携帯電話系高速データ通信が盛んだ。NTTがXi(「クロッシー」と読ませる。Cross-iか)のPCアダプタを年末に売出し、広告で新宿駅西口の柱を埋めた。AUは4月に「イーボWiMax」を使ったSmart Phoneを売り出す。
無線LAN(Local Area Network)=Wi-Fi(Wireless Fidelity)はかなり普及して来た。半径20m前後の範囲にある高速移動をしない機器に20-300Mbps(Mbps=1秒当たり百万ビット)の通信を提供する。その次の技術としてWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)=Wireless MAN(Metropolitan Area Network)が生まれた。半径1-50kmの範囲に提供するから携帯電話的だ。その内特に時速120kmの移動を許す規格をMobile WiMAXという。広義には広帯域無線アクセスシステム=BWA=Broadband Wireless Accessともいう。高速移動を許すBWAが今ホットな領域だ。
2.5GHz帯の電波を使ったMobile WiMAXのあり方を検討して来た総務省は、既成携帯会社以外の新会社に免許を与える方針で、2007年末にKDDI系のWireless Broadband企画社と、独立系PHS会社ウィルコム社の2社に免許を与え、ソフトバンク系OpenWin社は涙を呑んだ。天下りが名を連ねるKDDIと、「損をしても天下りは受入れない」と公言するソフトバンクの差だと当時言われた。しかしその後ウィルコムは本業のPHSの不振から経営危機に陥り、ソフトバンクの支援下で再建中だ。
これで携帯電話系高速データ通信は勝負あったと私は誤解した。KDDI系事業会社のUQコミュニケーションズ鰍ヘ2009年7月にWiMAXサービスを開始し、PCに搭載され始めたからだ。都市部ならどこに出歩いても高速でWebが使えるが、それほど出歩かない私には料金が高過ぎる。ところがDocomoがXiというBrand名でLTE規格のPCサービスを昨年末から始めた。えっ、それ何?
2.5GHz帯のMobile WiMAXは上記の如く1社はサービスを開始した。一方Docomoは、既認可の電波(FOMA用2GHz帯)を高度に活用してLTEを実現した。これは上記のMobile WiMAXとは別の話だ。日本の携帯電話会社は、Docomo、AU=KDDI、Softbank、E-Mobileの4社があるが、いずれも現行サービスの延長線上にLTEでの高速サービスを計画している。多くはまず現行電波の一部を活用してサービスを始め、利用拡大に伴って新しい4つの電波帯域(1.5GH帯に3つ、1.7GHz帯に1つ)の免許を得て拡大する計画だ。 LTE=Long Term Evolutionとは妙な名だが、標準化団体が携帯の第3世代技術3Gを定めた際にその次の技術として想定したと理解すれば納得の命名だ。2015年以降と想定される第4世代に限りなく近いという意味で第3.9世代携帯技術とも呼ばれ、またSuper 3Gとも、E-UTRA=Evolved Universal Terrestrial Radio Accessとも、E-UTRAN=Evolved Universal Terrestri-al Radio Access Networkとも呼ばれる。Docomoが2004年に提唱して開発を先導し、各国を巻き込んで標準化したというから立派だ。
DocomoはFOMAの次はXi(=LTE)だとしている。PCに挿入して37.5-75Mbps(将来100MHz。現行FOMAは7.2Mbps、3Gは2-7.2Mbps)のLTE通信が出来るPCアダプタ(LTEの無い地域ではFOMAで通信)を12月に売り出したが、今後FOMA(音声)とLTE(データ)のDual Mode端末を今年末に出し、2012年には全国主要都市に広げる方針だ。Docomo以外は、LTEに進出することは既定方針ながら具体策は未定で、そのGapを現行サービスの高度化で埋める模様だ。経営的にもサービス的にもDocomoに比べて二度手間は免れない。第4世代の時期によってはLTEをスキップする会社もあるかも知れない。
具体的には、AU/KDDIは上記のように、40MHzのSmart Phoneを「イーボWiMax」の通信で4月に発売し、LTEは2012年としている。Softbankは今春にUltra SpeedのBrandで42MHzのデータサービスを開始するが、LTE開始時期は未定とのこと。E-Mobileは同じく42MHzのEmobile G4のデータサービスを昨年12月に開始し、LTEは2012年に開始すると言っている。この42MHzの方式は現行第3世代技術の2回線を束ねる方式で、E-Mobile等が提唱し国際標準化された。Softbankは「LTEは実質37.5MHzだからUltra Speedの方が速い。Docomoにスピードでは負けない」と言っている。
携帯電話系のデータサービスは益々高速化する。有難いことだ。以上