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− アルキメデスの原理 −
その2
1997年9月6日
3.教科書での説明
いくつかの中学、高校の教科書・参考書をあたってみた。
それによれば、アルキメデスの原理については次のような説明が一般的である。
液中の圧力は深さに比例し、それが物体の表面に垂直に働く。
この圧力を合成したものが物体に働く浮力である。
図1のような円柱形の物体の場合を考えると、側面に働く圧力は左右が互いに打ち消しあい、
上面と下面に働く圧力は下面の圧力の方が大きいため、上向きの力(=浮力)が発生する。
その大きさは上面と下面の高さの差に対応する液の圧力差に上下面の面積を乗じた量、
すなわち物体の体積に等しい液の重さと同じになる。
この説明では、
(1)液中の圧力は深さに比例する。
(2)液の物体への圧力は、物体の表面に垂直で、液から物体の内部に向かう方向に働く。
ということを前提としている。この前提は、直感的に理解できるであろうか?
4.実験に頼ることの危うさ
小中学生向けの教科書として私が最も優れていると思う、
明星学園・理科部著の『自然科学』シリーズ(むぎ書房刊)の3冊め「力学的な現象」
を開いてみると、浮力の大きさについて次のような記述がある。
物に はたらきかける 浮力の 大きさは、 その 物の 体積に よって きまります。
その 物が どんな 物質で できて いようと、 どれだけの 重さが あろうと、
浮力の 大きさには 関係が ありません。
物の 重さが ちがって いても、 体積が おなじなら、
その 物に はたらきかける 浮力の 大きさは おなじです。
重さが おなじでも、 体積が ちがえば、 浮力の 大きさは ちがって きます。
そして、このことを、次のような実験で確かめる手続きに移る。
実験1:同じ体積の鉛、鉄、アルミニウムの重さを空気中と水中で測定して、
空気中と水中の重さの差(浮力)がいずれの場合も等しいことを実験で確認する。
実験2:体積の異なる鉛について空気中と水中の重さを測定して、
その差(浮力)が体積に比例することを確認する。
実験3:メスシリンダーに水を入れ、水の中にアルミニウムのかたまりを沈め、アルミニウムが排除した水の重さを量る。
そして、浮力が、排除した水の重さに等しいことを確認する。
非常によくできた本であるだけに残念でならない。
確かに「アルキメデスの原理」を公式として知っている人は、これらの実験の意味を理解できるし、
実験の結果を正しく予想もできるだろう。
しかし、逆にこれらの実験を通して「アルキメデスの原理」を導くのは容易ではない。
もし、これらの実験から浮力の法則を帰納できたとしても、それだけではまだ仮説の域を出ない。
これを「原理」と確信できるためにはさらに越えるべきハードルがあると思う。
帰納的アプローチは重要であるが、本当の科学的理解にいたるにはそれだけでは不足である。
では、どうすればよいか?
アルキメデスやガリレオのアプローチに学ぶところはまだまだ多い。
その3 につづく
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