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うつせみAdvanced
2018年10月19日
         2018年Nobel経済学賞

 今年のNobel経済学賞は、マクロ経済学モデルに貢献した2人に授与された。Yale大からMITでPhDを取ったYale大教授のWilliam D. Nordhausは1941年生まれ。彼の経歴書が面白くて、"He was born in Albuquerque, New Mexico (which is part of the United States)"とあった。Chicago大のPhDでStanford大を経てNew York大教授のPaul M. Romerは1955年生まれだ。Nordhaus教授の受賞理由は"for integrating climate change into long-run macroeconomic analysis"で、気候変動をマクロ経済モデルに盛り込んだ功績にある。Romer教授は"for integrating technological innovations into long-run macroeconomic analysis."で、技術革新を盛り込んだことにある。これらはマクロ経済学を発展させたという。

 かっての経済学は、気候変動も技術革新も、経済に影響する外的=exogenousな要因として扱ってきたが、それらを経済と相互に影響し合う内的=endogenousな要因として取り込んだ点が評価されている。

 1970年代にYaleの若い教職にあったNordhaus教授は、地球温暖化を研究し、経済活動がそれを引き起こす仕組みと、温暖化の社会的影響を理解できるようなツールを、学際的な協力を得て作り出し、次の3つの総合評価モデル=Integrated Assessment Model=IAMsの作成を主導したという。

 (1)炭素循環モデル:二酸化炭素が大気、海洋面と生物界、深海に循環し、結局大気にどう影響するかを表すモデル。

 (2)気候モデル:大気中の二酸化炭素や他の温暖化ガスが、地球の熱の収支にどう影響し、地球の温度をどう変えるかというモデル。

 (3)経済成長モデル:炭素税などの政策が、経済に影響し、二酸化炭素などの排出に影響する結果、GDPがどう変化するか、また地球温暖化による被害がどうなるかを示すモデル。

 これらから、全世界的な炭素税や、炭素排出権売買システムなどの政策が望ましいという根拠が得られているという。実際教授は、炭素税の税率を4種類仮定して今後2100年までの炭素排出の推移を予想している。

 一方Romer教授は1980年代後半に、世界100ヶ国の過去25年間(1960-85)の1人当たりの収入の伸び率を調べ、将来25年先の2010年代の収入を予測したグラフを発表した。今見ると実績に近い数値を予測しているとのこと。伸び率が僅か2%違うだけで40年も経つと2倍の差になるという。(私見:x%とx+2%の対比でxが小さく10%以下ならそうなる。)これを見た教授は成長率の重要性を再認識し、その原因を研究したという。

 それまでの理論では、物理的資本の蓄積で経済成長は進むとされていたが、長期で見ると資本を連続注入しても効果は逓減して行くことがデータから分かったとのこと。それに対して、技術革新の継続で1人当たりの生産性が上がる効果は、逓減しない長期の成長要因だと判明したという。

 Romer教授の功績は、新技術による新商品や新サービスが、市場経済の中で生まれる仕組み、及びそれがどのように経済成長に貢献するか、それを効率よく進める政策とは何か、を明らかにしたことだという。教授の理論と国別比較がマクロ経済データの分析研究を活発化させたそうだ。

 新技術による新商品や新サービスには、TV受像機のように誰かが使用すると他人は使えないという排他性のあるものと、放送のように他人の使用を妨げないものとがある。またスクランブル放送や特許製品のように占有性のあるものと無いものがある。新商品・新サービスを開発し提供した時に、追随者にしてやられることなく初期投資を回収するためには、この排他性・占有性が大事で(あったり前!!)、これが無いと経済的メリットに危惧が生じて、研究開発を抑制する力が働くと教授は指摘したという。逆にこれがあれば新技術は育ち、逓減作用もなく経済発展に貢献するとした。だから政策として、メリットが不確実な新技術を補助金や特許で育てる必要があり、そうすれば国と世界の長期の経済発展に寄与するとした。但し特許は独占によるインセンティヴを提供すると同時に、他人がそれを使って経済発展に貢献できるようなバランスが必要だとした。

 毎年Nobel経済学賞は「当たり前を理論化」したように見える。 以上