Eulogy(賛辞), Panorama, Animation, 観光案内 Eulogy(賛辞), 短編随筆, 三宅島の噴煙 Pictures of the current season
Sue's recent experiences Shig's recent thoughts 自己紹介
短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

Home, 目次


うつせみAdvanced
2015年10月16日
          2015年Nobel物理学賞

 今年のNobel物理学賞は梶田隆章教授とArthur B. McDonald教授に授与されると発表された。授賞理由は"For the discovery of neutrino oscillations, which shows that neutrinos have mass"とされた。

 梶田教授は1959年生まれ、1981年埼玉大物理卒、東大大学院に進み2002年Nobel物理学賞の小柴昌俊教授の下で1986年理博、東大助手、長年飛騨山中の地下1千米の亜鉛鉱山跡に5万トンの純水を張ったSKK=Super-Kamiokandeに従事。2008年柏にある東大宇宙線研究所の所長に就任。

 McDonald教授は1943年生まれ、1964年カナダNova Scotiaで学士、翌年修士、Caltechで1969年PhD、Princeton大教授を経て1989年からカナダのOttawaとTorontoの間に位置するQueen's Universityに移り、SNO=Sudbury Neutrino Observatoryの責任者。地下2千米のNickel鉱山跡に1千トンの重水(原子核が陽子+中性子で、純水より2倍重い)を張った設備だ。

 Neutrinoは、1930年にオーストリア人Wolfgang Pauriが「電気的に中性で極めて軽く、ほとんど他と反応しない粒子」が無いと核反応β崩壊が説明できないと発表し、直後に伊人Enrico Fermiが理論化してNeutrinoと名付けた。米国で原発が稼働するようになってから原発で生じたNeutrino(の反粒子)が初めて検出された。今ではNeutrinoは次のような現象から生じることが分かっている。Big Bangで発生したNeutrinoが今でも降り注ぐ。太陽の核反応で発生。宇宙線が大気に衝突して発生。星の重力崩壊で超新星が生まれた時に発生。大地の放射性物質の自然崩壊で発生。等。

 素粒子物理で1970年代に完成し長年信じられてきた基本理論は標準理論=Standard Modelと呼ばれる。標準理論ではNeutrinoには質量は無いということで理論が構築され多くの実験結果と整合して来たが、実は僅かながら質量があることを発見し、標準理論に修正を突き付けたのが両教授を"Key Scientists"とする上記2つの研究グループと実験装置である。

 Einsteinの相対性理論で質量はエネルギーであることが知られた。素粒子の世界では質量をエネルギーで計る。電子1個を電位差1Voltに置いた時の位置エネルギー、または1Voltで加速した運動エネルギーを 1 Elec-tron Volt = 1 eVという。電子の質量は 0.511 MeV (M=百万)である。

 Neutrinoには3種類(3 Generations、世代と呼ぶ)あるとされる。今ではそれぞれの質量の上限値が推定されている。Electron-Neutrino(質量<2 x 10^(-6)MeV)、Muon-Neutrino(<0.19 MeV)、Tau-Neutrino(<18.2 MeV)の3種である。随分質量が違うものだ。太陽で生まれるNeutrinoは、核反応の性質からElectron-Neutrinoに限ることが知られている。

 1998年に梶田教授らは、Neutrinoは飛行中に3種の間で相互に変化するというデータを発表した。Neutrinoは物質とほとんど反応せずに通り抜けるから、四方八方から飛んで来る宇宙線が大気に当たって生じるNeutrinoは、上空から1千米地下のSKKに飛び込んでくる数も、地球の反対側の大気から地球を通り抜けてSKKに届く数も同じはずなのに、SKKで検出できたElectron-NeutrinoとMuon-Neutrinoの合計数で見ると前者が多かった。飛行距離が長い分Tau-Neutrinoに変化しているようだという推論だ。

 McDonald教授らが取り組んだSNOの装置では、(1)Electron-Neutrinoの数と、(2)3種のNeutrinoの合計数が計測できた。太陽からのNeutrinoはElectron-Neutrinoだけのはずなので、(1)と(2)は等しいはずで、その理論値も推定されているが、(2)の3種合計数は理論値と合致するが、(1)のElectron-Neutrinoの数は理論値より少なかった。太陽からのElectron-Neutrinoが飛来中に他の種類に変態していることがこれで証明された。

 素粒子理論では、粒子と波動は同じものの2面であるから、3種の粒子は波長の異なる3種の波動であり、その重畳波形だ。3種相互の変化は重畳波形の変化で、それが「うなり」のように飛行中に周期的に変化するので、Neutrino振動=Neutrino Oscillationという。質量差のあるNeutrinoが混合した時に限ってこれは起こる現象だそうで(その理由を私は理解していない)、Neutrinoに僅かながら質量があることの証明となり、標準理論の修正が必要となり、世界の物理学者の研究が続いている。    以上