Pfizer社/BioNTech社が反撃した。11月9日に米Pfizer社/独BioNTech社が、ワクチン最終治験の中間発表として「90%以上の効果がある」と発表したのに刺激された米起業会社Moderna社が16日に「ウチは94.5%」と発表した。負けずにPfizer社/BioNTech社が「95%」と11月18日に発表した。
Pfizer社/BioNTech社の今回の発表の要点に感想を述べる。@最終治験=Phase 3では、43,858人の治験者の半数にワクチンを、半数に偽薬として塩水を与え、(マグレの確率<10^(-4)以下に抑える人数の)164人が感染するのを待ってワクチンの効果を計算するはずだったが、94人の感染で非常に好結果だったので「効果90%以上」と発表した。その後世界的大流行再発のお蔭で急に感染者が増えて170人になったので、最終治験を完了したという。感染者170人のうち偽薬組が162人、ワクチン組が8人だったと。以下は私が自信がある計算だ。ワクチン組も162人が感染するはずが154人は感染を免れたのだから、有効性=154/162=0.9506=95%である。前の発表では、合計94人の感染者の内訳が発表されなかったが、ワクチン組の感染者が8人なら(94-8-8)/(94-8)=0.90697=90%以上と計算したのではなかろうかと「うつせみ」に書いた。8人でなく7人なら92.0%だとも書いた。全体の感染者数が94人から170人に9日間で急増した中で、ワクチン組の感染者は増えなかったか、高々1-2名しか増えていなかったことになる。 Modernaを上回る0.9506という絶妙な数字と共に、やや気になる。
A170人中に重症者は10人出たが、ワクチン組は1人だけだったという。同様な計算をすれば、(10-1-1)/(10-1)=0.8888 これを90%と発表した。
B65歳以上の高齢者は、ワクチンに反応して抗体を作る力が弱く、しかも重症化し易いが、それでも94%の有効性が確認されたという。高齢者には朗報だ。性別・人種・民族についても大差無いと言っている。
Cワクチンは2回接種する。1回目から28日後以降に、体内で充分な抗体が出来て効果が出るとしている。2回目の7日後以降にデータを採った。
D年末までに5千万回分=2.5千万人分を生産し、来年中に13億回分を生産すると。米国は5千万回分の半分と、13億回分のうち1億回分を受け取る契約だ。日本政府は1.2億回分を受け取れると言っている。
E2回目の接種の後、ワクチン組の3.7%は倦怠感を訴え、2%には頭痛があったという。高齢者はこういう副作用が目立たなかったとも。
FModerna社がワクチンは「-20℃で30日間もつ」と発表したことを意識して、Pfizer社は次のように発表した。Dry IceとGPSと温度計を入れた通信機能付きの特製箱に1-5千回分のワクチンを入れ、1日に2回以上開かない条件でDry Iceを交換すれば、-70℃±10℃が維持できるので、普通の冷凍庫で5日間、特製冷凍庫で15日間もつと。一方Moderna社は、容器に入れれば2.2-7.8℃の普通の冷蔵庫で30日もつと発表した。この差の原因はワクチンを保護する脂質によるが、保存実験はまだ不充分と思われる。
G米FDA当局が緊急使用の認可に要求する安全データは揃ったので、数日中にPfizer社は申請すると。認可されれば医療従事者等に使える。
以下は私の感想だ。Pfizer社/BioNTech社もModerna社も、開発開始から1年経過していない。従来のワクチンは、病原体を培養して偶々生まれた弱毒株を使ったから、開発に何十年も掛かった。BioNTech社とModerna社は全く異なる最新遺伝子工学でワクチンを開発した。それを信じない白髪の権威者達が「ワクチンは短期間で開発出来るものではない。信じてはいけない」と警告し、マスコミも同調した。古い権威者は全く面子を失ったのに対して、強かなマスコミは前言を忘れ、新ワクチンを称賛する。
両社が採用したmRNA方式のワクチンは、今迄成功例が全く無かった。新型コロナウイルスの表面の突起物=Spikeを作る遺伝子mRNAを体内に注入し、体内でmRNAを増殖させると、人間の細胞がmRNAを設計図として蛋白質を作り、大量の突起物ができる。異物だから撃退するための抗体が体内にできる。本物のウイルスが侵入して来た時に、この抗体が撃退してくれる。突起物を作るmRNAは1月に特定できた。それを人工的に創り、増殖してワクチンにすることが、最新の遺伝子工学で可能になった。 以上