San FranciscoからYosemite国立公園に向かうInterstate 580が丘陵地帯に差し掛かると、丘陵の尾根筋一帯に無数の各種風力発電塔が設置してある。ほとんどはプロペラ式だ。もし近くに行けばそこら中でヒュンヒュンいうはずだ。人里離れた丘陵だから出来ることだと思う。日本では1-2基の風車が立つ程度しか見たことがないので、ここの無数の風車が並ぶ景色は壮観だ。そう思って通り過ぎた直後の8月16日の米紙USA Todayは、米国の風力発電事情を特集記事で伝えていた。私は電気工学科で勉強したから、発電機を回す水車やタービンは少々土地勘があるが、水力発電が7割だった頃の話だから勿論風車などは習わなかったので、近年気になっていた。丁度いい、と精読してみた。
米国では100基ほどの風車を尾根筋に建ててWind Farmと呼ぶそうだ。60mほどの塔に30mほどの羽を3枚取り付けたプロペラ式風車が一般的だ。風向きを感知して風上に風車を向ける機構がある。風速3m/sほどから回り始め、風速向上に応じて羽の傾きを増加させて回転モーメントを減じ、25m/s以上では壊れないように回転モーメントをほぼゼロにした上で羽を固定する。風車の回転数は小鳥を殺さぬ低回転でほぼ一定とし、風が強い時はギアを変えて発電機の回転数を上げ、電圧を稼ぐ。風が良ければ1基で数百〜千軒の家庭の消費量1.5MWの電力を起こす。インバータで正規の電力にして使用するなり電力会社に供給する。そうかあ、いつもゆっくり回っているのはそういう理由だったのか。
今世界には25GWの風力発電施設があるが、欧州が盛んで米国には4GWある。このうち風車にして千基相当の1.6GWは、2001年中に建設された。2001年末で切れた補助税制への駆け込み需要だった。02-03年に建設する風力発電への税制優遇は、寿命20年の半分、10年にわたって1kWH当たり$0.018の税金還付である。これにより1kWHの発電コストは$0.04となり、一番安い天然ガス発電の$0.03に近くなる。使い捨てでない資源を使う発電を電力会社は10%以上にしなければならないという法案が今上院で討議されている。もしそうなると候補の風、太陽光、バイオマス、地熱などの中では風が一番安く有望である。太陽光発電が2番目に安いがそれでも$0.22-0.4/kWHもコストがかかるので、風とは段違いだ。なお米国の家庭は平均$0.082/kWHで、産業界は$0.046/kWHで電力を購入している。
米国の電力需要の1%は風力で供給されている。因みに52%が石炭、20%が原子力、16%が天然ガス、7%が水力、3%が油、2%が風を含む新エネルギーである。但しCalifornia州は進んでいて風力で7%供給している。欧州では20%近い国もあるという。
日本の風力発電設備は2001年末で450基、発電容量0.25GWである。2010年目標として3GWが掲げられている。火力発電コストの\7.3/kWHに対して風力は日本では\10-24/kWHかかる。日本では太陽光発電の方が風力より先行している。日本の発電設備はほとんど油の火力が53%、原子力が39%、水力が8%、その他は誤差範囲だ。米国が油に依存せず石炭でせっせと発電しているのに対して日本の油依存は危機的ですらある。
米紙によれば風力発電の問題点も多いという。
1.建設単位が小さいために電力当たりの建設コストが高くつき、天然ガスの場合の1.5-2倍の$1B/MW。日本では\2.4-3.7億/MWと言われる。
2.発電量が「風まかせ」で予測困難なため、電力系内で調整する余分なコストが掛かる。風力発電が盛んな時点で火力を遊ばせるコストなど。
3.風力発電は町から遠いので、送電コストが掛かる。
4.補助施策を不公平とする伝統エネルギー業界の政治的発言力。
5.補助施策がらみで設備需要が急上下。
6.環境上の問題。小鳥を殺す、うるさい、美観を損ねる、など。
風力発電・太陽光発電といっても掛け声ばかりで比率でいえば無きに等しいのだろうという認識でいた。国内の認識としてはそれで正しいのだが、Californiaでは風力で7%という数字には驚かされた。海外では風力がエネルギー源として確立しつつあることを認識した。 以上