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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみAdvanced
2016年12月23日
           Singularity

 「うつせみ」を受け取って下さっている半導体事業出身の先輩から「Legacyという言葉が日本でプラスイメージで語られることに違和感を感じる」とのemailを頂いた。確かにITや半導体のような動きの速い領域でLegacyと言うと「一時代前のもの」というマイナスイメージが付きまとう。私は、Legacyという単語自体にはプラスもマイナスも無くて、前後の単語や文脈でプラスにもマイナスにもなるのではないかと申し上げた。「将来Honorable Legacyになり得る五輪会場を今建設しよう」と言うのなら語義に忠実だが、2語を和製英語にはし難いから単にLegacyと言ってしまったのでしょうとも申し上げた。Legal Conformanceを単にConformanceと言ってしまう和製英語の例にも言及した。

 もう一つシックリしなかった英単語があった。Singularityを「AI=人工知能が人間の知能を越える状態」のように使っているケースに最近よく遭遇し、昔大学で複素関数の時間に習ったSingularity=特異点との落差に戸惑っていた。y=1/x が複素平面上の点 x=0 の周辺に美しい尖塔を描いた3次元の図で、複素関数の美を悟ったものだ。高校の解析学で y=1/x でも同じことだ。このような場合にx=0の点を「連続的には扱えない点」という意味で特異点と呼ぶのだと習った。これがAIとどう関係するのか?

 調べてみると英語ではTechnological Singularityと言うらしい。これも和製英語の単一単語化現象か。英語のWikiを引くと、数学から音楽まで様々なSingularityが20種類以上出ていて驚かされた。

 AIが段々発達して来て、AIが自分で自分を賢くできる技を身に付けると、AIは自己増殖的に急速に賢くなって人間を追い抜く。この段階では上記 y=1/x と同様に急速に立ち上がるから Singularityと呼ぶのに相応しいと考えた人が居た。米San Diego State大数学教授で科学フィクション作家でもあるVernor Vinge氏は1993年の随筆集 "The Technological Singularity" で「AIが発達して或るレベルになると人間の時代は終わり、その先は予測不可能」と論じた。2006年には米未来学者の Ray Kurzweil氏が 著書"The Singularity is Near" を著し、AIは或る点から自己学習によって指数関数的に急激に発達し人知を超える。それは2045年に起こると書いた。いや書いたそうだ。私は読んでいないし読む気もないので。そうか、やっと分かった。こういう意味でのSingularityならば、数学の特異点を連想させる上手い比喩になっている。尤も2045年に特別な意味があるはずはなく、或る計算に基づいてもっともらしい数値を示し、素人の読者に具体性を印象付けたのであろう。

 いや、Singularityと最初に言い始めたのは、Computerの基本概念を案出したあのJohn von Neumann教授だという話が、WikiのTechnological Singularityの項目に出ていた。直弟子Stanislaw Ulam教授が1958年の著書に、前年亡くなったNeumannが次のように語ったと書いているそうだ。

One conversation centered on the ever accelerating progress of technology and changes in the mode of human life, which gives the appearance of approaching some essential singularity in the history of the race beyond which

human affairs, as we know them, could not continue. まだAIとか自己学習とかの概念が無かった頃の会話だ。しかし天才数学者は既にそれを予見していたのかも知れない。

 AIに人間が知恵を付けている間は、SingularityつまりAIの知能の爆発的発展は起こらない。AIの自己学習がキーだ。Deep Learning=DL=深層学習は、人間の頭脳をSimulationする。沢山のデータで人間と同様に学習する。人間と違って高速で学習し人間と違って忘れない。Googleが開発した囲碁ソフトAlphaGoが世界一強い韓国の棋士に勝った時には、棋士が思い付かないような前例のないユニークな手を打つ創造性を見せたという。ここにSingularityの可能性があると思う。但し入力に対してAI出力が正しいとしても、なぜそういう結論になったのかがBlack Boxだと、DLの結論を信じてRiskを犯して行動に移すのに躊躇する人も居ると聞いた。以上

 調べてみると英語ではTechnological Singularityと言うらしい。これも和製英語の単一単語化現象か。英語のWikiを引くと、数学から音楽まで様々なSingularityが20種類以上出ていて驚かされた。

 AIが段々発達して来て、AIが自分で自分を賢くできる技を身に付けると、AIは自己増殖的に急速に賢くなって人間を追い抜く。この段階では上記 y=1/x と同様に急速に立ち上がるから Singularityと呼ぶのに相応しいと考えた人が居た。米San Diego State大数学教授で科学フィクション作家でもあるVernor Vinge氏は1993年の随筆集 "The Technological Singularity" で「AIが発達して或るレベルになると人間の時代は終わり、その先は予測不可能」と論じた。2006年には米未来学者の Ray Kurzweil氏が 著書"The Singularity is Near" を著し、AIは或る点から自己学習によって指数関数的に急激に発達し人知を超える。それは2045年に起こると書いた。いや書いたそうだ。私は読んでいないし読む気もないので。そうか、やっと分かった。こういう意味でのSingularityならば、数学の特異点を連想させる上手い比喩になっている。尤も2045年に特別な意味があるはずはなく、或る計算に基づいてもっともらしい数値を示し、素人の読者に具体性を印象付けたのであろう。

 いや、Singularityと最初に言い始めたのは、Computerの基本概念を案出したあのJohn von Neumann教授だという話が、WikiのTechnological Singularityの項目に出ていた。直弟子Stanislaw Ulam教授が1958年の著書に、前年亡くなったNeumannが次のように語ったと書いているそうだ。

One conversation centered on the ever accelerating progress of technology and changes in the mode of human life, which gives the appearance of approaching some essential singularity in the history of the race beyond which human affairs, as we know them, could not continue.

まだAIとか自己学習とかの概念が無かった頃の会話だ。しかし天才数学者は既にそれを予見していたのかも知れない。

 AIに人間が知恵を付けている間は、SingularityつまりAIの知能の爆発的発展は起こらない。AIの自己学習がキーだ。Deep Learning=DL=深層学習は、人間の頭脳をSimulationする。沢山のデータで人間と同様に学習する。人間と違って高速で学習し人間と違って忘れない。Googleが開発した囲碁ソフトAlphaGoが世界一強い韓国の棋士に勝った時には、棋士が思い付かないような前例のないユニークな手を打つ創造性を見せたという。ここにSingularityの可能性があると思う。但し入力に対してAI出力が正しいとしても、なぜそういう結論になったのかがBlack Boxだと、DLの結論を信じてRiskを犯して行動に移すのに躊躇する人も居ると聞いた。以上