3月30日の朝日新聞の囲み記事で、超低周波地震=ゆっくり地震という ものが学界で近年注目されていると知った。周期10秒以上(つまり0.1Hz 以下)の地震波を言う。100秒も珍しくないそうだ。周期100秒で揺れた ら、相当大きな振幅でも人間は気付かないかも知れない。
西日本の南からはフィリッピン・プレートが年間数センチ押し寄せてい るし、東日本の南東からは太平洋プレートが来ている。これらのプレート は海底の地殻つまり岩盤であり、より軽い陸地のプレートを押し上げつつ マントルの中に落ち込んでいく。このように押し付け合って一方が他方の 下方に入り込む構造を逆断層という。特にプレート衝突の場合は断層面が 45度よりも水平に近い傾きを持つので、衝上(逆)断層という。反対に引 っ張り応力で滑り落ちて広がる断層を正断層と言う。Icelandの国土は大 西洋を押し広げる火山帯の真上にあるので、正断層だらけだ。当然逆断層 の方が多いし話題になるから、正逆反対の命名の方が覚え易かった。
プレート境界の逆断層がずれ動いた時に地震が起こる。それは正しい が、そう単純でもないらしい。プレート境界は何百kmもあるから、断層が 一度に動くはずはなく、あちこちで散発的に、しかし連動しつつ動く。岩 石は圧縮されると弾性の範囲で僅かに縮み、次に小さな割れ目が無数に出 来、次に大きく破壊される。そういう時系列に沿った地震現象がある。
プレート境界で岩盤がガッチリ噛み合って破壊しつつ大地震を引き起こ すのは、逆断層のずれ合う方向の中央部で、「(巨大)地震発生域」と呼 ばれるおよそ地下20-30kmの所だそうだ。それよりも海側の海底岩盤が深 度5km辺りにある場所では、海底岩盤の上に溜まった堆積物などが海底岩 盤から削り取られて、陸側岩盤の先端に「付加体」として溜まる。付加体 も海底岩盤の移動で押し詰められ、陸岩盤よりは容易に割れ目が出来て破 壊される。岩盤ほどの剛性も弾性も無いから、その破壊で生じる地震は超 低周波となり、「浅部超低周波地震」と呼ばれるという。
一方、地震発生域よりも陸地側の深い断層部分では、海底岩盤は自重で マグマの中にに落ち込もうとしており、海陸両岩盤間の圧力は弱まる。こ こでは岩盤の破壊がほとんど無く地震も起こさぬまま静かにずれる「Slow Slip」も発生するし、低レベルの岩盤破壊に伴う振動が発生したとして も「深部超低周波微動」乃至「深部超低周波地震」となる。
海洋研究開発機構のWeb "http://www.jamstec.go.jp/donet/rendou/en/report/search04.html" を見ると、フィリッピン・プレートが沈み込む四国周辺では、浅部超低周 波地震は四国から50-100kmも沖の南海トラフの四国側で発生している。一 方、深部超低周波微動・地震波は、伊方原発騒動で有名になった佐田岬か ら四国山脈を経て徳島市に至る辺りで発生している。プレート境界線は 「線」のようなものではなくて、逆断層の幅が150km以上あって日本の国 土の下に帯状に横たわっていることを知った。まさに地震の国だ。1995年 に発生した阪神・淡路大震災を契機として国の施策で、 日本全国を高密 度にカバーする世界的に類を見ない高感度地震観測網(Hi-net)および GPS連続観測システム(GEONET)の整備が, それぞれ防災科研および国土 地理院によって進められてきた。そのお蔭で研究が進んだという。
これら超低周波地震が今注目されている理由は、大地震の前後に起こる 超低周波地震から地震のメカニズムの解明が進むことと、大地震の前の超 低周波地震は、大地震の予兆として使えるのではないかという点だ。つま り超低周波地震を伴うずれが発生すると、大地震を起こす固着域が孤立し て応力が増すから、大地震が起こり易いということだ。但しこの領域の研 究は始まったばかりで、成果は将来に待つしかないようだ。
実際日向灘から足摺岬沖の浅部超低周波地震は,2003 年および 2010 年に豊後水道で発生したSlow Slipと同期しており、また十勝沖の超低周 波地震が2003 年の十勝沖地震との関連で理解されているという。通常の 地震がほとんど起こっていない領域で超低周波地震が頻繁に起こっている 例があり、断層がスムースにずれているのだと理解できるとのこと。以上