8月30日はSymphony号という豪華客船で1泊した。同名の外洋客船が有名だが、乗ったのはSILJA社が運行するHelsinki 5pm発、Stockholm 9:30am着のBalt海を行く内海の客船だ。全長203m、58千トン、定員2千余名という外洋客船並みの仕様で、多分電気推進機構だ。個人で乗ると17万円以上もするそうだが、効率を求めて選んだJTBのパック旅行では割引になっていたはず。同様のパック旅行の日本人がかなり居たから定番コースになっているらしい。船室は11階の広い部屋は別にして、8-10階の普通船室は全て4.5m×2.5m程度で狭く、2つ目のベッドを壁から引き下ろすと寝るだけの部屋になるが、1泊だけだからよしとしよう。海側に窓がある部屋と、アトラクションが行われるコンコースに向いた窓の部屋とがあり、値差があるものと思われる。Disco、Bar、ジャグジー、劇場がある。
出航後10分で船は世界遺産Suomenlinna島の要塞群の傍を通過した。長径数百米の島2つと、もっと小さな島2つからなり、五稜郭と同じ尖った石垣が外洋に突き出ている。東京湾のお台場とは異なり、この地方の覇権を巡る戦争で度々実戦を経験している。今は緑豊かな公園に幾つかの博物館がある。砲台で手を振る観光客にこちらも手を振り返して過ぎ去った。
6階のレストランでBuffet形式の夕食を済ませた。Buffet形式をVikingと日本ではいう。それを始めた帝国ホテルの命名だそうだ。日本製英語ではあるがVikingの地に相応しい夕食だと思った。6-7階の商店街をブラついた。乗船の時に入口で撮影された写真が張り出されている。観光地でよくあるパタンの他に、驚いたことに1人ずつの顔だけをB4判に引き伸ばした写真も売り出していた。自動修正ソフトがあるのかどれも美男美女に写っているから不思議だ。ワイフの写真を褒めたSales Talkに乗せられて購入してしまった。旅客用に設置されたWeb接続のPC2台を使ってみたが、日本語パッケージが入ってないためにyahoo.co.jpが表示できなかった。
7階で大道芸が始まった。頭上高くサーカスのブランコの設備も見えた。12時から印度人一座のショーが劇場であると聞いたが、自重して早寝することにした。航路に時差が1時間あるため12時が2回ある。深夜3時頃Finland自治領Aland島に寄航したはずだが、2人とも熟睡していて気付かなかった。後で聞けば、接岸の時の異常な揺れで目覚めた人や狭いベッドから転げ落ちて怪我をした人も居たらしい。声高に話す声と笑い声で早朝4時半頃目覚めた。起き出して船尾デッキに出てみると、日本人が外人と英会話を楽しんでいた。航跡の先に赤い日の出があり、船は多島海を進んでいる。後続船が2隻見える。島の向こうに見え隠れして逆方向の船が東行する。一方通行の航路が右側通行で2本定められているらしい。
1-2坪の岩礁に灯台がある。5-6坪の無人島に白樺に似た広葉樹が1本立つ。百坪ほどの島に別荘があり、モータボートが係留されている。数百米の島は松林に覆われていて、2つ3つの家と桟橋がある。島は全て標高10米もない平坦で薄い凸レンズ型の岩で、数十cmかと思われる表土の上に樹木が生えている。どういう地理現象でこういう多島海が出来たのか不思議だ。真っ平らな広大な岩の平原を氷河が掘り込んだ後に海がせり上がって来た感じだ。高緯度だから干満差があまりないのか。津波はおろか台風の高波も無いのだろう。でないとこんな平坦な島に家は建てられない。日本に近ければ百坪位の島を買いたいと一瞬夢想したが、地球温暖化で海面が上昇したらいっぺんに水没しそうだ。Swedenは消費税25%で、70%以上の人が所得税率50%以上という重税の国だが、教育医療は無料とか福祉は行き届き、人々は人生を楽しみ一般庶民が海または山に別荘を持つという。
大きな島には風力発電設備が見えた。電力・通信ケーブルが本土から来ているらしい看板の受け口の建物がある。英語と独語の知識があるとSweden語はかなり類推できる。AM放送用か潜水艦向け長波通信用のアンテナが見える。ヨットがたった1艘で行き、その周囲をカモメが飛ぶ。
Stockholmに近付くにつれて島の標高が高くなってきたが、それでも20-30米ほどかも知れない。船は定刻にStockholm郊外の港に到着した。多島海は美しくロマンがある。印象に残った1泊行であった。 以上