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うつせみScience
2020年 7月 3日
         新型コロナのワクチン

 新型コロナウイルスのワクチンが話題になって来た。そのレベルにまで進んで来たのだ。ウイルスが体内に入って来ると、ウイルスだけでなく異形の蛋白質全てに対して働く「自然免疫」がまず稼働し、ウイルスと初戦を交える。その間にウイルスに入り込まれた細胞はSOSとしてInterferonを出す。それを受けた免疫細胞が、ウイルスを無効化または破壊する蛋白質、つまり「抗体」を作って闘う。これを「適応免疫」という。闘いに勝てば回復するが抗体は残り、免疫細胞はその闘い方を記憶する。新型コロナウイルスの抗体は数か月で消えてしまうという初期的な発表もあるが、天然痘や結核に対する抗体のように一生残っていて欲しいものだ。

 感染時の治療薬と異なり、感染する前に抗体を作り、感染しないように準備するのがワクチンだ。伝統的には不活性化ウイルスをワクチンとした。実験室でウイルスの世代交代を繰り返し、偶々発生した不活性化したウイルス株を利用する。不活性化していてもウイルスをやっつける抗体ができる。その抗体が同系統の本番のウイルスに対しても有効であることを期待する。つまり病害が弱く、しかし抗体が共用できるような不活性化ウイルスが出来てくるのを待つのだから、非常に時間が掛かる。1981年発生のエイズも、2002年発生のSARSも、まだワクチンはできていない。

 しかし今回初めて、伝統方式の他に、遺伝子工学をフルに活用したワクチンが開発されている。新型コロナウイルスに対するワクチンは世界中で百数十種も開発中だが、大きく分けると次の5種だと思う。@上記の「不活性化ウイルス型」も開発されているが、時間が掛ると思われている。

 Aウイルスの遺伝子も人と同様に、4種類の核酸の組合せで、DNAとそのコピーRNAだ。但し人のRNA/DNAは10万倍も長い。新型コロナウイルスは1万分の1ミリの球体の表面に、人の細胞に取り付くために約百本の突起物=Spikeが生えている。この突起物の蛋白質を作るRNA/DNAだけを抽出して人体に注入し、体内で設計図通りの突起物を増やせば、抗体が発達してウイルスが来ても闘える。突起物を作れという指令のRNAをmRNA=Messenger RNAという。DNAは直接ではなく、一旦RNAに複製してRNAが蛋白質を作るので、mDNAとは言わない。これらを「mRNA型/DNA型の核酸型のワクチン」という。核酸型ワクチンは、安全だし、遺伝子が分かれば作れるので開発期間が短く、微量を注入し体内増殖させるのでワクチンの生産期間が短いのが長所だ。ただ体内での増殖に難があり、成功例はまだ一つもない。

 B病害があまり強くない感冒ウイルスに上記突起物のmRNA/DNAを仕込んで注入する。感冒ウイルスは体内で増殖し人は感冒に罹るが、同時に突起物が大量に生成されるから、抗体ができる。この感冒ウイルスのような「乗り物」をVectorと呼ぶので、この方式を「Vector型」と呼ぶ。

 Cウイルスの一部だけ、新型コロナウイルスの場合は突起物だけを、培養し大量生産して注入するワクチンを「Subunit型」ワクチンと呼ぶ。このほか、Dウイルスまたはその一部に似た高分子を人工的に作ってワクチンとする「VLP型」(Virus-Like Particle)もある。

 米国の希望の星、AmRNA型のModerna社は、mRNA 100μgを脂質に包んで注入し、栄養として細胞に取り込ませる。8人で良い結果を得たと5月18日に発表した。600名で治験中。役員が株売却中のニュースもある。

 中国のトップは、BVector型のCanSino Biologics(康希諾生物)社だ。感冒ウイルスに仕込んだmRNAを108人に注入した結果を5月28日に発表した。感冒自体の抗体に邪魔されつつも一定の効果があったという。

 英国の希望は、Oxford大・Astra Zeneca社のBVector型だ。感冒ウイルスにDNAを仕込んだADZ1222だ。優先供給特約付きでBrazilで2千人の治験をすると6月5日に発表した。英米欧印から投資を得て、優先供給する。

 阪大と阪大発のAnGes社・タカラバイオ社は、所要DNAを仕込んだ大腸菌を大量培養し、DNAを抽出して注入するADNA型だ。7月1日から大阪市立大学病院スタフ30人に接種すると、前日に大阪府知事から発表があった。

 成功したとしても、我々平民に届くのは、奇跡が重なって2021年末、希望的には3年後だと私は思っている。それまでは耐え忍ぶしかない。以上