卒業し大会社で出世した。これが今でも可能と信じたい。以上