八ヶ岳三井の森は中央の幹線道路の他は散歩に適した曲線状の道の設計になっているのがよい。遅い春はミネザクラと若葉、夏は野生のアヤメを初めとする高山植物の花たち、早い秋は黄金色の唐松の黄葉、純白の雪に残る栗鼠の足跡、雪山、早春は樹氷など、四季の表情がそれぞれ豊かである。四十雀(シジュウガラ)は名の通り始終鳴いているが、カッコウ、ホトトギス、ウグイス、ビンズイなどがさえずり、アカゲラが幹を叩く。最近はキジの声が聞けなくなってしまった。
四季それぞれの山が美しい。八ヶ岳三井の森は阿弥陀岳の麓にあるので、阿弥陀岳の険しい山容が日々表情を変えていくのを見て季節を感じる。北方には諏訪富士とも呼ばれる蓼科山の優雅な山容も、大八車の車輪半分のように見える車山も見える。南西から北西にかけて、南アルプスの甲斐駒ヶ岳、中央アルプスの木曽駒ヶ岳、独立峰の御岳山、北アルプスの乗鞍岳、穂高岳、槍ケ岳、常念岳などが見える。
八ヶ岳三井の森の南隣には蓼科観光の丸山別荘地があり、一番高い位置と低い位置で道がつながっている。三井の森は道が舗装され別荘が建っている区画が多いのに対して、丸山別荘地は急勾配のジャリ道で歩き難いが別荘も少なくより自然がある。松本電鉄・諏訪バスが「八ヶ岳中央高原四季の森」と名付けて周囲で大規模な別荘地分譲を進めている。また八ヶ岳三井の森の上(東)に「しゃくなげの丘」を三井の森が販売している。
星空が素晴らしい。樹木が邪魔になるが目標に合わせた角度と場所を選べば理想的な夜空を観測できる。もし樹木に遮られないもっと広い展望が欲しい場合には、八ヶ岳横断道路を小淵沢に向かって行き、鹿の平・茜窯の看板から西に下って開ける農場の周辺がよい。東の地平線まで見たい時には清里の上にある「まきば公園」が理想的である。
八ヶ岳三井の森には、池の直ぐ上を南北に走る道の北端に松田聖子のかまち企画の別荘があるが、ここで松田聖子を見かけたことは一度も無い。
テニスコート2面は比較的空いていて使いたい時に使える。三井の森一帯で写真やスケッチの題材にはこと欠かない。
三井の森に限らないが、この辺り一帯に背の丈1米ほどにひょろひょろと伸びるマメ科エンジュの葉に似たタカトウグサという草が生える。土地の人はこれを初夏に採取して陰干しにし、煎じて胃腸の薬にする。センブリに似た苦い味がする。センブリも時々見かけるが誰かが取って行ってしまうので育たない。秋には土地の名でヂゴボウ、一般的な名でイグチというヌメッとした茶色の茸が一帯に出てくる。これを採取するために八ヶ岳横断道路の道路脇に駐車した車が列をなす。但し茸は危ないから必ずよく知っている人に最初は教わること。
八ヶ岳三井の森は原村の北の境界線にあって、北隣は茅野市野営場と名付けられた市民のキャンプ地である。境界を越える行き来は禁じられているが、蛇の道は蛇ということもある。キャンプ場そのものはキャンプしない限り面白くもないが、散歩コースとして周辺は魅力的である。
八ヶ岳横断道路と御柱街道との交点は学林というバス停になっている。四つ角に見えるがよく見ると六差路である。八ヶ岳横断道路を北に向かった方向を時計の12時とすれば、5時の方向の細い林中の道を戻ると、最初唐松、ついでズミ(コナシ)の林を経て谷川に至る。この辺りから西方向の山の展望がよい。谷川を超えて行くとキャンプ場に入る。
学林の六差路から1時の方向に舗装道路を行くと、蓼科観光の美濃戸別荘地に入る。丸山別荘地と同様に自然派の別荘地である。別荘地の高い位置は見晴らしがよい。低い位置には登山基地としての美濃戸バス停、八ヶ岳山荘、登山口がある。登山口から入っていくと道は下って柳川に至り、川遊びができる。
3時および8時の方向にも道がある。第一年から数え始める古来の数え方では7年に一度、数学的には6年に一度寅年と申年に、この道を通って諏訪神社上社の本宮と前宮の四隅に立てる御柱(おんばしら)8本を引き降ろすから、この道を御柱街道という。社領の御小屋山から社殿までほぼ最短距離で下る直線的な道であり、千年以上前からあった道に違いない。但し1998年寅年の御柱は、適材払底のため史上初めて下社と同様ずっと北の東俣国有林から切り出された。
御柱街道を下ると、農水省の馬鈴薯の種を作る試験場と同省所管の八ヶ岳農業大学がある。大学の最上部には野菜、牛乳、ハム、チーズなどの直売所が作られており車が絶えない。この駐車場から八ヶ岳自然文化園に抜ける小道がある。牛舎に入ると叱られるが外を見学する限りは学内に入ってもよい。子牛を飼育しているコーナもある。子牛コーナの百米下に数棟の温室があり、シクラメンなどの花を即売している。
体育の日(月曜)とその前の日曜日の2日間、八ヶ岳農業大学の芝生広場にはテントが並び八ヶ岳Craft Fairが行われる。全国から素敵な工芸品が集まり、全国から客が来て賑わう。
信玄の強さは狼煙などによる通信網と必要時に兵と馬を送り込む機動力にあったと言われているが、その兵力移動のために棒のように真っ直ぐな軍道として棒道(ぼうみち)が作られた。甲府から大門峠を経て善光寺平に入って上杉謙信と対峙するための棒道(平行する何本か)が今の八ヶ岳横断道路のすぐ下を通っていた。丸山別荘地から横断道路を横切って20-30米下った位置に棒道の跡があり、また農業大学のすぐ下にもある。
御柱街道を下り、八ヶ岳農業大学の下、後述のCanadian Farmの更に下の林の中に小さな絵本美術館がある。諏訪湖畔にある同名の美術館の分館だが規模はこちらの方がやや大きい。主として外国の絵本の原画を美術品として展示している。メルヘン指向の人には楽しい。
八ヶ岳三井の森から八ヶ岳横断道路を1 km南下したT字路に、地元出身の彫刻家清水多嘉示の作品を中心にした八ヶ岳美術館がある。その隣に山のホテルGreen Plaza Hotelがあって食事ができる。T字路を下ると日本一の原村ペンション村があり、レンタサイクルができる。一角には八ヶ岳高原の水で焼いたことをセールスポイントにしたパンの店 Bergがある。ドイツ語だと思うのだが「ベルク」ではなくなぜか「ベルグ」と書いてある。ペンション村の最上部、八ヶ岳横断道路沿いの場所で夏は毎日、秋は休日に朝市が開かれ、野菜や手工芸品が並ぶ。8時にはもう店仕舞を始める。
八ヶ岳自然文化園は、原村ペンション村の北隣にある。夏の時期駐車料を取ることがあるが人は無料である。広い構内を四季を求めて探索するのは楽しい。高山植物が集まっている野草園、湿生花園は花の季節が見事である。小高くなったレストラン周辺からは山がよく見える。建物の中にはプラネタリュームがある。野外劇場では夏は毎晩映画が上映される。
パターゴルフに人気があるが、もっと安くて変化に富み運動量があるのは、ゲートボールで林の中を回るマレットゴルフである。
もみの木荘は、原村ペンション村の下に位置する原村村営の宿泊レクリエーションセンターで、村の産物の土産物店もある。外には夏の間営業の楽焼もある。また周囲にはテニスコートが多数ある。もみの木荘の少し上には郷土館があり、歴史的な展示がある。
ふるさと創生基金の1億円を使って原村は八ヶ岳農業大学の駐車場に温泉を掘り当てた。作業の最中から作業者が成功率9割と言っていたからよほどの自信だった訳だ。この湯をはるばるもみの木荘の下に引いて、もみの湯とした。駐車場がいつも一杯なほど地元の人を中心に人気がある。
もみの湯の道路を隔てた斜め下に、木花糸(モッカシ)という看板があるのはドライフラワーの店で、この辺りでは一番品数が多い。さらに下って右側に白い貨車のあるT字路を20米下がった辺りに「コットン村」の看板があるので左折する。次の看板に従って舗装されていない林の道に入ると奥深くコットン村という店がある。ご夫婦の手工芸品の店で、藍染めなども多いが、一番の見物はご主人が制作される木片を貼り付けて木肌を活かした絵額である。絵柄を考えてから木肌を探すそうである。但し本物は高価なので、それを印刷した絵はがきがよく売れる。
上記の白い貨車のT字路を折れて北に向かう。または御柱街道を下るとトーテムポールが立っていて、上里牧場への道案内があるT字路を南に左折する。観光牧場であるが、目玉はバーベキューレストランである。ちょっとした土産物店と迷路もある。動物の姿は見かけない。
トーテムポールと上里牧場の中間に紅茶店DATAがあり、美味い紅茶を飲ませてくれる。
御柱街道を下るとCanadian Farmの看板があってすぐ分かる。カナダの仏語地方であるQuebec州出身の多才なMarie奥様と、通称ハセヤンという髭もじゃな長谷川さんのご夫婦が開いたQuebec料理レストランである。Marieさんは青梅に移住してしまって残念だ。ハセヤンは家を自分で建て、パン焼きのかまどを作り、ハムやサケの薫製を自製し、何でもご自分でやってしまう行動的な人だ。年中 Quebec人と日本人の弟子が入れ替わり立ち替わり多数働いている。Quebecの若い人は英語も達者である。
Quebec料理はユニークだし、日本の中でQuebecを感じる事が出来る。懐に自信のない人には、それほど高価でない昼食メニューがお奨めである。もっと自信のない人には 700円のレーズンパンまたはクルミパンがよい。イーストの発酵を抑えた密度の高いユニークな手製パンで通称「ハセパン」ある。敷地の一角には Magasin Generalつまり「よろず店」の看板があり、カナダからの輸入品が置かれている。またレストラン2階には展示コーナがあり、しばしば工芸品の展示がなされる。
9月の第2日曜に行われる"Free" Marketには、多数の出店があり賑わう。Flea Marketの間違いじゃないのとカナダ人に聞いたが、いや Freeにやってもらうのだとのことだった。御柱街道に路上駐車の車が二百米も並ぶ。
ハセヤンは、茅野市の上(東)の方にある大規模店舗 Megamartの東側の裏手に「かえでの樹」というレストランを開いた。
Canadian Farmから南に歩くと、間もなく林の中の心もとない道になるが、恐れずに進むと小川の流れを丸木橋で渡り、白樺の林を通って八ヶ岳自然文化園に抜ける。田舎育ちの人には懐かしい雰囲気である。
八ヶ岳横断道路を原村ペンション村から南下し富士見町ペンション村のテニスコート群の辺りの山側に富士見町町営の富士見高原レクリエーションセンターがある。目玉はスキーゲレンデとゴルフコースと彫刻公園だが、土産物店もある。「創造の森彫刻公園」はスキーゲレンデの頂上の山頂にあり、狭い登山道を回転半径の小さい車でも登れるが夏のスキーリフトで登るのが正解。眺望と50点の抽象彫刻が配されたレンゲツツジやアヤメが美しい森の散歩道だ。
近くに伊東近代美術館があり、伊東深水、横山大観などの貴重な日本画が展示されている。
八ヶ岳横断道路のヨドバシカメラの保養所の北角におっこと亭の看板があり、そこから下った乙事の地に富士見町町営のそば屋さんがある。そばを打つところの見学も出来て町興こしは成功したように見える。この道を更に下り、T字路にぶつかって右折し北西に行く。500mほどで道は直角に左に曲がるが、曲がるや否や右折して更に北西に向かうと、道は北行し右側に大きな糸桜がある。5月連休が花盛りである。更に北に向かうと、左側の農家の入り口に「新次そば三井」という大きな木の看板が掲げてある。ここの一人前千円の自家製のざるそばは隠れた名物で、東京から名のある人が食べに来る。但し予約しないと入れてくれない。但し電話帳にも載せてない。電話帳にも載せてない電話番号をここに書く訳にいかないから、一度話の種に足を運んで欲しい。三井さんという年配のご夫婦がやっておられるが二代目で、新次さんは叔父さんとのこと。