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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2011年11月 5日
         東北地方太平洋沖地震

 東大本郷の最北端にある地震研で10/29に平田直教授の講演を聞いた。

 最初に「東日本大震災」は災害の名であり、地震学界ではこの地震を「東北地方太平洋沖地震」と呼ぶ、と言われた。「阪神淡路大震災」も「兵庫県南部地震」と言うそうだ。そう聞いただけでAcademicになる。
Magnitude変位長径変位死者破壊時間
東北地方太平洋沖地震9.0500km20-50m16k3分
兵庫県南部地震7.350km2m6.5k数十秒

 変位が発生した面積が百倍で変位が十倍だから放出エネルギーは千倍。Magnitudeが+1違うと、10の1.5乗=32倍なので、上記のように1.7違うと千倍のオーダで違ってくる。なお意味ありげな1.5乗に物理的意味は無く、昔から非物理的に決められていたMagnitudeの尺度に合うようにこう決めた。太平洋プレートは毎年数cmから高々10cmの速度で日本に押し寄せて来ており、東北地方太平洋沖地震ではその7百年分の歪が開放されたという。斜面に置いたプリンの下流側の厚みが増した状態から、下端がズレるとプリンは幅が広がり下流側の厚みが減る。同様に6,000m下の日本海溝では海底が50m動き7m隆起し、日本列島は東に引き伸ばされて沈下した。牡鹿半島では5.3m東に動き1.2m沈下した。東北地方の日本海側でも1m、東京都の海側でも0.2-0.3mの東方への水平移動があったそうだ。総武線のレールはどう折り合ったのだろうか。東北地方は東西の差し引きで幅3-4m広がったという。国土地理院HPに日本列島移動の迫力ある動画がある。
http://www.gsi.go.jp/cais/chikakuhendo40010.html

 陸の変位は高精度GPSで1mm単位で測れる。突然m単位になり驚いたそうだ。海底には海底基準局装置が沈めてあり、GPSで位置が正確に判った船からSonar(音波のRadar)で装置の位置を5cmほどの精度で測れるそうだ。なお各地の東への変位は地震以降も緩やかに続いているという。地震を起こした断層よりも更に深い所で緩やかに変位が続いているからだそうだ。3月12日から7月26日までの4.5か月で、銚子で42cm、岩手県三陸の山田で78cm動いていると。こういうズレは10年ほど続くだろうとのこと。  海溝で海底が上記のように7m持ち上がったため、表面に7m近い津波が発生した。それがジェット機に近い速度で四方八方に伝搬するが、海が浅くなると伝搬速度が低下し、前後が重なり合って津波の高さが増す。
水深5,000m100m10m
速度800km/h100km/h36km/h
地震発生は3月11日14:46だったが、相馬市の験潮計では15:50に7.3mの津波を記録した。大船渡市では11.8mを計測した後でメータが振り切れた。この後V字地形で更に波高が増したり、岸での反射波が重なったり、斜面を駆け上がったりして、所によっては 30-40mの高さに達した。

 気象庁は直ちに通報が出せるように、地震計の振れから計算する日本独自のMagnitudeで当初 Mj=7.4と算出した。それに基づき地震の3分後に3m以上の津波の警報を出した。その後10分以上掛る国際標準で Mw=9.0と訂正し、津波警報も修正したが、時既に遅かった。その反省で今後はまず「巨大津波」を警告しておいてから下方修正をすることにしたという。

 東大・東北大は共同で東北地方の太平洋の水深1,000mと1,600mに海底津波計を2基働かせていたそうだ。海底で津波が判るというから水圧の測定であろう。そこでは5mの津波を観測したそうだ。早く連絡出来ていたら良かったのに。歴史的な津波の記録と比べると、岩手県は明治三陸地震の津波で20mの記録がある所で今回は30mだった。岩手県は津波の歴史があるために対策や避難が進んでいて、明治時代よりは人的被害が少なかったという。もっと低い津波の歴史しかない宮城県と、津波で人命が失われた記録の無い福島県は、今回は狼少年効果で有史以来の死者を出した。

 名誉教授の1人が発言を求め、後輩教授をたしなめた。「今回の地震は想定外という意見があるが、巨視的に見ればチリ地震、アリューシャン地震、カムチャッカ地震と太平洋Plate周辺で大地震が続いている一環と見るべきだ。もっと視野を大きく持たねばならぬ」 ごもっとも。 以上