世界的権威の英科学雑誌Natureの、無料週刊メルマガNature Briefingはお勧めだ。Nature本誌を有料購読しても私は恐らく読み切れまいと敬遠してきたが、メルマガは面白く読んでいる。このところ毎号COVID-19の記事があるが、3月20日号の記事が面白かったのでご紹介する。
私の理解では、この記事の結論は、@PCR検査などで検出できる新型コロナウイルスCOVID-19の感染者、つまりVirusを持つ人の、約半分は症状が無いか軽いかで(以下「無軽症者」とここでは言う)、感染の自覚が無く市中を歩いている。Aしかし無軽症者も、普通の人と同様に咳もくしゃみもするし、痰を吐き鼻をかんで、Virusをまき散らす。大便にもVirusは出る。これが感染源不明の感染者を生み出しているという。
因みに、PCR検査とは度々聞くがよく知らなかった。Polymerase Chain Reaction= ポリメラーゼ連鎖反応と言って、DNA複製の酵素 PolymeraseでVirusその他のDNAの特定部分を培養増殖させてから検査する技法である。増殖させないでも出来る簡易検査は、韓国など外国では行われている。
日本では、発熱者を医師が診てCOVID-19検査が望ましいと診断し、PCR検査を依頼すると、日を置いて2回検査し、「おめでとうございます。陰性でした」となる人が95%、Virusが検出されるのが5%だそうだ。この5%の外に、5%とほぼ同数の無軽症者が居ると考えれば、感染者の約半分が無軽症者だということになる。「日本は検査数を抑えているから発見される感染者数が少ない」と、例によって韓国などが悔し紛れに言っているが、それが本当なら5%では済むまいし、死亡者数ももっと大きいはずだ。
横道から記事に戻って、記事は様々な数字を引用する。@武漢当局が確認した26千人の感染者を米中合同チームが調べて(松下註:恐らく感染者から感染したかどうかとか)、武漢当局が把握していない感染者が2月18日までに37.4千人居たと結論付け3月6日に、チーム主査の武漢華中科技大Wu Tangchun教授が発表した。37.4/(26+37.4)=59%は無軽症者だとした。 Aこれに対して米Georgia州立大数学のGerardo Chowell教授がコメントした。@の59%は大体妥当な数字だが、@では感染者に接する確率は全ての市民で等しいと仮定している。実社会では接する機会の多い人と少ない人が居るはずだから、実際には59%よりも小さいだろうと言った。
B2月初めに武漢の日本人565名を日本政府がチャータ機で帰国させ、内13名が感染者だったが4名(4/13=31%)は終始無症状だったと、3月13日に発表された。無症状が31%だから無軽症者はもう少し多いはず。
CDiamond Princess号の乗客乗員3,711名のうち、約7百名が感染したが、感染者の18%は無症状だったと、3月12日に発表された。ただ乗客の多くは老人だったから、通常の市民だったら31%に近くなるだろうとも。
D上記Chowell教授は、これらのデータから無軽症者は感染者の40-50%と推定した。教授はImplementing strong social-distancing=人々が互いに距離を置くこと、が大事だとも言っている。
E中国の研究で700人の子供の感染者の56%は無軽症者だったという。
F中国の研究で17人の症状のある感染者と、1人の無症状感染者は、1人当たりで同等のVirusをばら撒いたと3月19日に発表された。
細かいことを言っても仕方ないので私は約半分と冒頭で書いた。無自覚の無軽症者が約半分で良かった。もっと多いと収拾がつかなくなる。以上