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うつせみGeneral
2020年 4月17日
         低量放射線は有益

 大量の放射線を浴びると、体の細胞の遺伝子が傷つき、癌になり易く、極端な場合には命に関わることは良く知られている。広島・長崎の被爆者には放射線障害で苦しんだ人が多い。恩師元岡達教授は中学生の時に広島の爆心地近くで被爆され、壮年期までは真にお元気であったが、57歳の時に急に内蔵に異常腫瘍が発生し急速に増殖し早世された。

 問題は低レベルの放射線被曝だ(被爆と被曝を使い分けている)。最近は低レベルでも何でも放射線は危ないという世論で、魚や野菜なども「放射能不検出」でないと合格にならない。そんな馬鹿なことがあるものか。検出できるか否かは検出器の性能の問題で、食物の性質ではない。しかし「XX以下」という判定ではゼロではないことが示唆されるから世論が許さない。世論のレベルはその程度のものだ。検出器のメーカは、「XX以下」なら「不検出」と表示するように気を使っているのだろう。

 2011年の東日本大震災以前は、人々は放射線を求めて秋田県玉川温泉を典型として各地の温泉に通っていた。震災以降は、ラジウム温泉・ラドン温泉などと宣伝しているが、放射線のホの字も言わない。しかし低レベルの放射線は健康に良く、あるいは治療になると、古来知られてきた。

 高レベルと低レベルの境目はどこにあるのか? 放射能環境下の作業者は、緊急時は250mSv(ミリSievert。人体吸収線量)、通常は100mSvを越えてはならないという規制がある。100mSvの放射線を受けると、癌死が10%増えるという説が有る。日本人の癌死率を30%とすれば、日本人全員が100mSvの被曝を受けると、33%の癌死率になるということだ。100mSv以下の影響に関してはデータが無いとされてきた。

 LNT Model=Linear No-Threshold Model=直線閾値無しモデルは、それを直線比例で仮定する。100mSvで癌死率が+10%なら、50mSvでは+5%、10mSvでは+1%ということだ。逆に閾値有りモデルは、或る閾値以下の被曝は比例関係にないとする。玉川温泉で癌が治癒した例もあるのだから、玉川温泉は閾値以下であり、反って好影響をもたらすということだ。

 震災後の日本はLNTモデルで除染などを進めた。政府もマスコミも、放射線は少しでも害になり、その害が許容範囲かどうかだから、できるだけ低くしたいと考えた。その方が安全側で望ましいとの考えもあり、脱原発反対運動の高まりでそれが正しい世論誘導だと考えた面もあろう。

 それがとんでもない間違いだという著書が最近出版された。
  低線量放射線がもたらす長寿と制癌 須藤鎮世 幻冬舎 2019/3
著者は薬学博士。東大薬学修士、野村総研・産業技術総研・就実大などを経て起業。豊富なデータに基づき、LNTどころか明らかに低レベル放射線被曝は健康に良く、長寿になると次のように結論付けている。
・LNTは、1946年のNobel生理医学賞受賞の米遺伝学者Hermann Joseph Muller教授が政治的に推奨し世界に広めた根拠のない学説である。石油王で原子力普及に脅威を感じていたRockfeller財団がこれを強力に支援。
・2017年度被爆者手帳所持者の平均年齢81.41歳に、平均余命8.09年を加えた88.5歳は、日本人の平均寿命を越える*。98%は生死に関係しない低レベル被曝者なので、頑健な人だけが生き残ったという説は当たらない。 原爆被爆者のデータから、500-1,000mSv周辺が閾値で、それ以下ならば非被爆者よりも健康で、癌死率も低い。(*の論理は間違い。付録1参照。)

・鳥取三朝温泉でラドンに晒される住民の癌死率は他地域より低い。

・平均的日本人は、食物を主とする自然被曝が年間2.1mSv、X線などの医療被曝が年間4mSvある。福島の除染基準(松下註:毎時0.00023mSv=年間(x24x365)2mSvは、屋内生活時間を考えると年間1mSv)は過小。

・原発事故で放射線での死亡者は皆無。しかし無理な避難や、生活環境の喪失、放射線恐怖症のストレスなどで、原発関連死者は1,368人。結果的に、安全側を採って避難指示を出したことが裏目に出た。

・同じ被曝量でも、少量ずつ長時間に被曝した方が健康に良い。

 本書の内容を私は予め理解していたが、本書は@データでそれを示したことと、ALNTが政治的に普及した経緯を紹介した点が新鮮だった。以上

[付録1] *の統計学的論理は間違っている。x歳の人の平均余命がy年の時、x+yは 0歳以上全員の平均寿命を必ず上回る。0〜x歳の死亡リスクを乗り越えた後の話だから。しかしまあいいか。被爆者手帳所持者が長生きなのは、いずれにしても救われる。

[付録2]  放射線には、α線(陽子x2 + 中性子x2)、β線(電子線)、γ線(電磁波)、中性子線、がある。α線は、粒子が電荷を持ち吸引反発し易いし、粒子のズータイがデカいので、紙1枚の遮蔽物で止まってしまう。

 放射能は仏Nobel賞物理学者の名のBq=Becquerelを単位として計られる。毎秒崩壊する原子の数だ。一方物質1kgが放射線を吸収して1J(Joule)の熱量を発生した時の吸収放射線量を、英物理学者の名に因んで1 Grayとする。それが人体に影響する割合を線種係数と言い、α線は20、β線とγ線は1とする。1 Gyの場合に線種係数を乗算して等価線量と言い、Sv=Sievertという単位で表す。それが人体に影響する度合を、骨髄・結腸・肺・胃・乳房はそれぞれ12%、皮膚・脳・骨表面を各1%などとする組織加重係数(Σ=1)を掛けて実効線量とし、単位はやはりSvで計る。SievertはSwedenの物理学者の名である。2011年の原発事故で、放射線量が盛んに計測されたが、その単位は毎時のミリSv=mSv/hであった。