冬至を過ぎても日の出が日々遅くなる説明に改良を加え「うつせみ」で 4度目に取り上げる。日の出・日の入り時刻は下記2つの要因で決まる。但 し1年間は365日で、地球の公転軌道は真円とする。誤差は無視できる。
第1の要因は周知だ。地球の自転軸が公転面に垂直から23.4度傾いてい るために、北半球が太陽に向く夏至に日の長さが最長、冬至に最短にな る。その特徴は@南北半球で季節は反対。A1年に1サイクル。B朝夕逆の 影響。この要因だけなら、冬至は最も日の出が遅く日の入りが早い。
第2の要因を知る人は少ない。物理的説明は後述とし、その影響を述べ る。地球の自転は定速だが、23.4度の傾きのために、地球から見た太陽の 動きはあたかも自転が遅れたり進んだりするように見える。冬至と夏至に は最も自転が遅れ、春分と秋分で最も進む。特徴は@緯度や南北半球に関 係無く一斉に変化。A1年に2サイクル。B朝夕にほぼ同じ影響。
上記2つの要因の重畳で、日本の北緯35度では、一番遅い日の出が冬至 の16-17日後、一番早い日の入りが対称的に冬至より16-17日早くなる。な ぜなら、冬至前後には自転の不足で地球から見た太陽の動きが遅くなり、 太陽の事象が遅い時刻に起こる。自転不足は日々累積するから、事象の時 刻の遅れも日々累積する。累積が大きくなる冬至の後に一番遅い日の出と なり、累積の遅れがまだ小さい冬至の前に一番早い日の入りとなる。
高緯度では、白夜でも分かるように第1の要因が大きく変動し支配的な ので、第2の要因の影響は小さく、日の出・日の入りのズレが小さい。北 緯60度では上記16-17日でなく1週間ほどだ。北緯20度では1か月ズレる。
では第2の要因の原理を説明しよう。まず360度/365日=α度/日と定義 する。地球の自転は24時間で1回転と思うと間違いだ。24時間では 360度 +α度回り、365日で366回転する。月は何時も地球に同じ面を見せていて 自転しないかに見えるが、月が地球を1回りすると1回自転していることに なる。同様の1回を地球の自転にも加算しなければならない。
次に実験装置を頭の中に構築する。円卓の中央に太陽、円卓の北端に地 球があるとする。東西南北は思考実験限りとする。30pほどのピアノ線と 30cm x 10cmほどの厚紙を用意する。ピアノ線は地球の自転軸を表す。厚 紙を長手方向に半分に折って30cm長のV字を作り、折り目にピアノ線を貼 り付ける。ピアノ線を手前にして上から見たV字の右側を紅く、左側を白 く塗る。V字の開角をα度とする。但しα度は1度くらいでイメージがつか み難ければ、α=10度くらいのイメージで思考実験してもよい。
@ピアノ線=自転軸を円卓北端に垂直に立て紅板を真南の太陽に向け る。紅板方向の地球上の地点は南中(太陽が真南)を見る。24時間後に は、ピアノ線は円卓を反時計回りにα度移動する。紅板は真南を向いたま まだ。360度+α度の自転で上記地点は24時間後に白板方向に来る。白板 の延長線上に太陽があるから、白板が南中を示す。このように23.4度の傾 きが無く自転軸が垂直なら、南中から南中まで常に正確に24時間だ。
A同じ実験で、ピアノ線を西に23.4度傾けた秋分の状態で、α度公転し た24時間後を考える。紅板は円卓に接したまま南を指す。宙に浮いた白板 を下側に延長して円卓に接する線は太陽よりも左側(東側)を指す。つま り白板方向の地球上の地点は南中を過ぎている。同一地点の南中から南中 までの時間は24時間より短く自転過剰だ。ピアノ線を東に傾けた春分で は、白板は円卓にメリ込むが、白板の方向は太陽の左(東)側を指す。
B同じ実験で、ピアノ線を手前に(北側に)23.4度倒した冬至の状態 で、α度公転した24時間後を考える。紅板も白板も円卓から浮き上がる が、紅板は依然真南を指す位置に保つ。白板を下側に延長して円卓と接す る線を求めると、その線は太陽の右側(西側)を指す。24時間では白板は 南中に達せず、地球上の同一地点の南中から南中までの時間は24時間より 長い。見掛け上自転不足状態だ。ピアノ線を南に倒した夏至の状態では、 紅板も白板も円卓にメリ込み、白板の方向は太陽の右(西)側を指す。
このように、23.4度の傾きの悪戯で、見掛け上の自転過剰や自転不足が 生じ、上記第2の要因となり、日の出・日の入りの時刻に影響する。以上