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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
           相対貧困率が高い理由

 2006年対象・2007年調査の日本の相対貧困率が15.7%で、これが世界的に非常に高い数字だとマスコミが大きく報じている。2000年代半ばの各国の統計で計算したOECD発表では日本は14.9%で、加盟30カ国の平均10.6%を大きく上回るだけでなく、メキシコ18.4%、トルコ17.5%、米国17.1%に次いで悪い方から4番目だった。それが更に悪化したという報道だった。

 適正なサンプルの、各世帯の全年収から税金等を控除して可処分所得を求め、それを世帯員数の平方根で割る。つまり2人なら1.4、3人なら1.7、4人なら2.0、5人なら2.2で割る。世帯員数で割るよりも、一人一人の豊かさを適切に表すという考えだ。この一人当たり可処分所得を一人一人の背番号とし、世帯構成員を全員背番号順に並べる。その列の中央に位置する人の背番号(収入)を中央値という。これが上記調査では228万円だったそうだ。その半分114万円よりも可処分所得の少ない世帯構成員の人数を数えて、それが全員の何%に当たるかを計算したのが相対貧困率だ。

 計算方式から分かるように、蓄えで食っている裕福な高齢者も貧困者に入る。また日本では貧困者とされた人が貧しい国では高所得者かも知れない。中央値の半分以下だから、そう極端に貧困ではない人も含む。

 この相対貧困率は1997年に14.6%、2000年に15.3%、2003年に14.9%、2006年に15.7%と推移した。これを一部マスコミは「小泉時代(2001-6)に急増」と報道した。そうかも知れぬがそう言い切れる数字でもない。

 所得格差を表す数値として伊数学者の名をとったGini係数がある。普通は一人当たりではなく世帯単位の総収入または税金・給付金等を算入した「再配分後」の収入で計算される。適正なサンプルの世帯代表各1名に収入の小さい順番に並んで貰う。次に累積収入を計算してグラフにする(縦軸は累積収入、横軸が番目)。列の2番目までの収入合計は1番+2番、3番目までの収入合計はそれに3番を加える。列の最後の人の収入まで加えると、全世帯の収入の合計となる。もし全員が同一収入ならば、グラフは直線になる。収入に格差があるほどグラフはその直線を下回る。どのくらい下回ったかを直線との間の面積で表し、直線以下の面積で割って%で表したのがGini係数だ。つまり格差が大きいほど大きな数字となる。

 厚労省によれば、日本の再配分後のGini係数は1990年度調査で36.4%、1993年で36.5%、1996年で36.1%、1999年で38.1%、2002年でも38.1%と緩やかな上昇傾向だ。しかし世界的にはまだ小さい方で、北欧には負けるが独仏並で、ブラジル・メキシコは勿論米英よりも遥かに格差は小さい。

 もう一つ指標がある。サンプル数の10%または20%を収入の大きい順と小さい順から採って、それぞれの中央値の比(大/小)を貧富比とする。例えばWikipediaで「国の所得格差順リスト」(英文頁の直訳)を引くと貧富比とGini係数と相対貧困率の各国一覧表が出ている。日本は各国に比べてこの貧富比が小さく(格差小)、しかも10%値と20%値の比率が各国より著しく小さい(10%値でも20%値でも大きくは変わらない)。

 上記から日本の収入分布の特徴を考えよう。厚労省の国民生活基礎調査によれば、日本の世帯所得の分布は典型的な左向きの鯨型だ。右側(収入大)には長く尾を引くが、左側(収入小)は鯨の背・頭のように最大値から急峻に落ちている。分布最大値は2000年調査までは3-4百万円枠だったが、2005年調査では1-2百万円と3-4百万円の2つのピークが現れた。鯨の頭が分厚いから中央値の半分より左側に多くの人口が居て、相対貧困率が高くなる。各国に比べて日本は収入の大小の幅が小さく、鯨は寸づまりなのだと思う。だからGini係数も貧富比も小さい。左側が分厚く急峻だから、収入の低い順に10%採っても20%採ってもその中央値は横軸上大して移動しない。故に貧富比の10%値と20%値は他国ほどは変わらない。

 1-2百万円のピークや、分厚い鯨の頭の正体は何か? (1)年金生活者・再雇用高齢者と(2)派遣切りなどで話題の未熟練の(セールスポイントに乏しい)非正規雇用の若年者に違いない。(1)は長寿命化と定年制とのギャップが原因だ。高齢者にもっと働いて貰ったらよい。より深刻な(2)は本質的には経済の国際化の皺寄せだから、一筋縄では行かない。 以上