二酸化炭素つまり炭酸ガスが増えると地球が温暖化して気候がおかしくなり、北極南極の氷が融けて島国が沈むから、炭酸ガス放出を抑えようと京都議定書で国際的に決まり、最近それが発効した。
炭酸ガスが増えるとなぜ温暖化するか? 太陽光のエネルギーの半分は可視光線と紫外線で、あとの半分は熱線(赤外線)だ。大気中に僅かしかない炭酸ガスは、可視光線・紫外線に対しては無色透明だが、熱線に対しては半透明で、熱線を反射・吸収・透過する。透過分は地球を暖める。可視光線・紫外線はあまり影響されずに地表に達し地球を熱する。暖められた地球が発する熱線は炭酸ガスで反射・吸収され、大気を含む地球に蓄熱される。温度が上がるということは分子の振動が活発になることだ。炭素原子Cが1個に酸素原子Oが2個両側に付いた炭酸ガス分子が、飛行機が両翼を振るように振動して蓄熱する。だから炭酸ガスは温室効果がある。
このような温室効果は炭酸ガスに限らない。メタンCH4、亜酸化窒素N2O、フロンやフロン代替ガスなどの塩化弗化カーボン類なども同様だ。これらは大気中に微量しか含まれないが分子当たりの温室効果は炭酸ガスより遥かに大きいので、大気の温室効果に占める割合は無視できない。
ガス | 1750年の大気% | 1995年の大気% | 今の大気温室効果% |
二酸化炭素 | 280ppm | 360ppm | 55% |
メタン | 0.70ppm | 1.70ppm | 15% |
亜酸化窒素 | 280ppb | 310ppb | 5% |
弗化塩化炭素 | 0 | 900ppt | 25% |
Scientific American3月号に面白い論文があった。地球は今より5-6℃平均気温が低いだけの氷河期が実は常態で、10千年前から現在に至る間氷期の方が、100千年位の期間に一度10千年ほど続く特殊な時期であるらしい。地球特に陸地の多い北半球に注ぐ太陽光のエネルギーは、22千年周期の地球の回転軸のミソスリ運動、41千年周期の回転軸の傾き、100千年周期で変わる太陽との距離、によって変化する。北半球に届く太陽光は10-20%の振幅で、周期22千年の正弦波が100年周期で振幅変調されたような同じ波形を古来繰り返して増減してきた。そのピークの10千年ほどが間氷期になるそうだ。その太陽光の増減と、大気中の炭酸ガスとメタンの増減がほぼ同期していることが、南極の氷を3kmの深さまで掘り取って400千年前からの大気の気泡を分析したら判ったという論文だった。太陽光が増加すると光合成で炭酸ガスが減るのかと思ったら、それよりも消防隊の居ない太古には乾燥した森の火事で炭酸ガスが増える効果の方が大きかったそうだ。一方太陽光が増加すると沼地や落葉・倒木の発酵でメタンが増える。
炭酸ガスとメタン、同時に気温も、今から105-110千年前にピークを迎え、太古からのサイクルに従って下降した後、太陽光の下降継続にも拘らず炭酸ガスとメタンは、今から5-8千年前に突然上昇し始めたという。筆者はこの理由を農耕開始と人口増加に求めている。森林を開墾すれば光合成が減って炭酸ガスが増え、田んぼに草を敷き込めばメタンが発生する。人口が増えれば薪を炊くし排泄物からメタンが発生する。その証拠に天然痘の流行で16-17世紀に世界の人口が急減した時には炭酸ガスは一時的に減少したという。それに加えて19世紀以降の工業化で化石燃料消費が急増し炭酸ガスが増加しているのは周知の通りである。歴史時代以降工業化以前まで、地球の平均気温が本来下降するはずの値と対比して、人間が0.8℃持ち上げたと筆者は主張している。それに対して工業化以降の上昇はまだ0.6℃だという。筆者は今後1千年は化石燃料の消費で気温は上昇するが、化石燃料の枯渇と共に地球は小氷河期に入ると予言している。
温室効果は炭酸ガスだけではないこと、温室効果ガスは化石燃料からだけではないこと、それが小氷河期入りを防いでいることには驚いた。以上