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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみAdvanced
2016年10月28日
           三鷹天文台

 通称「三鷹天文台」、正式名「国立天文台三鷹キャンパス」の公開日の10月22日に初めて構内に入った。「東京大学付属東京天文台」が他大学の施設と合併して1988年に大学共同利用機関「国立天文台」となり、その本部が置かれている。一角を占める「東京大学三鷹キャンパス」も同時に公開された。緑豊かな26ヘクタール(正方形にすれば510m四方)という大きな構内は公開日でなくても散歩には公開されている。今や都会の中にあって光害も酷くなり観測はしていない。観測は野辺山、岡山、水沢、Hawaii島、ChileのAtakama砂漠などに設置した機器を三鷹からInternet経由で遠隔操作し、三鷹で研究を進めている。公開日に訪れたのは、(1)結構詳しい天文ファンと、(2)賞品目当ての小学生と父母が多かった。

 関東大震災で遅れて、麻布から1924年に移転して来た三鷹天文台では最古の1921年竣工の建物が敷地東端にあった。直径十数mの円筒の上に観測ドームが乗ったTVで見たこともある第一赤道儀室という登録有形文化財だ。当時としては巨大な口径20cmの屈折望遠鏡(レンズ式)を備えている。北極星方向を軸として天体は回る。観測中の望遠鏡をそれに追随させる仕組を赤道儀という。私の天体望遠鏡の赤道儀はStep Motorで動くが、ここでは手回しのFly-wheelを動力に、風車を定速装置にしている。

 そこから西に伸びる直線道路の先に大ドームがあり、日本最大の65cmの屈折望遠鏡がある。大口径化にはレンズは不向きで、凹面鏡の反射望遠鏡に時代は移った。HawaiiのMauna Kea山頂の「すばる望遠鏡」の反射鏡は8m、その隣接地に今国際的にTMT=Thirty Meter Telescopeが建設中だ。これらの望遠鏡を特定方向に向けると、反射鏡が自重で変形するから、多数の裏面のActuatorで押して変形を自動修正しながら使っている。

 敷地北西端の重力波実験棟には、岐阜県神岡鉱山跡に建設中で春に試運転をした重力波望遠鏡KAGRAの遠隔制御施設があり、また1辺300mの小型の重力波望遠鏡TAMA300がある。今年重力波検出に成功した米国の重力波望遠鏡LIGOは地表型で1辺4km、今春見学させて貰ったKAGRAはトンネル型で1辺3kmだから、300mでは何も検出できなかったのは今考えれば当然だ。

 敷地西端の野っ原には太陽フレア望遠鏡がレールで引き出されていたが、生憎の曇りでVideoを上映していた。隣の天文機器資料館も昔は観測ドームだったらしいが、今は歴史的な機器の保存庫になっていた。

 南西端に「太陽塔望遠鏡」の4-5階分の煉瓦の塔があり「俺が修理して動かした」という年配の方が説明に当たっていた。塔全体が望遠鏡の鏡筒で、テッペンの2つの合わせ鏡で太陽を捉え、塔の地下に導いてスペクトルの研究用だった。生憎曇りでスペクトルは見られなかった。要は光路の長い太陽望遠鏡だ。Einsteinの一般相対性理論を実証するために建設されたが、証明できなかったという。どう証明しようとしていたのか質問したが分からなかった。それで「Einstein塔」とも呼ばれるという。

 南東端は東大の敷地で、環状に配置されたモダンな研究室での各展示の他に、実験棟があった。「すばる望遠鏡」を数日間借りて、取り付けて観測するための巨大な円筒状の真空精密赤外線センサが2組用意されていた。波長2μm以上用と以下用を2つ取り付け、鏡で切り替えて使うという。可視光よりも透過性が良い赤外線や電波が今研究の中心らしい。

 敷地中央に配置された数棟の研究棟の展示も興味深かった。ALMA棟には「国立天文台チリ観測所」がある。南米ChileのAtacama村の標高5000mの高原砂漠に設置した国際プロジェクトの電波望遠鏡2組を遠隔制御している。ASTE望遠鏡は10mのパラボラで広視野に適している。ALMA望遠鏡は、日本製16台を含む66台のパラボラで構成され、山手線大のパラボラと同等の感度と解像度を持つため、ASTEで見つけた天体の詳細観測を行う。

 そのチリ観測所所属の若い女性研究員の講義を聞いた。銀河に滅法詳しかったが「夏目漱石の銀河鉄道の夜」というスライドで失笑を買った。また水沢、小笠原、石垣、鹿児島県入来に設置した20mのパラボラを連動させて、直径2,300kmと同等の解像度を得ているVERA計画の展示があった。

 天文学は宇宙の起源を探る物理学と連動して興味深い。    以上