45年ぶりにMexico Cityを訪れた。1963年にFulbright委員会から支給された留学帰国用の当時高価だったSan Franciscoまでの航空券を、当時安価だった列車の切符に替えて、Chicago→Minneapolis→Yellowstone→Denver→Houston→Mexico City→Mexicali→Los Angeles→San Franciscoを巡って帰国した。私にはそれ以来の、ワイフには初めての滞在だ。
当時直径4cmほどの立派な銀硬貨だったMexican Pesoが、米国の1cmほどの薄い銀硬貨Dimeにも満たない8 Centsだったことに驚き、為替差を満喫した。Dimeもその後銅のサンドイッチになったが、Pesoはインフレに苦しみ、一昔前に1/1,000にデノミして、今はPesoは丁度10 Centsだ。日本人にとってこんな判り易い為替はない。値札にゼロを一つ加えれば¥、ゼロを一つ落とせばUS$になる。尤も値引き交渉が前提の値札そのものがあまり当てにはならない。米国との自由貿易協定と合法不法の米国出稼ぎで、Mexico経済は潤っている。Californiaで運転手、料理人、庭師などが仲間内で話すのは必ずスペイン語だ。彼らのおかげで米経済は回っているし、Mexicoも外貨を獲得している。
Mexicoは白人からインディオ原住民までの肌色のSpectrumがある国で、経済力も肌色に比例しており、所得格差を示すGini係数は世界で指折りの高さを持つ。同様の肌色事情のBrazilの係数が60%で世界一の格差を誇り、Mexicoは47%でこれに次ぐ。米国=中国が44%だ。小沢氏が「世界で一番格差が開いた国になった」と国会で食言した日本は、独と並んで27%、世界最低格差水準のSwedenの22%を別にすれば最も低い水準だ。
電車内の路線図は、駅それぞれのマークの下に小さい文字で駅名が書いてある。何と不親切なのだろうと目を凝らして小さな文字を読み、下車駅を間違えないようにしていたが、駅の表示にもマークが併記されていることに気付いてからは、外国人にも判りやすい便利なシステムだと感心した。日本でも渋谷は犬、恵比寿は神様の絵にしたら判り易いではないか。そこでふと気付いて尋ねてみたら、15年前までは文盲率22%だったが、大人を夜学に通わせる大Projectの結果、今では10%になったとのこと。高学歴の女性は結婚しずらく独身を通す傾向があると聞いたので、ウチのワイフも4年制大学出で結婚は困難だったが私が救済したと説明しておいた。
日本ではSlimな女性が美しいとされDietばやりだが、Brazilでは太目の女性が美人とされる、と当地で聞いた。Mexicoで見ているとどうもBrazil標準ではないかと思われたので、好奇心から勇気を奮って尋ねてみるとやはりそうだった。暑い国だから体型が魅力の大きな要因になると解釈した。我々夫婦が出歩くと皆振り返るほど注目を浴びた。日本人や東洋人が少ないし、ガイド無しで個人で歩いている人は珍しいのだろうと思った。それにしても私よりもワイフに注目が行くのは、まだワイフに東洋の魅力の残り香があるのかも知れないと、夫としては身贔屓な解釈をした。
Mexico City周辺での英語の通じ方は東京周辺とほぼ同レベルだ。運転手に聞いたら、英語が出来れば給料は1.5倍、日本語なら2倍とのこと。外国語が出来ても出来なくても給料に影響が無いのは世界でも日本と米国ぐらいではないか。私の第2語学は独語で第3は仏語と米人に話すと、なぜスペイン語を勉強しなかったのかと不思議がられる。Mexicoに来るとスペイン語をやっておけばよかったとつくずく思う。英西小事典とメモ用紙を持って出歩くのだが、郊外に出ると食事の指定やトイレを探すのにも苦労する。トイレは辞書を引いてRetreteと言ってみたが通じない。スペインでは通じるがMexicoでは上品過ぎる言葉使いだったらしい。Bano(nの上に波があってバーニョ), Sanitarios、W.C.がMexicoで通じるトイレだった。スペイン語にWは無いから輸入語で、ダブリュウ・セイと読む。田舎の有料トイレで金を払うと女性には紙を数十cmちぎって渡してくれる。しかし紙を流すと詰まるから、紙は備え付けのくずかごに捨てる。そのことを説明する前にトイレに入ってしまったワイフから、しかし正しい状況判断をしたと聞いて、ワイフへの尊敬が一段と高まった。
そんな気ままな旅を楽しんでいる。以上