SYSTEMA by MITO YUKO
見えなくなった巨大システム
− 鉄道事故はなぜ起こるのか?−
( 2005.10 )
都内 PTA連合会さん主催 講演会 にて
◇ 現代人の日常生活は 巨大システムに支えられている。
電力、ガス、上下水道、宅配便や鉄道のネットワークといったところだけでなく、
このごろは携帯電話やインターネットのように、子どもたちの遊びのシーンにまで
日常的に登場する巨大システムも現れてきた。
ところが大変に困ったことに、巨大システムには、その働く様が
人間の肉眼ではとらえ切れないという特徴がある。
X というボタンを押せば、Y という結果が得られることは、わかっていても、
その仕組みがどういうものであるかは、誰も手にとって見ることができない。
無数の巨大な「ブラックボックス」に囲まれて生きるのが、現代人であり、
いまの子どもたちなのだ。
◇ おかげで心配事も増えている。
執拗ないじめや家庭内暴力、繰り返されるリストカット、
さらには「人を殺す経験がしてみたかった。誰でもよかった」という
全くゾッとする動機の犯罪の増加…。
最近の事件の傾向を見ていてつくづく感じるのは、
人間の「生きている実感」が希薄になりはじめているということだ。
自分の日々の生活が、どういう人たちによって、どう支えられているかが
もっと見えていたならば、いまいる自分の位置が
もっとはっきりと 実感できていたならば、
起き得なかった事件ではなかったかと思うのである。
◇ 普段、わたしたちの生活の場では、ほとんど見かけることがないけれど、
巨大システムというものは、どんな場合でも人間が支えている。
毎日、空気のように提供されている「安全」でさえ、
実は大勢の人間が想像力を駆使し、手足を使って支えている。
便利さと忙しさに慣れ過ぎて、親たちの世代が見過ごしてきたものに、
いま子どもたちは敏感に反応しているのではないだろうか。
鉄道は日本でこそ身近に観察できる巨大システムだ。
JR福知山線の事故の背景にも触れながら、人とシステムの関わりを考える。
※参考
・『定刻発車』 ( 2001 交通新聞社, 2005 新潮文庫 )
・三戸ホームページ(SYSTEMA by MITO YUKO )
http://club.pep.ne.jp/~mito.yuko/
(いずれも 三戸祐子 )
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