しばらくご無沙汰してしまったが、3年ぶりにワイフと後楽園ドームに第18回世界らん展(2/23〜3/2)を見に行った。日本からの出展がほとんどだが21カ国が参加し、3千種10万株の蘭が出展された。
10万株の頂点に立つ日本大賞は、鉢まで含めると高さ2mもある巨大な蘭だった。http://www.jgpweb.com/flower.html ユーロフィエラというMadagascar原産の種類だそうで、「見たことも聞いたこともない」とはこのことだ。長い花茎の上に大柄な紫の花が密集している。さすがに迫力があり、例え日本大賞のタイトルが無くても強く印象に残ったであろう。第2位に相当する優秀賞も日本大賞と同じ出展者というのは初めてのことだそうだ。水戸市の斉藤正博氏はこの道では有名な方だそうだが、私は当然知らない。下に伸びた花弁が紫でその他の花弁が全て純白の上品なカトレアの花が数百輪、直径1mほどの半球形に咲いている。白い半球に紫の斑点が映える、。第3位の優良賞は台湾から出品された胡蝶蘭ファレノプシスだ。30輪ほどの純白の花をつけた長さ1mにもなる花茎が3本鉢から下がっている。長身の楚々とした美人を思わせる。さてこれらの蘭の鉢を飾って楽しめる空間がある家などあるのだろうか。
今年の特徴は「アンデスの妖精」マスデバリアの展示だった。2006年に日本大賞になってから注目を集めている蘭だ。三方向に広がる花弁の先がアンテナのように細く長く伸びているのが特徴だ。一つのコーナを暗室にして軟らかいスポットライトを当ててマスデバリアを展示したとNHKテレビで見たので、見たく思っていたが、入場を待つ長蛇の列に恐れをなして諦めた。普通の照明の下にも沢山展示されていた。標高1〜3千mのアンデス高原の霧の多い森に400種が自生するという。日本で栽培すると夏の熱帯夜でやられてしまうため、冷房が必要という贅沢な花だ。99年の世界らん展の写真 http://club.pep.ne.jp/~shigmats.1/orchid/orchid.htm で見かけたマスデバリアは三角ではなく二本足のように見えた。
日本大賞を中心に同心円状に、各種の蘭が種類ごとに美を競っている。カトレアは一番派手な花だ。様々な色の花が開発されている。日本家屋用に開発されたミニカトレアが花屋さんでは人気があるとか。シンビジュームは家庭で最も広く栽培されている稲のような葉を持つ蘭だ。デンドロビュームは、無愛想な篠竹のような茎の節ごとに可憐な花をつける。ワイフは自分へのお土産に売店で、Stardust Firebirdという長い名のオレンジ色に燃える蘭を購入した。パフィオペディラムはLady's Slipperの名の通り、唇弁がスリッパのように大きく発達した蘭で、中国南部・東南アジアの原産だ。オンシジュームはDancing Ladyの名を持つ典型的には真黄色の花で、長い裾の女性が両手を左右に広げて踊っているような形の花で、Singaporeで盛んに見かけるがMexico・中南米原産だという。エビネは日本原産の蘭である。春蘭はシンビジュームの一種で東洋蘭の代表だ。密やかな黄緑系の目立たない花をつけるが、オレンジ色の花もある。
熱帯の国々で何度か、木々に着生した蘭の花を見たことがある。多くは公園や庭園だったから自然の花とは言っても人の手が加わっていたかも知れない。インドネシアのKomodo島では原生林の樹木に咲く蘭を見た。これらは上を見ながら探し見つけ出す花であった。それが本来の蘭の姿なのだろう。一方後楽園ドームでは自己主張する花々を見て回る。
無数の花を見て回っているうちに感じた。最優秀賞とか優良賞とかもあるが、大多数の無冠の花でも、どれ一つをとっても美しく、一つ一つに個性が光っている。しかし本当はこの後楽園ドームに出展できること自体が大変な努力の成果に違いないと。この夏出身高校の山口県立光高校で卒業生講話をやることになったが、世界らん展を見ているうちにその話の筋が決まった。国際化進展→日本伝統の共存共栄社会から国際的競争社会へ→分け合う給与から働きに応じた給与へ→「世界に一つだけの花」のような特徴が必要な時代に→SMAPの歌には「誰でも元々世界に一つだけの花だ」というニュアンスがあるが磨く努力をしないと花は咲かないよ→学業も大事だがそれに限らず何か自分の特徴を見出して磨こうよ。 以上