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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2001年11月19日

             流星の雨が降った

 月初にうつせみ「流星の雨が降るか」をお届けしたが、本早朝本当に降った。国立天文台は野辺山で2am台に2千個、3am台に3千個と発表した。

 内田義昭氏ご友人の天文学者から上記「うつせみ」に訂正を頂いた。
(1)世界の天文学者の中で独りだけ日本に流星の雨を予測した独り狼のDr. David Usherと私が書いたが、正しくはAsher。知り合いにUsher氏が居たので調べもせずカナ英字変換したミス。
(2)Keplerの第2法則と書いたのは第3法則の間違いと。ウロ覚えの罪。
(3)Dr. AsherのWeb頁の計算式によれば、私が書いたスパコンは不要でパソコンで充分と。その式を解析する元気を持たない私には依然謎。
(4)予測は難しいが、せいぜい毎時20個の流星と覚悟せよと。

 (1)-(3)は素人考えの浅はかさに尽きるが、(4)は二度あったことは三度目もあって、今回も世界の正統派天文学にDr. Asherが完勝した。正統的天文学は、Tempel-Tuttle彗星が33.2年に1回太陽に近付いた直後(最近では1998年)の11月18/19日が最も見事な流星群を生じ、以降段々淋しくなるという概念のように聞こえる。それに対してDr. Asherは多体問題を解いて、数百年前に彗星の軌道に排出された宇宙塵も拡散せずにパイプ状に残っているという学説から予報している。

 どこに行けば暗く晴れた夜空があるかと、金曜からWebで天気予報を眺めていた。土曜は用事で伊豆城ケ崎に行ったので、温暖な伊豆での観測を夢見たが、どうも雲が掛かりそうなので日曜日には八王子の自宅に戻った。東京は昼間は曇るが夜は晴れるという予報だったが、日曜日9pmになっても一向に雲が退かない。一方八ヶ岳の三井の森管理事務所に2度電話したが快晴だという。しかしワイフが八ヶ岳の屋外の寒さを思い出して渋るので、東京が晴れる予報がある以上、様子を見ることにした。

 2時間ほど仮眠し、11pmにまだ八王子の空一面が雲で覆われているのを見て遂に諦め、やっと覚悟を決めたワイフと二人で中央高速を西に向かった。期待通り笹子トンネルの西は晴れていた。12mnに釈迦堂PAに車を止めて天下の大勢を眺めれば、甲府市上空に生活暖気が原因と思われる低い雲があり甲府の街の光が映っていた。これ以上西に行くなら、八ヶ岳の標高の高い所まで上らないとこの雲と甲府の光が邪魔になると判断し、釈迦堂PAに留まる決心をした。長期戦は車のエンジンと暖房をかけっぱなしでも叱られずトイレが近い場所に限る。車の中で2時間仮眠し、2:15am頃重装備の身支度で外界に出ると、もう流星がチラホラ流れていた。既に国立天文台の毎時20個の予想を越えている。夜間照明が明るい駐車場を出て、釈迦堂博物館の山に登り、葡萄畑の導入路に毛布を敷いて二人で仰向けになった。葡萄棚で東南東の空が少し欠ける他はほぼ全天が見事な夜空だ。

 2:31amに元禄時代の宇宙塵パイプの中心を抜けるというDr. Asherの計算でだったが、確かに2:30-2:40am頃が一つのピークだった。平均毎秒1個ほどの流星が飛んだ。全天に確率的に発生する。しし座の近くのものは短くゆっくり流れる。進行方向から観測するから当然だ。しし座から遠い流星は垂直方向から観察するから速く長く流れる。数個に一つは火球といって丸い火の玉が流れるように見える。その多くは流星痕といって空気をイオン化してしばらく光り続ける痕跡を残す。

 3:19amには薩長連合の頃の宇宙塵の中心を抜ける予測だったが、これも当たった。3:20am頃には平均毎秒1個より多かったから、十分間やそこらは毎時換算数千個のペースであった。一度に三つも四つも流れるから花火のようだ。3:30amには少し下火になったので早々に腰を上げ、八王子に戻った。夜間照明のない中央高速を東にドライブするうちにも、行く手に何度も流星が流れた。驚いたことに八王子は快晴だった。後で聞くと2時過ぎまでは曇っていたそうだが、粘っていれば結果的にほとんど同じ流星群を眺められたかも知れなかった。

 1998年に清里の山で見た流星群は毎分1個程度だったから、今回のは生涯初めて見る見事な流星雨だった。世界の天文学者から白眼視されつつDr. Asherは、これで3度予報を的中させた英雄となった。    以上