トヨタの一連の問題で最初に起こったのは、米国でアクセルが戻らない事故で死傷者が出たことだった。トヨタはフロアマットがズレてアクセルを固定する惧れがあるとして4.2M台のRecall交換を始めた。それを追いかけるように、アクセル安定化のための摩擦機構が想定より早く劣化してアクセルを固定する事故が発見され、金属製の部品を挟む2.3M台のRecallが始まった。この機構はカナダのCTS社製だが、その採用は勿論トヨタの責任だ。日本のDenso社製のものは問題ないので、CTSの車種がRecall対象となった。以上は米国での問題で日本では問題化していないようだ。
それに上塗りして、Prius新型のABS作動直後のブレーキの効きが悪いという問題が発生して日本でRecallが行われた。これについては2月10日の「うつせみ」に記載した。全世界で0.44M台と発表されたが、米国ではあまり話題になっていないから、米国の車種は関係無いのかも知れない。
3月8日に米San Diegoの高速道路で2008年型Priusのアクセルが戻らなくなり、時速94マイルで走行中の車から救援要請を受けたパトカーがメガホンでニュートラルにしてブレーキを踏むなどの指示をして無事に止まったという報道があった。NHTS=National Highway Traffic Safety Adminis-trationが調査官を派遣した。トヨタが内蔵コンピュータを調べたら、アクセルとブレーキが交互に踏まれており、停止後のアクセルは正常位置だったことから、狂言が疑われている。この車はフロアマットのRecall対象で、交換に行ったが部品が到着しておらず断られた腹いせか。
南Illinois大の教授が、トヨタ車のアクセル回路をショートしてアクセルを踏み込んだのと同様にしたが、どこからも警報が出なかったのは設計ミスだと主張したのが米国で大きく取り上げられた。トヨタ車の電子制御は弱いのではないかという話が米国メディアに盛んに登場し、自車や隣の車で携帯電話を使うとスピードが上がってしまうらしいとか技術的に見ておかしい話まで出てきた。これに対して米トヨタは反論している。頑丈な絶縁被覆を2か所も剥いでショートさせる実験がまともな実験かと反撃し、他社の車で同じテストをしたら結果は皆同じだったと言っている。
トヨタの米国での広報活動は、日本企業には珍しく仲々うまい。英文Home Pageを見ればそのことがよく分かる。トヨタが主張しているのではなく、自動車業界の評論家の記事を引用して理論構成し説得力がある。
米国ではSUA=Sudden Unintended Accelerationという述語があるくらい車が勝手にスピードを上げる事故が多くあり、過去10年間で24k件のユーザクレームがあったが、NTHSが乗り出して調査するに値した事故はそのうち20件とも50件以下とも言われている。つまり本質的事故は少数だ。
情報不足の段階だが、南Illinois大の主張や電子制御犯人論は多分今後消えて行くだろう。San Diegoの事故はこれからの解析だが、私は狂言説が説得力があると見ている。とすると問題は3点だ。日本ではPriusのABSがらみのブレーキの問題、米国ではフロアマットとCTSのアクセルペダルの劣化問題、いずれも問題は明解で金と時間は掛かるが対処可能だ。トヨタなら雨降って地固まらせることが出来るだろう。
いずれも品質保証部門が気付くべき性格の問題だ。勿論設計の責任は免れないが、実は設計段階では気付きにくい問題ばかりだ。品質保証部門の実働部隊が(よく有り勝ちなことだから言うのだが)限定責任気分の非正規社員になっていないことを祈る。言われたことだけ間違いなくやっていれば良い実働部隊だとこういう問題は発見できないからだ。
私のを含めて船客にCanonのカメラの故障が相次いだ。製造ミスだと思う。情報通の某氏によるとCanonでは偽装請負がバレて請負の形を整えたら管理が行き届かなくなって今事故が多発しており、伸び掛ったシェアを他社に取られているという。ここにも非正規社員の問題がある。そもそも日本製品の高品質の源は平等社会(設計と対等な製造現場)にあり、欧米製品の低品質は事務所職員とは身分が違う製造現場の作業者にあった。Globalizationのおかげで作業者を非正規社員や海外製造などで格差化しないと競争出来なくなった所に問題の本質があると私は思う。 以上