39年ぶりに米Rocky山脈の一部Wyoming州Yellowstone国立公園に遊んだ。39年前米Illinois大留学帰路の周遊観光旅行で、夜行列車を朝下りてレンタカーでYellowstoneに北から入り、夕方東に抜けてまた夜行列車でColorado州に向かった。米国立公園の中でもYellowstoneは秀逸と思い出に浸りつつも交通不便で再訪の機会が無かったが、やっと今回はワイフと次男と3人で、Webで予約したロッジに3泊できた。夜行列車の日帰り貧乏旅行から飛行機の3泊旅行に進化したので、今回は航空便が「一番不便でない」南側のJacksonに下り立ち、南からレンタカーで出入した。
ここには国立公園が2つ南北に並んでいる。南側のGrand Teton国立公園は山と湖の世界だ。Grand Teton山を中心に3つの槍ヶ岳が聳え、一部には氷河化した根雪もある。その麓に透明な湖が幾つもあり、草原が果てしなく広がる。1953年の映画"Shane"の最終場面で"Come back, Shane ! Come back..."と叫ぶ少年を後にしてShaneがポクポクと馬で去る向こうの山がGrand Tetonだった。自然派がキャンプやハイキングを楽しむ所だ。
車1台当たり週$20の入園料がGrand Tetonと共通のYellowstone国立公園は北側に隣接している。標高2千m以上の 100 km x 80 km の高原の公園では温泉活動が盛んだ。長年の噴気の影響で岩石が黄色に変質しているからYellowstoneなのだ。伊豆でよく見かける垂直六角柱の熔岩層、つまり玄武岩が随所に見られる。割れ目は伊豆と同様灰黒色だが、この表面すら黄色く変質している。そのYellowstoneには3つの主要観光資源がある。
(1)Yellowstone湖などの湖、森林、草原、川などの自然美と野生動物、
(2)Yellowstone川の渓谷美
(3)間欠泉や温泉湧出テラスなどの温泉資源
Yellowstoneの自然美の一部は1988年の大火で傷つき、見渡す限り一部炭化した枯木の山になった部分もあった。昔は山火事を必死に消したが、自然のサイクルを守るには山火事もまた必要悪という考えから最近では自然発火の火事は放置するそうだ。確かに枯木の根元には若木が一面に育っている。そこでMooseという鹿やBisonという牛の群が草を食む。突然渋滞した車列の前方遥かにBisonの尻尾が見えた。と思ったら我々の車の直後を2頭の巨大なBisonが悠々と通って道路を横断して行った。透明な波が打ち寄せる湖畔、大小の川と滝、果てしない草原など自然が美しい。
Yellowstone川が掘り込んだ Grand Canyon of the Yellowstoneという渓谷がある。ArizonaのGrand Canyonは赤い地層だが、ここでは黄色い。川の本流が2つの大滝を形成しているが、そのうちのLower Fallsの遠景が代表的な景色として絵葉書になっている。ワイフが疲れないうちに急坂と328段の急階段で滝の下に下りて虹に落ち込む滝の美と迫力を見た。
間欠泉ではOld Faithful Geyserが有名だ。何世紀もの間忠実に1-2時間毎に数十mの高さに膨大な量の湯と蒸気の噴出を繰り返している。それ以外にも大小無数の間欠泉があって、1分と言わずほとんど常時噴出しているもの、2-3時間あるいは十数時間おきのもの、数日ごとのもの、不定期なもの、など周期も多様なら、噴出の態様も多様だ。一応の予測に基づく計画的行動と、賭けと好運によって、今回は十数時間モノ3ヶ所を含む10ヶ所もの噴出を見ることが出来た。噴出孔の形も噴出のプロセスも噴出内容もみな異なるから幾つ見ても飽きない。但し噴出を見るには、作戦と、私の苦手な気長に待つ心が必要だ。
別府の地獄めぐりのような温泉噴出地域があり、但し別府とは違って周囲に家はなく遊歩道だけだ。地獄の一つに坊主地獄があるために、その地域名はMud Volcanoだ。Yellowstoneの北端には、何百万年もの温泉湧出が石灰主体の含有物を沈殿させて棚田の丘を作り、あるいは壁面が美しい円丘を作っているMammoth Terracesがあり、一部は遊歩道で一部は車で回る。渇水期の8月で湧水量は少なかったが、春には棚田に水が溢れる。
39年の間に温かい家族と少しのお金ができたが、体力も好奇心も39年前から聊かも衰えていなかった。Yellowstone国立公園は交通は不便だが、自然派にも体育系にも物好き派にも楽しめる素晴らしい所だ。 以上