庭に落葉が増え、花の遅い我家の百日紅が燃えている。コスモスがあちこちで咲き乱れている。伝統的にピンクが多いが、10年ほど前から黄オレンジ色のキバナコスモスの人気が高まり、よく見かけるようになった。山里では既に山栗が落果していて、人間とリスが集果を競う。
「北脇榮次の誕生花366日カレンダー」というのがある。Webで販売しているのを毎年購入して掲げている。月めくりだが1日毎に花の写真・花言葉・短文があって、「今日は桜の日」とか「菊の日」とか季節感があって楽しい。花が乏しい冬季にはやや怪しいこじつけもあるが、大体は季節の花に対応している。なぜ365日でなくて366日かと言えば、毎年花の種類と配置はほぼ不変で、毎年2月29日の欄もあり、「2009年には2月29日はありません」と註書きしてあるという編集上の都合による。
例えば9月20日から30日の花と花言葉を列挙すれば、彼岸花・あなたを想う:野薔薇・才能豊かな人:千日紅・不朽:ひよどり花・清楚:萩・誠実:蓼・健康:菊芋・美徳:コスモス・乙女の真心:紫苑・追憶:チトニア・幸福:葉鶏頭・不老不死となっている。チトニアとは初耳だが和名は「メキシコひまわり」でインカ帝国の国花だったと短文に書いてある。熱海錦ヶ浦の道路沿いに、欧州種と思われる赤い野薔薇が咲いていた。
薔薇つながりだが、最近「筑紫茨・つくしいばら」という野薔薇があることを知った。流郷(りゅうごう)由紀子という薔薇を中心とする花の絵の作家が出展していた大皿が妙に気に入って買ってしまった。エプロンやトートバッグには色鮮やかな花を描くが、陶器には白地に青一色で描いている。作者がこの絵は筑紫茨ですよと言い、毛筆でサラサラとその名を書いてくれた。熊本・宮崎を中心として九州と朝鮮半島南部に分布する野薔薇の一種で、普通の白い野薔薇よりもコスモスに似た大き目のピンクの花を付けるとのこと。早速Web上の写真で確認したが、機会があったら見てみたいものだ。ピンクの野薔薇は日本では珍しい。
作者の展示即売会があったのは、八ヶ岳の天女山麓に俳優の柳生博氏が拓いた八ヶ岳倶楽部だった。秋色の広葉樹林の中にあるが、20年前から自ら創り育てた広葉樹林だと氏は言われる。俳優として人気が出始めて慢心が生じた(若気の至り?)と氏は言う。それで家族関係が崩壊し始めたことを反省して、30年前に八ヶ岳南麓に移住し、大自然と向き合うことで家族関係を再構築したとのこと。その喜びを大勢の人と分かち合いたくて、20年前に八ヶ岳倶楽部を拓いたという。その経緯と想いを熱く語った近著「それからの森」(講談社)は自然と人間への愛情に満ちている。という感想をAmazonの書評に投稿したと申し上げたら氏は喜んでおられた。
清里はサビレていた。繁華街西端の踏切に近い商店群は全てシャッタが閉っていて「売店舗」という看板が掛かっていた。貸主の不動産会社が倒産したのかと推察した。町中でもシャッタが目立つ。一時は女の子の憧れのメルヘン的な町として賑わっていたが、今は遠い昔だ。でも駐車場で売っている煎餅屋はワイフのお気に入りで、よく立ち寄る。
八ヶ岳西麓千四百米の高原はもう秋が深まっていた。一部の草木で既に紅葉が始まっている。下草では黄色い「秋の麒麟草」の季節だ。トリカブトがとても毒草には見えない濃い青色の美しい花を咲かせている。リンドウはまだ蕾だ。紫の花を開くのは2週間ほど先であろう。我家の敷地にあったリンドウの大株は誰かが根こそぎ持って行ってしまったから、残った若芽が育つまでに2-3年は掛かるだろう。ワレモコウがおどけたように風に揺れる。赤い花が遠くに見えたので近付いてみるとナデシコだった。薄紫の野菊が群れ咲く。ワイフが好きな花だ。薄紫の小さな鐘型の花をつつましやかにつけるのは高山植物のツリガネニンジンだ。ハギの季節は終わったがまだ一部が自己主張している。今年はナナカマドの当たり年で、赤い実がどこでもたわわに実っていて見事だ。我家のナナカマドは虫にやられて再興中だ。これも薄紫のマツムシソウももう終わりに近いがまだあちこちに咲いている。少し小型だが白いマツムシソウも見かけた。
秋はまだ始まったばかりだが、季節は着実に変わっている。 以上