諏訪湖の周囲に4つの諏訪大社があるが、一体と見なされている。南側にある2社を上社、北側の2社を下社という。上社の2社の内の前宮は元々の諏訪神社の場所であったが今は祭の時以外は訪れる人も少ない。本宮は不思議な配置になっているが素朴で好感が持てる。前宮と同様元々は東向きであったに違いないが後に追加した拝殿の面積を確保するために拝殿は北向きになっている。近くの温泉場から引いた温泉の手洗場があり少し渋い味の湯が出ている。前宮と本宮の四隅に立てる御柱のうち本宮一の柱が上社では一番大きくて立派である。
下社には春宮と秋宮がある。支持母体が違う時代に神のおわします時期を分けたのだが、今では春宮はひっそりとして秋宮がいつも賑わっている。甲州街道が中山道に達して終わる温泉街であった下諏訪の繁栄を背景に、4社の中で秋宮が一番立派で盛んである。ここにも温泉手洗場がある。下社では秋宮一の柱が最も大きい。
古い神社がみなそうであるように、諏訪神社も神殿がそれぞれ二組あって交互に建て直す式年造営を繰り返している。諏訪神社の場合、寅年と申年に建てるので数学的には6年に1回なのだが、第1年から数える伝統的な数え方で7年に1回と称せられる。神殿を建て直す際に聖域を表わす四隅の柱を建て替えていたのが段々大掛かりになり、主役となって御柱(おんばしら)祭に発展した。山で伐採した樅の木を皆で引き降ろして神域に建てるまでが一大行事になっている。学者によれば、縄文時代は巨木を皆で引いてきて神社に建てたり非常に背の高い社殿を作ったりしたものだそうな。御柱祭は縄文時代から伝わる最も古い形の祭ではないかという。
御柱祭の昔の記録を見ると、諏訪湖畔の高島城主と伊那の高遠城主が行列に加わっている。高遠城の方が格が上だったらしい。高島城は昔は諏訪の浮き城と呼ばれ湖の中に築かれたものだが、今は 2 kmも内陸になっている。岡谷側から天竜川に流れ出す諏訪湖の流出口を江戸時代に掘り下げて湖周辺に田畑を増やした経緯による。天守閣は鉄筋コンクリートの展示館になっている。城を見るなら松本城の方が良い。
諏訪湖には観光遊覧船が出ている。旧盆8月15日に行われる諏訪湖の花火大会は有名である。特に湖上花火の特徴を活かした 180度半円状に広がる孔雀花火はここでしか見られない。但し整理券を予め入手するか数千円の高い金を払うかしないと正面の湖畔には入れない。やや離れた湖畔でも正午頃から場所とりが始まっている。
諏訪湖畔には色々な観光施設がある。東岸には温泉で暖をとった温泉植物園がある。諏訪湖畔に東洋バルブを興して財を成した北沢氏が創設した北沢美術館は、Art nouveauのガラス工芸品と近代日本画である。片倉製糸跡の片倉館の目玉は女工さんのために作ったという立って入る大理石作りの温泉大浴場である。併設の諏訪美術館は信州初の美術館を称するが今となってはあまり感心しない。北沢美術館の姉妹館が、一つは清里駅に近い清里北沢美術館、もう一つは諏訪湖の南西岸のガラス工芸美術館である。こちらは美術館もさることながら広大なガラス製品展示即売店に人気があり、一見の価値がある。ガラス工芸美術館に近い東側に、98年7月に原田泰治美術館がオープンした。友人のさだまさし氏が名誉館長とかで、画伯のアトリエを兼ねるモダンな美術館で、田舎の風景を暖かく描いたポスターや挿し絵で有名な画伯の原画が展示されている。
東北岸には諏訪湖間欠泉センターがある。もともとはここに自然の間欠泉があったというが、温泉が段々足りなくなって温泉をホテルに回してしまい、観光のためだけにバルブを開けて温泉の噴水を見せるようなことをしていたが、今は観光施設のビルを建て人工的な湯溜りを作って人工的な間欠泉にしている。ビルの1階には水着で入る野外温泉プールがあり、2階はオルゴール館である。
上諏訪駅の東に元町があり、T字路に面して宮沢酒造がある。諏訪の銘酒「真澄」の醸造元である。T字路の一角にある駐車場に止めて店に入り\300でガラス杯を買うと数種類の酒の利き酒が出来る。その他自然食品が多種類陳列してある。
5月連休かその少し前に中央自動車道諏訪ICから西行する上り坂から諏訪湖南岸の山を見ると、群生ミツバツツジの赤紫に覆われた山が見える。見事な群生で山に登ると素晴らしいが少々骨が折れる。住所は諏訪市湖南南真志野である。豊田有賀という交差点の東約1km?の習焼神社と日東光学の間の狭い舗装道路を車で何処までも登る。未舗装の水平の林道に出たら左折して100m?行くと「秋葉神社」の看板と登山口があり、駐車可能な道路幅とUターン可能な場所がある。そこから健脚向き急坂を10分登ると秋葉神社とミツバツツジの世界に入る。
上記豊田有賀の交差点から辰野に向けて南に上ると有賀峠に至る。峠の東側の谷が矢ノ沢湿原でザゼンドウ群生がある。行くには峠を南に下った「ザゼンソウの里」駐車場に車を止めて上り直す。4月第1日曜がザゼンソウ祭り、初旬から中旬がザゼンソウの盛りで5月連休でも見られる。一部ミズバショウもある。
諏訪湖から少々離れるが、諏訪湖の東側、茅野市の山にカタクリ群生がある。場所は茅野市西茅野で、ショッピングセンタのMerry Parkに沿って東側の道を南下、小川を橋で渡った直後に右折して細い舗装道路を行けるところまで行く。その辺りの山が群生地である。但し駐車が難物で、各人の工夫と良識と技能が試される。
カタクリ群生といえば、諏訪湖の西側の岡谷市の出早雄小萩神社境内が有名である。
国道299号は、八ヶ岳西山麓の茅野から麦草峠で八ヶ岳を超えて東山麓に至る道である。冬季には通行止めとなる麦草峠は散策によく、角度を工夫すれば浅間山の勇姿と噴煙を遠く望むこともできる。登山基地にもなるし、北行して縞枯山の麓を通って横岳ロープウェイの上の駅までハイキングすることもできる。麦草峠から数百米ほどの道のりを東側に下った所に駐車場があり、そこから林の中を10分歩くと白駒池がある。山小屋も二つあるが、深山の幻想的な池が四季それぞれに美しく、行って後悔しない場所である。湖畔を一周して小1時間である。
麦草峠から西側に下ると、柏木化石博物館がある。恐竜の卵の化石や各種貴石・宝石など石の勉強になる。博物館の200米奥にある駐車場から10分歩いた所に横谷観音がある。歩く道が2本あるが、往路は下って谷を横断する道の方が自然が多くて面白い。10月の横谷観音は紅葉の名所である。展望台からはるか下に紅葉に囲まれた王滝が見える。案内板には王滝まで15分と書いてあってそれは間違い無いが、上りに何分かかるか書いてないところが面白い。展望台からは見えないが王滝の他に近くに大滝というのもあるので注意。
さらに西に下った所に蓼科パークホテルを中心にした観光施設蓼科グリーンバレーがある。構内に乙女滝という滝があり、水が多い季節には見事である。乙女滝から川を溯っていくと王滝に達し、さらにハイキングコースが続く。グリーンバレーから国道299号線を更に下って別荘地を過ぎた辺りに同じ経営になる蓼科ハーブ園があり、その中央の奥蓼科に分かれる道のT字路に面して大きな水車が回っているのがハーブと蕎麦を売り物にした即売店である。ここのそばはムードはないが実質本意で安くて美味である。ハーブ園より少し上の位置に柊という名の蕎麦屋があり、ここは雰囲気があり入って損をしない店であろう。
国道299号とほぼ平行して南を通り奥蓼科温泉で行き止まりとなる道を湯の道という。明治に開業した明治温泉は看板から車で入れるが道も駐車場も狭いので歩くことを苦にしない人は湯の道に駐車して下りた方が賢明である。ここの目玉は渓谷美の園地があることだ。鉄炭酸泉の温泉だが風呂だけの客は歓迎されない。渓谷を渡って山に分け入る小道を進むと小1時間ほど山道を歩いて王滝に至る。
湯の道をさらに上ると、渋・辰野館があり、ここの温泉を神功皇后が取り寄せて朝鮮征伐の傷病兵を癒したと書いてある。武田信玄が傷兵を湯治させた信玄の薬湯が林に開けた露天風呂など風呂だけでも入湯料1,500円で入れてくれる。明礬と炭酸を含む硫黄泉の白濁した独特の温泉で、天然の湯の花も売っている。更に進むと車がすれ違えない狭い道となり硫黄の臭いが強い硫化水素型硫黄泉の渋御殿湯で行き止まりとなる。ここも信玄の秘湯を称し風呂に入ることができる。
辰野館の下を北に下る道があり、秋は唐松の黄葉が美しい。谷を渡ったところに渋川温泉保科館があり、ここでは炭酸水素塩泉の茶白濁した温泉の露天風呂に入れてくれるし、茶色の湯の花もある。
Venus lineは茅野駅の東から始まる。国道299号線の芹ケ沢交差点の近くでVenus lineと国道が最も近づき、そこから善光寺平に進軍する信玄の軍道であった大門街道が分かれている。交差点から100米下に、信玄が遠征途上お茶を入れて休んだというお茶清水がある。白樺湖に急ぐ場合は大門街道を行く方が近道だし、紅葉時に夕日の大門街道は特に美しいが、話の都合上Venus Lineを更に上ることとしよう。芹ケ沢から車で数分上ったところにあるのがバラクラ(薔薇色の暮し)English Gardenという英国庭園とガーデニング店である。物価の高い英国価格になっている点が欠点だが「八ヶ岳の英国」を感じ、トップレベルのガーデニングに触れることができる。続いてVenus Lineを上ると東急リゾートタウンに上る道が頭上の陸橋経由で左に分かれる。更にVenus lineを上れば、左に千本のソメイヨシノの若木が5月に入ってから咲く聖光寺が、右に蓼科湖がある。蓼科湖を見下ろす白い7階建のホテル蓼科インターナショナルにはローランサン美術館がある。年をとってから始めたという仏女流画家で、自らの若さへの回想か、幻想的な若い女性像がロマンティックで女性に人気がある。美術館に隣接して蓼科高原芸術の森彫刻公園がある。
更に6 kmほど上ると、右に日本ピラタスに登るT字路に出る。PilatusはスイスのLuzernからロープウェイで上る有名な独立峰の岩山だが、日本ピラタスも横岳ロープウェイで上る。上には八ヶ岳が噴き出した溶岩の鬼押出しがあり、坪庭と呼ばれている。ゴツゴツした溶岩の間を周回する道があり、季節によってイワカガミ、シャクナゲ、マツムシソウなどが咲く。登山の出発点としても便利だが、そこまでいかずともロープウェイの上の駅から南行して縞枯山の麓を通り抜けて麦草峠に出る道は上り下りもなくハイキングによい。縞枯山はトウヒなどの樹木が横縞状に枯れては新しく再生する面白い現象から名付けられている。ロープウェイの両側でも同様の現象が見られる。下の駅と周辺には美術館、水族館、土産物店などがある。冬は巨大なスキー場となる。
さらに10 km上れば白樺湖と遊園地に達する。やや有名になり過ぎてひらけ過ぎた観光地である。蓼科テディベア美術館、蓼科アミューズメント水族館、白樺湖ファミリーランドなどがある。高原の湖を求めるなら更に白樺湖から5 km北の女神湖の方が良い。または白樺湖に達する前に右に分かれるVenus Lineの分岐道を行けば直接女神湖に行く。諏訪から見ると諏訪富士の名の通り独立峰に見える蓼科山は女神湖から見ると尾根が伸びていて富士にはほど遠い。しかし荒々しい浅間山が男神で優美な蓼科山は女神だそうで、そこから人造湖の名がついている。女神湖では湖畔の売店の右側にある木道の野草園が必見である。湖の北端には大正池のように水に浸かって枯れた木々が水面に立つ。女神湖を見下ろす山にゴンドラまたは車で上ると高原植物園の御泉水自然園がある。
Venus Lineが白樺湖に達する手前には、左側の北向き斜面にスキー場が幾つかある。その一角に白樺湖高原美術館があり、山岳絵画の展示がある。
女神湖の南側の山に広がるのが蓼科牧場である。女神湖から東に下る道を行くと、まず右側(南側)に蓼科第二牧場の売店がある。さらに下ると道端左に乳牛の置物があるT字路があり、左折すると長門牧場の駐車場・売店に入る。いずれも観光牧場でお土産が充実している。
白樺湖北端の大門峠は信玄が善光寺平を目指して超えていった峠である。ここからVenus Lineは有料道路となり、なぜか樹木が少なく草と潅木に被われた車山、霧ケ峰の麓をぬうように行く。スキーで有名な車山の駐車場からロープウェイで高山植物の上を車山山頂に登れば、360度の展望と自然に恵まれた下りのハイキング道がある。Venus Lineを更に北に進むと、車山の麓に売店と駐車場が左側に2個所ある。どちらもよいが、先の方(北の方)に車を止めて駐車場の下に下ればレンゲツツジの群生があり6月が美しい。山側に上れば、7月にはニッコウキスゲ、8月にはマツムシソウの草原がある。標高と日当たりによって開花時期が違うので、ここでニッコウキスゲの花の時期を逃したとしても、車山山頂までどんどん登って行けば見られるし、もう少し北側に回り込めば最盛期ということもある。
更にVenus Lineを進めば、料金所を出たところで霧ケ峰自然館があり、この地方の動植物の展示がある。付近には高山植物がいっぱいの霧ケ峰牧場の霧鐘と展望台、グライダ滑走路がある。Venus Lineをもっと行けば、八島湿原がある。尾瀬と同じ原理で出来た高原の湿原の南限で、高山植物が豊かな一周1時間の周回道があり、東端には狩猟祭が中世に行われたという御射山(みしゃやま)遺跡がある。高山植物が一番奇麗な部分は駐車場から入って左右数百米の間である。
Venus Lineはどんどん上って美ケ原まで続く。美ケ原は元々は夏用の高原牧場だが、観光客にとっては高原探勝路である。箱根彫刻の森と兄弟に当たる野外彫刻美術館があり、また屋内にも絵画の美術館がある。合わせて美ケ原高原美術館という。美ケ原はもう松本市のすぐ近くである。
Venus Lineは、新緑の時期、夏の緑濃い時期、紅葉の時期、いずれも美しいドライブコースである。