恥ずかしながら、初めてオンライン授業=Webinar(Web-Seminar)を受講した。東大IPMU研の講演会で生涯第2回も決まっている。新型コロナウイルスの制約で増えたが、Webinarは何年も前から使われているそうだ。
伊藤隆敏Columbia大教授は有名だ。1973年一橋経済卒、修士修了、1979年Harvard大PhD、国際マクロ経済学者としてMinnesota大、一橋大、東大、Columbia大で教職。東大公共政策大学院の設立充実を主導し同大学院院長。日本経済学会会長や財務省関連の委員長やNew York FRBの諮問委員会委員など行政との関係も深い。日本の経済界がスポンサーになって毎年日本で日本経済に関わるセミナーを開催して来られたが、今年はCOVID-19の制約でWebinarの形で「What Japan should do now in preparation for Japan's new normal.」という表題で開催された。そのおかげで、知り合いの紹介で不肖私も聴講できた。
Webinarは、これも有名な本田桂子Columbia教授(<--世銀・McKinsey幹部)の司会で、米東時間8-9am=日本時間9-10pmにZoomのWebinar機能で行われた。Web会議と違って参加者のVideoとAudioは切れている。画面中央に3つIconがあり、Chatは質問などの入力用。Raise Handは「挙手」する機能。Q&Aは挙手に対して当てられた時に、VideoとAudioを活かすのだと思う。講師の伊藤教授、司会の本田教授の他にもう一人大学院生(?)の操作者が居て、画面を講師の顔とスライドに切り替える。講義に合わせて、スライド上のキーワードを赤ペンで囲んだり、グラフに上昇矢印を付け加えたりする。仕組みはそうだが、運用上今回は質問は予め提出またはChatで提出することにしていたらしかった。会議のためにZoomAppをDownloadしたPCなら、上記のようなWebinarの機能も含まれていた。
伊藤教授の言われるには、3月に急に大学から授業のWebinar化の通達があり、スライドは従来方式で準備したものが使えたが、Q&Aがうまく行くのか心配したとのこと。しかしやって見ると、Webinarの双方向性は教室よりも優れていたと言われた。(今回は使わなかったが)質問者の名前は表示され顔も見えるので、教室の隅から飛んで来る質問よりもうまく対話できるそうだ。学生から、スライドは予習して来るから授業は双方向を中心にとの希望もあるとのこと。技術屋はこんなことに興味深々だ。
講義内容だが、私は門前の小僧で経済も結構見聞きしているので、あまり驚く内容ではなかったが、細かい点まで頭に入っていて、要点を整理して短時間で提示されたのは流石だと感心した。米実体経済は4-6月で多分底を打つが、年率で-40%ほどになることが危惧されており、Lehman Shockの時の-8%よりも遥かに深刻だと。しかし株価は下落の後既に8割方戻してきており、Lehmanの時回復に数年掛ったのとは対照的だ。この乖離の理由は、@上記Zoomを含めて情報会社など新型コロナウイルス騒ぎでブームを得た企業の比重が今や大きいこと。A実体経済の落ち込みはワクチンが出来るまでの限定期間であること。B新型コロナウイルスは共通の敵で反対者が居ないから、政府も中央銀行も素早く対策を打てたこと。C企業がLehman以降慎重になり内部留保を厚くしていた所に災害が来たこと。
米中の経済摩擦で、世界に2つの経済ブロック、2つの供給網、2つの技術標準ができる可能性がある。日本は、@米中どちらかに従属するか、A日欧印豪で第三極を作るか、を迫られる。Aが国益であろうと。
新型コロナウイルス対応でDigital化が進み、Teleworkが再評価されると、子育て世代など短時間勤務希望者が働きやすくなる。大学は上記のようにWebinarで反って質が向上する。病院は完全予約制でカード払いなど、滞在時間を最小化する。非接触決済が進むという。日本経済から1円と5円の硬貨を廃止し、10円単位にした方が効率化すると。
日本では、生産性が低いサービス業を中心にDigital化で「変わるチャンス」と捉え、政府は戦略的に後押しをすべきだとも。私見では、各人に10万円を配ることすらままならぬ行政も同じだし、非能率な商店街が自民党の票田だから、変革促進よりも救済に走るのが現実だと危惧する。
このWebinarは続くようだ。今度は英語の授業を受けてみようか。以上