森元首相が浅田真央をけなしたとかで、今Web上でも新聞の投書欄でも森氏への非難の大合唱だ。事実としては、浅田真央が団体戦で転び、個人戦のShort Programで転んで16位に沈んだ日本時間早朝の直後2月20日の講演で森氏は次のように発言したようだ。「(Short Programを今朝見ていて)真央ちゃん。なんとか頑張ってくれと思って皆見ておられたんだろうと思いますが、見事にひっくり返っちゃいましたね。あの子、大事なときには必ず転ぶんですよね。なんでなんだろうなと。・・・・(団体戦では日本にはペアのタレントが居ないので)彼女が出て3回転半をすると、ひょっとすると3位になれるかもしれないという淡い気持ちでね。浅田さんを出したんですが。また見事にひっくり返っちゃいまして、結局、団体戦も惨敗を喫したという。 その傷が浅田さんに残ってたとしたら、ものすごくかわいそうな話なんですね。団体戦負けるとわかってる、団体戦に何も浅田さんを出して、恥かかせることなかったと思うんですよね。」
それをマスコミがつまみ食いで「あの子、大事なときには必ず転ぶ」「見事にひっくり返っちゃいましたね」「浅田さんを出して、恥かかせることなかったと思うんですよね。」と発言したと報道した。その翌朝浅田真央が見事なFree演技で涙の挽回を果たし多くの国民に感動を与えたので、尚更森氏への風当たりが激しくなった。「一生懸命やっている選手への思いやりがない」「東京Olympic組織委員会会長の森元首相がそんなことを言うのか」「森元首相は大事な時に必ず失言する」などと。森氏の発言の文脈を読めば必ずしも浅田真央を非難してはおらず、思いやりに欠けている訳でもないと私には思えるのだが、マスコミのつまみ食いを熟知し国民の感情を読み取るのは政治家の専門性のはずだから、その意味では政治家森氏は失言したと非難されても仕方あるまい。国民は感情的に反応するものだし、特に日本人は判官贔屓でもあり努力に感動する人達だ。
私も「浅田真央は大事な時には必ず転ぶから、Olympicは駄目だろう」と思っていた。Shortの朝Yahoo Newsで16位と知り「やっぱり。だけど16位まで落ちるとは予想外」と思った。翌朝は自己ベストのFree演技だったと知り「落ちる所まで落ちたから重圧が無くなり実力が出せたのだろう」と思った。重圧は真に気の毒だ。私は戦時中に日本人は天孫民族だと習ったが実はTension民族だと思う。島国で言葉が不自由なのも一因かも知れない。だが特に浅田真央は大舞台に弱い。高梨沙羅もTensionに沈んだ。
羽生結弦もFreeの冒頭で転んだ。同じ跳び方を2回してはいけないとかで、習得中で試行者が少ない4回転Salchowを冒頭にすれば、幸い跳べれば儲けものだし、跳べなくても以降の構成でSalchow以外の4回転・3回転を含む高得点の構成が組めるからと、成功率がまだ僅か20%だった4回転Salchowを敢えて冒頭に入れたのだという。Salchowは跳べなかったが構成は狙い通りで見事金メダルを獲得した。4回転Salchowは昔14歳の安藤美姫が公式戦で1度だけ跳んだそうだ。羽生も習得するに違いない。
私はSportsをするのは好きだが見るのはあまり好きではない。まして「あの投手はピンチに弱い」「彼女はバンカーショットが下手」などと自分では出来ないことをシタリ顔で批判するのは最も嫌う所だ。だから浅田真央は大舞台に弱いという客観的事実は認識しているが、それを偉そうに言ったり批判したりするつもりはない。私だって浅田真央ほどではないが大舞台で失敗した経験に不足はないからだ。それに日本選手への思い入れが平均より弱い。羽生結弦個人の活躍を祝福する点では人後に落ちないが、それで日本や日本人の評価が上がるとも思えないから、日本のために成果を上げて呉れた(上げて欲しい)とは思わない。日本人をTension民族にしているのは、日本対外国という狭隘な島国根性であろう。浅田真央のFree演技は素晴らしかったが、金=Adelina Sotnikova、銀=Kim Yuna、銅=Carolina Kostnerも感動モノだった。国を越えて祝福したい。
ビジネス界では「結果責任」が問われる。政治家も同様であろう。ここ一番の大事な所で実力が出せない性格は人格的欠点の一つと見なされる。森氏の発言もそういう意識が背景にあってなされたものと思う。 以上