8月24日にPlagueで行われたIAU=International Astronomical Unionでの投票で、冥王星が惑星=Planetから降格になった。実は冥王星は見たこともない。私の10cmと25cmの天体望遠鏡ではとても見えないからだ。
地球を1として(質量(重量)比、赤道の半径比、公転の平均半径比)の書式で、 太陽系惑星を太陽から近い順に並べてみよう。水星(0.055, 0.38, 0.38)、金星(0.815, 0.95, 0.72)、地球(1, 1, 1)、火星(0.107, 0.53, 1.5)、木星(318, 11, 5.2)、土星(95, 9.4, 9.5)、天王星(15, 4.1, 19.2)、海王星(17, 3.9, 30.0)、冥王星(0.002, 0.18, 39.4)。一見して4グループに分けられる。@水星、金星、地球、火星は地球型惑星と言って鉄・ニッケル・Siliconを主体に重い惑星である。A木星と土星は水素とHelium主体で巨大で軽い木星型だ。B天王星と海王星も木星型と呼ばれるが、メタン、アンモニア、水の氷主体で@とAの中間的な性質を持つ。C冥王星は明らかに他と異なる。また冥王星の公転軌道は楕円形で一部は海王星の内側に入る。しかも他惑星は全て黄道面と呼ばれる平面から2-3度以内の角度範囲で公転しているが、冥王星の公転軌道は黄道面に対して17度の傾きを持つ。水と炭酸ガスの氷から出来ているという。
米人Clyde Tombaughによる1930年の冥王星発見以来我々は、惑星は上記9個と習ってきた。1999年には水・木・金・土と曜日の順番に惑星が一列に並んだことがあり、http://club.pep.ne.jp/~shigmats.1/mercury.htmに私はその写真を掲げた。ところで近年新しい惑星が山のように発見され、総計数十個にもなってしまったので「惑星って何?」という疑問が持ち上がった。新惑星の発見が相次いだ理由はディジタル技術だ。
夜空に固定されているのが恒星だ。天動説的に言えば、恒星の間を少しずつ移動し止まったり逆行したり惑うかのように漂うのが惑星だ。公転する惑星を公転する地球から見るとそうなる。肉眼で望遠鏡をのぞいても見えない暗い星も、長時間シャッタを開けたカメラで撮影するとフィルムには写る。そういう写真を毎晩撮って比較すれば、恒星以外の動いている暗い天体を見つけられる。しかし広い天空を撮影して比較するのは大変だった。最近では天文用デジカメで自動的に撮影し、比較も電子的に行える。だから惑星や彗星が続々と見つかるようになった。特に火星と木星の間の小惑星帯には小惑星が多数ある。また海王星の外側にはKuiper帯という小惑星帯が1992年に発見され、冥王星も改めて見ればその一員とされた。
太陽系はどうして今の形になったのか? ガスが広がった中に太陽が出来るとガスは太陽を回り、土星の輪のように円盤状に収束する。円盤の中に塊が出来ると周囲の物質を重力で吸着し、自分の重力のために球形に成長して惑星となった。一部は惑星の周りを回る衛星にもなった。だから惑星も衛星もほぼ同一平面上を回り、地球の北極から見渡すと全て反時計回りに回っている。惑星も衛星も自転は反時計回りだ。惑星の公転軌道上には衛星以外の物体はない。全部吸着されてしまったからだ。
問題は2003年にCaltech大Michael Brown教授が、Kuiper帯の冥王星の外側に冥王星よりも数%大きな通称Xenaを発見したことだ。冥王星が惑星なら(a)Xenaも当然惑星だ。1978年発見の冥王星の衛星(b)Charonは、冥王星の半分強の大きさがあるのでワルツを踊るペアのような二重惑星と見なし、また小惑星帯で最大の1801年発見の(c)Ceresを加え、いずれも地球の1/10 月の半分以下の大きさの(a)(b)(c)3個を惑星として認め、惑星を合計12個とする提案が米国からIAUに出された。米人の発見を強調する国粋主義の臭いがした。Brown教授は「そんな定義にすると今でも数十個の惑星を認めなければならない」と反対した。結局IAUでは常識が勝ち、米提案の@AにBが追加された。即ち@太陽(恒星)を回り、A球形で、B公転軌道周辺に他天体がない、という定義が採択された。その結果、水星〜海王星の8個が惑星となった。Bで外れる冥王星や(a)(b)(c)などをDwarf Planet=矮小惑星=矮惑星とし、ABで外れる彗星や非球形の小型小惑星をSmall Solar System Bodiesと呼ぶことにし、3種別とした。
教科書業界は大変なようだが、常識的な結論になって良かった。 以上