巨木信仰が高じて北CaliforniaのRedwood(米杉)国立・州立公園を訪れた。Silicon Valleyで親しんだRoute 101がここでも主な幹線道路だ。宿泊した20室余りのCurly Redwood Lodgeは、Redwoodの巨木1本で出来たと聞いた。壁は全て立派な板張りで、ドアは全てムクの1枚板だった。
朝ゆっくり宿を出て101を南下する。Redwoodの巨木が聳える山道だ。平地は視界良好だが、道路の標高が百mほどに上がると、寒流の海から来る霧の中だ。運転にまだ不慣れがあるのか、車線が狭く勾配がある割に制限速度が高く他に迷惑を掛けぬよう若干緊張して運転した。宿から十数Miles南下したT字路から海に向かう田舎道があり、終点の展望台から鯨が観測出来ると言われて「この季節に?」と疑いつつ期待したが、展望台だけに段々標高が高くなってしまい、霧の中で何も見えなかった。
T字路から2-3miles下った辺りで101を外れ、"Drive Through"を見に行った。Redwoodの巨木にトンネルを掘って自動車が通れるようにして入場料$5を稼ぐ。木にトンネルを掘ることにあまり好感は持てないが、1976年に出来てしまった以上は大いに興味がある。収入が限られる片田舎で所有地のRedwoodの巨木に稼がせようと考えたとしても責められない気がする。高さ50m、幹の直径4.5mの木に幅2.23mのトンネルが掘ってある。ワイフに右側の誘導を任せ、左側はサイドミラーをギリギリに寄せてゆっくり通り抜けてみた。同様なDrive Throughは3ヶ所あると聞いたが、近いのはここだけだ。以前から写真で見知っていて一度経験してみたかった。
更に数miles南下した所で道は旧道と新道に分かれ、私共は9 milesにわたって101に並行する旧道のNewton B. Drury Scenic Parkwayに入った。この人名は元国立公園長官で、101を4車線に拡張するに当たり、101を巨木の森の外を迂回するルートに追い出した功労者だ。道の両側に巨木が立ち並び、所々でハイキングコースと直交している。私共も車を止めてハイキングコースに一寸入って見て天に向かって真っすぐに伸びる巨木と苔を堪能した。縄文杉より大きな木がザラにある。昨年秋にハリケーンで巨木が倒れ掛り道が長期に閉鎖されたとWebで見て心配していたが、それらしき痕跡だけだった。途中に最も簡素なVisitor Centerがあった。
101と合流して数miles南下し山道に入ると、九十九折れの急坂の先にLady Bird Johnson Groveがあった。この人名はJohnson大統領の奥さんだが彼女が寄付したとかではなく、Nixon大統領が付近を整備した際に先輩の奥さんの名を付けたという。標高が高いので霧の中の幻想的な小道を歩いて、梢が霧にかすむ巨木を観賞した。この近くの山道を13km登ると、世界一高い木の称号を持っていた110mの木があるという。先端が3mほど折れただけで世界一は他に譲ったそうだ。縄文杉と同程度の時間と覚悟がないと登れないから今回は無理だ。あちこちでこの木の写真を見かけた。
ここで踵を返してKlamathという町の公園区域外にあるMystery of Treesという観光施設に入った。入口に実物大の馬に乗ったインディアンの彫刻があり、それが1本の木から掘り出されたものと気付いて驚いた。ここでは案内板が整備された山の斜面の周回路でRedwoodと樅の巨木を観賞する。Redwoodで作った古い素人芸の彫刻が道沿いに多数飾ってあった。立ち上がった熊の像などは比較的良く出来ている。ロープウェイで更に登って巨木の森を下って来るコースは時間の関係で割愛した。土産物店で、Redwoodの油を精製した香水の小瓶を収めたRedwoodの細工物を求めた。この辺りはインディアンのYurok族が住んでいた地域で、保護区ではないようだがYurok Tribe Houseという建物も見かけた。
一旦ホテルに戻り、ホテルで昼食と休憩をした。午後は近くの州立公園に入った。昔幌馬車が通った道だという巨木の間を縫うように続く未舗装の狭い道を、対向車とのすれ違い場所を選びつつ緊張の数milesを行った先にStout Groveがあった。巨木を巡る周回路を歩いてみる。ひときわ太い幹で夫婦が両手を伸ばして写真を撮っているのを見て、私共も真似してみた。二人が両手を伸ばしても幹の直径の半分にしかならない。
米国随一のRedwood地帯を訪れることができて大満足だった。 以上