今年は台風の当たり年だ。天気番組を見ながら「???...」ふと不思議に思った。なぜ台風は上陸すると弱まるのか? なぜ北上するのか?こんなこと高校では習わなかったし、大学や職場でも専門違いで勉強する機会がなかった。だから無知なだけでInternetで調べれば直ぐ分かるだろうと思ったのが大間違い、日本語では遂に見つからず、台風をHurricaneと言い替えて英語でやっと色々勉強した。
台風は赤道近くの熱せられた海上で無風の場合に発生するそうだ。熱がこもって上昇気流が発生する。気圧低下を補うために周辺から入り込んだ湿った空気が海から熱を貰って上昇する過程で冷やされ、雲つまり微細な水滴になり更には雨になる。水は熱を吸収して水蒸気になるが、水蒸気が水に戻る時にはその熱(潜熱という)は放出されるので、水蒸気から雲や雨が生まれると空気は更に熱せられ上昇する。このように海水の熱と周辺からの湿気の潜熱をエネルギー源として台風は成長する。
台風通過後の海温は1度前後低下し、台風が熱を吸い上げて行ったことが分かるという。台風は冷水域にさしかかると弱体化する。同様に台風が上陸すると、(陸より比熱の大きい)海の熱と湿気から遠ざかり台風は兵糧責めで弱まる。ポプラ並木を引き倒すようなエネルギーを消費するから弱まるのかと思っていたが、それよりも熱の影響が大きいそうだ。
ここで高校で習ったCoriolisの力の話が出てくる。メリーゴーランドのように反時計方向に回転する円板の上で、中心に立つA君と、縁に立つB君がキャッチボールをしたとしよう。A君が正確にB君に球を投げても、球が飛んで行く間に(A君から見ると)B君は左に回転するから、円盤上の世界で考えれば球は右に流れたように見える。逆にB君がA君に投げる球には回転の慣性がついているから、正確にA君に投げても右にそれる。同様にA君B君が円盤上のどこにあっても、投げた球は右にずれる。地球の北半球は北極から見ると反時計回りに回転する円板のようなものだから、動くものは全て右に力を受け、南半球では左に力を受ける。このことを19世紀に発見した仏数学者の名をとってCoriolisの力と呼ぶ。東京とSydneyでは洗面所の水が排水口に流れ込む際の渦の向きが逆という話もある。北半球では、排水口に引き寄せられる水は右にずれるから反時計回りの渦となり、Sydneyは逆だという。実験してみたという人もいる。洗面所の実験は外乱が大きいから信用し兼ねるが、北半球では台風や低気圧周辺の風は反時計回りに吹き、反対に高気圧周辺の風は時計回りに吹く。
台風が移動する原理をInternetで見ると、それ自身が強風を持つ台風という塊を、台風の外側の風が吹き流すのだという。一番分かり易いのは、高気圧の裾野を台風は時計回りに辿る。低気圧にぶつかれば台風は反時計回りに移動する。東に高気圧、西に低気圧がある間に台風が入ると、台風は両方の影響で超高速で通り過ぎる。
風といえば貿易風の影響も大きい。赤道周辺Doldrumsは太陽に熱せられて低気圧になりやすい。南北極Polar Capsは逆に高気圧になる。赤道周辺から上昇した空気は上空で冷やされて北緯・南緯25-30度辺りに下りてきて高気圧地帯Horse Latitudesを構成する。その影響がない北緯・南緯60度周辺Polar Frontは相対的に低気圧になりやすい。Horse LatitudesからDoldrumsに流れる空気はCoriolisの力で西側に吹き東風になる。Horse LatitudesからPolar Frontに流れ込む空気は逆に東に流れて偏西風となる。東行の国際線が西行より1時間ほど速いのはこのためだ。従って台風は赤道近くでは西に、北緯30度の屋久島より北では東に流される。
しかしInternetに明記されていた上記の原理だけでは、台風が一般に北に北にと流れてくるのを説明するには不充分だと思う。そこで松下の仮説が登場する。台風に南から吹き込む風の絶対湿度は他より高いであろう。それは渦の影響でむしろ北側に回りこむはずだ。すると台風の北側でより大きな潜熱が放出され、より大きな上昇気流が生まれて低気圧化が進む。だから台風の中心が北側にずれる、という仮説はどうだろうか。
今年日本上陸9個目の台風22号が東京に近づいている。 以上