Osama bin Ladenは傑物か
Osama (Usama) bin Ladenは稀代の傑物だという。Islamの人望を集めてこれだけ影響力を行使できるのだから、並大抵の国の大統領や首相よりは器の大きい人物かも知れない。小学館がSapio別冊「2001年9月11日、そして、世界が変わった」という107頁のMook=Magazine Bookを出した。通勤電車の軽い読み物かと思ったら、なかなか真面目なMookだった。
その中に15年の戦友が語るbin Laden像がある。彼はSaudi Arabiaの富豪出身で、義勇兵としてソ連撤退の前年'88年にAfghanistanに入った。その後の内戦で彼が設立した武闘組織al-Qa'ida (al-Qaeda)(「基地」の意。今年エジプトのIslam組織al-Jihadと合併して"al-Qa'ida al-Jihad")の幹部Hammad氏によれば、温厚な優しい人柄で、静かな口調でKoranを語り、戦闘の最中でも毎日5回礼拝を欠かさぬという。死を恐れず昔は先頭に立って前線で戦い、今も戦士をねぎらい寝食を共にする。「神の前では平等」と、妻4人(1人はTalibanの指導者Mohammad Omar師の娘)と子供13人よりも一介の戦士に乏しい食物を分け与え、全く偉ぶらない。
「不正義」な欧米に虐げられるIslamの民を憂い、「私が犯罪者かどうかは歴史が判断する」と言っている。しかし無実のIslamの市民を巻き込まぬよう、市街地に隠れたりは絶対しない。乗馬の名手で山岳地帯を熟知している。「敵は私を殺すだろうが、私は喜んでIslamの盾として殉教する」と覚悟している。あくどい金儲けを極めたアラブの一部王族や金持ちが、神の審判を前に前悪の帳消しを求めて行う喜捨がbin Ladenの資金源と言われる。Islamの無実の民を思う心と、New Yorkの無実の市民の殺戮とを区別する所に彼の限界があり、それ故に滅びよう。
ソ連が撤退後Afghanistanは群雄割拠の内戦に陥った。Saudi ArabiaやPakistanの支援を受けて'94にTalibanが台頭し、'96年にKabulを占領した。これと戦った諸勢力は「Afghanistan救国Islam統一戦線」通称「北部同盟」を'98年に樹立し対抗したが押し込められていた。
このTalibanを率いるMohammad Omar師とbin LadenはPakistanのMoskで出会い肝胆相照らす間柄となった。そのTalibanをbin Ladenが資金面で支援したので、Talibanがbin Ladenを匿うというよりも、Talibanはbin Ladenの影響下の軍隊になった。そのbin Ladenを引渡せとは、米国も無理を承知で手続きを踏んのだろう。なおOmar師は敬虔なIslamとして尊敬を集めているが、国際社会に冷徹に棹さす能力はないとの評判だそうだ。
同じMookでMikhail Gorbachevは次のように言う。科学技術の発達でGlobarizationが進んだこと自体は善でも悪でもない歴史の流れだが、それに乗れた国と乗り遅れた国の間で貧富の差が拡大し、世界の富の85%を18%の人間が占めている。このため乗り遅れた国では、Globarization自体とそれに乗った国からの圧政を感じ、対抗して復古思想としての民族・宗教原理主義が共感を得ていると分析している。
私見だが、何事も共通化すれば全体が重心に寄る。GlobarizationはAmericanizationに近くなっている。米国化の波に洗われ、それが何ら利益をもたらさず困難のみを運んでくるとすれば、これに反対して伝統に戻ろうという復古主義として、民族原理主義や、Islamだけでなく一部のキリスト教徒にもある宗教原理主義の台頭は理解できる。日本だって不況の元凶は米国化だ、昔に返ろうと民族原理主義が起こりかねない。
Afghanistan問題で欧米のメディアに偏ることを恐れる人には、次のWeb頁をお勧めする。弱者の立場に立った報道を標榜するOut There Newsが、Arab語の主要ニュース記事を英訳して掲載している。
http://www.megastories.com/attack/aip/aipindex.shtml
Afganistanの戦局から、現在の騒乱はやがて落ち着くとの期待もあるが、とんでもない。日本は失うものが多すぎて反欧米運動が激化することは無かろうが、その日本でも上記のようにその素地はある。まして失うものを持たぬ国は危険だ。al-Qa'ida al-Jihadは現にParaguay, Uruguay, Sudan, Somalia, Yemen, Pakistan, Phillipinesに支部を持ち、Iraqの動向も油断ならぬ。モグラ叩きの時代が続くことを恐れている。 以上