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− 有理数の正しい数え方 −
その1
1997年6月7日
1.有理数の正しい数え方
有理数、すなわち既約分数は数えることができる。 つまり、有理数と自然数とは1対1に対応させることができる。
このことを加算的、又は可付番という。
さて、有理数の正しい数え方とは何か。
難しいことは抜きにして、とにかく次のような対応関係を作ってみよう。
自然数 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
… |
有理数 |
1/1 |
1/2 |
2/1 |
1/3 |
2/3 |
3/2 |
3/1 |
1/4 |
2/5 |
3/5 |
3/4 |
4/3 |
5/3 |
5/2 |
4/1 |
1/5 |
… |
このような対応がどんな規則で作られているか。 以下に説明する。
2.相加演算子
任意の既約分数 m/n に対し、 演算子 ↑ 及び ↓ を次のように定義する。
↑m/n=(m+n)/n
↓m/n= m/(m+n)
このとき、演算の結果得られた (m+n)/n , m/(m+n) もまた既約分数である。
[証明] m/n が既約分数のとき (m+n)/n もまた既約分数であることを証明する。 m/(m+n)
の方も全く同様に証明できる。
いま (m+n)/n が既約でないと仮定すると、 m+n と n は共通の約数を持つ。 この約数を
p( p≧2 )とすると、
m+n=ap , n=bp (a,bは自然数)
と書くことができる。すると、m=ap-n=ap-bp=(a-b)p となり、m も約数 p を持つ。 これは、m/n
が既約( m と n が互いに素)であることに反する。 従って、 (m+n)/n は既約でなければならない。(証明おわり)
演算子 ↑ 又は ↓ を、1/1 に有限回施して任意の既約分数を得ることができる。例えば、
↓1/1=1/2 , ↑1/1=2/1
↓↓1/1=1/3 , ↓↑1/1=2/3 , ↑↓1/1=3/2 , …
[証明]
演算 ↑ 及び ↓ の逆演算をそれぞれ ↑^ 及び ↓^ とする。すなわち、
↑^m/n=(m-n)/n 但し、m>n
↓^m/n= m/(n-m) 但し、n>m
このとき、(m-n)/n ,m/(n-m) もやはり既約分数である。また、
↑↑^m/n=m/n , ↑^↑m/n=m/n …@
↓↓^m/n=m/n , ↓^↓m/n=m/n …A
任意の既約分数 m/n (m/n≠1/1)が与えられたとき、 m>n 又は n>m に応じて ↑^
又は ↓^ を一意的に施すことができる。 こうして得られた新たな既約分数を今 m1/n1 とすると、 m≧m1 かつ n≧n1 である。 m1/n1
にもまた ↑^ 又は ↓^を施して、次に m2/n2 を得る。 この様な操作を繰り返すと、
m≧m1≧m2≧m3≧m4≧…, n≧n1≧n2≧n3≧n4≧…
となり、最後に mk/nk=1/1 となる。 つまり、[i]^ で ↑^ 又は ↓^ を表したとして、
[k]^[k-1]^…[3]^[2]^[1]^m/n=1/1 …B
が一意的に得られる。 さて、次に上の式の1番左の[k]^が ↑^ であれば ↑ を、 ↓^ であれば
↓ を、つまり [k] を両辺に施す。すると、
[k] [k]^[k-1]^…[3]^[2]^[1]^m/n=[k]1/1
であるが、左辺左端の [k] [k]^ は ↑↑^ 又は ↓↓^ であるから、 @又はAから、この部分は無いのと同じになる。
同じ様に [k-1],[k-2],…,[3],[2],[1] をどんどんと施してやると、
[1][2][3]…[k-1][k][k]^[k-1]^…[3]^[2]^[1]^m/n=[1][2][3]…[k-1][k]1/1
左辺はただの m/n になるから、結局
m/n=[1][2][3]…[k-1][k]1/1
が一意的に得られることになる。(証明終わり)
例えば、m/n=5/13 のとき
↓^5/13=5/8 , ↓^5/8=5/3 , ↑^5/3=2/3 , ↓^2/3=2/1 , ↑^2/1=1/1
すなわち、 ↑^↓^↑^↓^↓^5/13=1/1 であり、従って
5/13=↓↓↑↓↑1/1
となる。
[参考]
Bで示した操作、すなわち↑^ 又は ↓^ を次々と施す操作は実は「ユークリッドの互除法」と全く同じである。
mとnが互いに素であるからこの操作で最後には1/1になったが、 一般の場合には最大公約数を分母分子とする分数に収斂する。 例えば、m/n=6/15
の場合、
↑^↓^↓^6/15=3/3
となる。
なお、ユークリッドの「互除法」は「相除法」とも言うが、 上で見たとおりここで言う「除法」は加減乗除の除法では無く、
本来は「減法」と言うべきものである。
そこで「互除」法の逆演算をここでは「相加」演算と称することにした。
その2 につづく
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