ウェイトトレーニングの基礎知識


 このホームページを見て下さる方の中に,ウェイトトレーニングをあまり知らない方も 多くおられるようですので,ウェイトトレーニングに関する一般的な知識をまとめてみました。 伸び悩んでいる初心者,中級者の方にも知識の再確認としてお役に立てば,と思います。





目 次

  1. ウェイトトレーニングとは?
  2. 筋力向上の最重要項目・超回復について
  3. 栄養と休息について
  4. トレーニングの基本種目
  5. トレーニングに関する基礎知識
  6. トレーニングに関する理論について
  7. トレーニングメニューの構成例
  8. 記録は必ず伸びます!!
  9. パワーリフティングのフォームについて
  10. MAX早見表




ウェイトトレーニングとは?



 ウェイトトレーニングとは,ダンベルやバーベルなどの重量物を用い,日常生活では かからないような負荷を筋肉へ与えることにより,筋肉を大きくしようとするものです。 筋肉を大きくした場合のメリットは下記の通りです。また、筋肉はそう簡単には発達 しませんから,ボディビルダーのようにムキムキになることを心配する必要は全くあり ません。

  1. 消費カロリーが増えるため肥満になりずらくなる。
  2. 腰痛,肩こりが解消される。
  3. 様々スポーツをする上での基礎体力を向上できる。
  4. 夏の海で注目されるかも・・・など

 全身の筋肉の発達自体を競うものがボディビルディングであり、さらにウェイトトレーニング の基本種目で力比べをするのがパワーリフティングです。
 ウェイトトレーニングの専門家であるボディビルダー達の経験や、最近の生理学に関する 実験などから,筋肉を増やすためのトレーニング方法はある程度確立しています(まだまだ 未知のことも多いですが)。このページでは、筋肉を発達させる近道となるような一般的な ウェイトトレーニングに関する知識をお教えしようと思います。




筋力向上の最重要項目・超回復について



 ウェイトトレーニングでなぜ筋肉を大きく発達させられるのでしょうか?その原因は 『超回復』にあります。下図に筋肉の状態と時間経過のグラフを示します。縦軸が筋肉の 状態を表し、上の方が発達した良い状態を表します。横軸は時間経過です。


 A:トレーニング開始
 B:トレーニング終了
 C:超回復開始
 D:超回復終了

 A−Bにおいてウェイトトレーニングで筋肉を疲れさせます。その後、十分な栄養と 休息を筋肉へ与えると、B−Cのように筋肉の疲労が回復して行きます。さらに、C−D の間にはトレーニングをする前よりも筋肉が発達した状態になります。この、トレーニング 前よりも回復した状態を『超回復』と呼んでいます。C−Dの期間にもう一度ウェイト トレーニングをすると、その次の超回復ではさらに筋肉が発達します。この繰り返しで 少しずつ筋肉が発達してゆくのです。

 B−Cの期間は人によって、またトレーニング強度によって異なります。一般には 2日〜1週間と言われています。また、C−Dの超回復の期間は1週間くらいだと思います (C−Dの期間については書籍等で見たことがなく、私の経験的な値です)。

 トレーニングの間隔を空けすぎると、C−Dの期間を逃してしまい、筋肉が発達しません。 これを『アンダーワーク』の状態であるといいます。

 トレーニングの間隔が短すぎる場合は、B−Cの期間にトレーニングすることになり、 筋肉が発達するどころか逆に扱える重量が低下してしまいます。これを『オーバーワーク』 の状態であるといいます。

 オーバーワークやアンダーワークを避けて筋肉を発達させるためには、以下のことが必要だと 思います。

  1. 計画的にトレーニングを行う。
  2. トレーニング記録をノートなどに必ず残す。
  3. ノートをもとに、トレーニング間隔などを変更する。
      数週間記録が向上しなければ、超回復を逃しているはずです。
  4. 栄養と休息を十分に取る。

 トレーニング自体は筋肉を疲労させるだけですので、できるだけ短時間で済ませて、休息期間を十分に確保しましょう。休息期間に筋肉が発達するのです。また、オーバーワークに陥ると、どんなにトレーニングを頑張っても記録が伸びなくなり、トレーニング自体が楽しくなくなります。まじめな方ほど陥りやすいですので十分に注意して下さい。

 ボディビル系の雑誌などで紹介されているプロビルダーのトレーニング法はまねしない方が賢明です。彼らはステロイドを使用しており、一般人よりも数倍筋肉の回復力が高いからです。(科学的なボディビルディング(4)参照)まねするなら、種目を減らすかトレーニング間隔を2〜3倍にすべきでしょう。

 ウェイトトレーニングは、手のひらに皮の厚い部分を作るのに似ています。皮を厚くするには、まずこするなどして皮膚を削らなくてはなりません。これが、トレーニングに当たります。その後、いつのまにか皮が厚くなってゆきますが、これが超回復にあたります。また、皮膚の削り方が激しすぎると皮膚や破れてしまい、逆に皮が薄くなってしまいますが、これがオーバーワークに当たります。いかに、ちょうど良い刺激を与え、皮を厚くして行くか、この考え方はそのままウェイトトレーニングに当てはまると思います。




栄養と休息について



 ウェイトトレーニングを始める目的である『筋肉』ですが、トレーニングだけでは大きくなりません。トレーニングで疲労した筋肉へ適切な栄養と休息を与えて,『超回復』を引き起こすことが必要です。

 栄養のうち,もっとも大切なのが『タンパク質』です。筋肉の材料になるものです。

    タンパク質の必要量 = 体重 × 2〜3 [g/1日]

 この程度のタンパク質を1日に摂取する必要があります。体重が65kgの人であれば130g以上のタンパク質が1日当たり必要です。普通に食事をとると60g程度しか摂取できませんので,各食事では肉類,魚類を多く摂取するように心がけましょう。

 ただし、1回の食事で吸収できるタンパク質の量は30〜50gと言われています。したがって、一度にどかっとではなく,こまめにタンパク質を摂取した方が良いです。そのためには,プロテインを食間に飲むのが便利です。プロテインはタンパク質を主成分とする補助食品で、低カロリーですので肉をたくさん食べるよりも太らずに済みます。

食品中のタンパク質の量(例)
食品タンパク質[g/100g]カロリー[kcal]
牛肉(もも,脂身無し) 22143
鶏(胸肉,皮なし) 23120
プロテイン(タニヨウ,ミックスプロテイン) 93358

 タンパク質をたくさん食べると,吸収されなかった分が腸内で分解されて,体に悪い物質が生成されることもあるようです。これを防ぐために,野菜など繊維質もたくさん食べましょう。トレーニングによってビタミン類もたくさん消費されますので,これを補うこともでき一石二鳥です。

 休息ですが,睡眠時間に筋肉が回復しますので,たくさん睡眠をとった方が良いです。そういう私は6時間くらいしか寝ていませんが・・・。また、ストレスを感じるとこれも筋肉の回復を阻害しますので,ゆったりとした気持ちでいるのが良いようです。牛のような生活がベストですね。

 実生活の中では理想通りには行きませんが,『筋肉をつけたい!』という気持ちを持ち続ける限り多少の不都合(睡眠時間不足,仕事でのストレス)があっても,筋肉は発達すると思います。また、仕事のストレスをトレーニングにぶつけることで,ストレス解消とともに自分の限界を超えるような質の高いトレーニングができるように思います。


トレーニングの基本種目



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トレーニングに関する基礎知識



 トレーニングメニューを考えるときに考慮すべき事項は下記の通りです。
  1. 大筋群(胸,脚,背中)から先にトレーニングする。

  2. もっとも鍛えたい部位は先にトレーニングする。

  3. 1部位に1〜2種目,セット数は3セット以下にする。
     トレーニングの質を高め,少ないセット数で追い込むことを心がけましょう。
     本番セットの前にはウォーミングアップのセットを行いましょう。

  4. 1部位ずつまとめてトレーニングを行う。
     例えば,背中の種目を全て終えてから次の部位(例えば胸)へ移るようにしましょう。

  5. インターバルは長くて良い。
     筋肉の張りがある程度解消され,やる気が戻ってから次のセットに進みましょう。

  6. 8〜10回挙上できる重量を選択する。

  7. 挙上は爆発的に,加速しながらが非常に重要

 大筋群(胸,脚,背中)をトレーニングする場合には,例えば胸のトレーニングでは 胸だけ動かすわけにいきませんので,必ず補助として腕などの小筋群が使用されます。 したがって、先に腕をトレーニングしてしまうと、胸のトレーニングをしているにもかか わらず,腕だけが疲れることになります。

 トレーニングでどんどん体力が消耗しますので,特に鍛えたい部位は体力の充実した 最初のうちにトレーニングするようにしましょう。

 トレーニングは筋肉を疲労させることです。その後の超回復を引き起こすためにも, 種目・セット数ともに控えめにして体力の消耗を抑えた方がよいです。トレーニング を終えて一休みしたら,またトレーニングをやりたくなる程度が良いようです。ぐったり してしまうようではやりすぎでしょう。

 ただし、初心者の場合,フォームがしっかりするまでは,セット数が多めの方が良い ようです。この場合は限界まで追い込まず,あと数回挙上できるくらいで各セットは 終えるようにして、5セット程度行った方が良い結果が得られるかもしれません。

 また、中上級者が同じトレーニングで反応が鈍くなった筋肉へ新たな刺激を与えたい場合に、期間を限定して(2〜3週間程度)へとへとになるようなトレーニングを行うことは有効だと思います。

 トレーニングの内容を計画的に変更する方法を『サイクルトレーニング』といいます。別なページで詳しく書いてありますが,パワーリフターが一般的に行っている大変効果的なトレーニング方法です。『プラトー』と呼ばれる記録の停滞期に陥ってしまった方には是非お薦めします。

 トレーニングの『量(セット数)』と『質(限界まで追い込むこと)』をどちらも追い求めることはできません。陸上競技に例えると,量のトレーニングはマラソンであり、質のトレーニングは100mダッシュになります。マラソンの距離を100mダッシュの早さで走ることは不可能なのです。オーバーワークになってしまいます。また、短距離走の選手が筋肉質の体型であるように,筋肉を付けるためには『質』のトレーニングが必要です。
(『質』のトレーニングが必要な理由は『スポーツの神経生理学』を参照して下さい)

 筋肉を発達させるためには,たくさん筋破壊を引き起こし,超回復のきっかけを作る必要があります。インターバルが短いと乳酸がたまってしまい(バーンといって熱く焼けた感じがします)筋肉が動かなくなります。しかし、これでは筋力を限界まで出し切ることはできません。セット間に十分に乳酸を除去し,筋肉の力を限界まで引き出しましょう。

 メイン種目で十分に筋破壊を起こした後に,補助種目でバーンを引き起こすことは効果があるかもしれません。バーンには成長ホルモンの分泌を促す効果があるからです。
(バーンの効用については『スーパーセットを科学する』を参照して下さい)

 トレーニングをしていても目標の筋肉を動かさなければ意味がありません。筋肉を意識して収縮させるためには,8〜10回挙上できる程度の重量にしておいて、各挙上において十分に筋肉を意識するようにしましょう。あまり重いものを扱うと,挙上だけで精一杯で筋肉への意識集中が難しいように思います。

 バーベルの挙上は爆発的に加速しながらが原則です。素早く行うことで,乳酸がたまる前に力を出し切り筋破壊を多く引き起こすことが出来ます。さらに爆発的挙上が,筋肥大に重要な役割を有する速筋繊維を刺激するのです。



トレーニングの理論について



 最近,フレッド・ハットフィールド氏のホームページを見て勉強しているのですが,トレーニング理論に関する話がありましたので,ちょっとまとめてみました。私の英語力に限界がありますので,間違いなどあるかもしれません。興味のある方は原文を読まれることをお薦めします。

  1. 個人差の原則
    ・エクササイズの刺激に対する反応の仕方は誰でも同じ
    ・しかし,結果が出るまでの時間や,結果の現れ方は遺伝子により個人差がある

  2. 補償過剰の原則
    ・たとえば、手のひらの擦れる部分にタコができるように、人間には遺伝的にストレスに対抗するメカニズムが備わっている
    ・同様に筋肉も,トレーニングに反応してその強さと大きさを増す

  3. オーバーロード(負荷をどんどん強めること)の原則
    ・2の原則により筋肉はトレーニングに適応して強化されてゆく
    ・したがって、トレーニング強度はどんどん強めてゆかなければいけない

  4. SAID(Specific Adaptation to Imposed Demand)の原則
    ・筋肉はストレスに対して非常に限定的に適応する
    ・したがって、爆発的に力を発揮したい人は,爆発的に力を発揮するようなトレーニングをしなければいけない
    ・持久力を鍛えるトレーニングを一緒に行った場合,力をつけるトレーニングの効果はかなり限定されてしまう

  5. 使用/未使用の原則
    ・筋肉はトレーニングすれば発達するが,トレーニングをやめると低くなったストレスレベルに合わせて筋力低下がおきる
    ・『マッスル・メモリー』というものがあり、一度筋肉をつけてから筋力が低下した場合,もとの力に戻るのは,初めてそこまで筋力をつけるよりも容易である

  6. 特異性の原則
    ・神経系は特定の動きを繰り返したときに,この動きに適応する
    ・たとえば、スクワットはレッグプレスを繰り返すよりも,スクワットを行った方が強くなる

  7. GAS(General Adaptation Syndrome)の原則
    ・GAS理論は、個人のストレスへの適応能力を示すものである。身体の反応を、以下の3段階に分けている。

    1. ショックまたはアラーム(警告)段階
      • 強いトレーニングの刺激によってもたらされる。(オーバーロードの原則)
      • 1〜2週間続き、筋肉痛、関節痛、一時的なパフォーマンスの低下がみられる。

    2. レジスタンス(抵抗)段階
      • 身体が、生理的な様々な調整を行うことによって刺激に適応する。(補償過剰の原則、SAIDの原則)
      • この段階では、パフォーマンスの向上がみられ、この適応は超回復と呼ばれる。

    3. 疲弊段階
      • 刺激が単調であったり、ストレスが大きすぎるとパフォーマンスが低下したり、オーバートレーニング、オーバーワーク、極度の疲労が引き起こされる。
      • 疲弊段階の後には,筋破壊を回復し,適応を行うために低強度のトレーニングまたは完全休息の期間が必要である
      • オーバートレーニングの可能性を小さくし、筋力を最高レベルまで高める方法に、ピリオダイゼーションというシステムがある。

     雑誌などで様々なトレーニングシステムが紹介されていますが,それらは1〜7の原則を具体化したに過ぎません。この1〜7の原則が,科学的に解明されたウェイトトレーニングの理論なのです。(科学的であるが故に,様々な議論が行われており、反論のある原則もあるようです。)




    トレーニングメニューの構成例



     以上,トレーニングに関する一般的な話しをしてきました。ここでは, 具体的なトレーニングメニューの組み方を紹介したいと思います。

     雑誌などで、パワーリフターの練習は1〜3レップスくらいしか行わない 高重量・低回数のトレーニングであるため筋肥大には効果が少ない,という ことが言われています。これは全くの誤解です。パワーリフターは大会を目指して 下記の2種類のトレーニングを行っています。

    1. オフシーズン
       筋肉を増やすことを目的とします。8レップス程度可能な重量を用います。 パワーリフティングの3種目(詳細は別なページを 参照して下さい)の他に,全身を鍛えるような補助種目を実施します。

    2. ピーキング(大会2ヶ月前〜直前)
       8レップスに慣れた身体を最大重量が扱えるようにチューニングします。 回数を次第に減らし,重量を増やしてゆきます。ここでは筋肥大よりも神経系 の発達を目指します。

     上述したパワーリフターのトレーニングが筋肥大に向かない,という誤解は ピーキング期のみとらえたものであり、本来のトレーニングは筋肥大をねらった 合理的なものです。パワーリフティングの3種目はウェイトトレーニングの基本種目 であり、全身の筋肉を増やすには最も適しています。したがって、パワーリフターの トレーニングは初心者の方にもお薦めですし,トレーニング効果がなかなか現れない 中級レベル以上の方にも,プラトーを打ち破る助けとなると思います。

     そこで,以下に一般的なパワーリフターのオフシーズントレーニングメニュー例を 示します。(参考資料:『パワーリフティング入門』,体育とスポーツ出版社)

    *8回できる最高重量が,
      スクワット  140kg
      ベンチプレス 100kg
      デッドリフト 160kg
     の人を想定しています。


    月曜(重いベンチ,軽いスクワット)
    1.ベンチプレス60kg×8,80kg×5,100kg×8,100kg×8
    2.ナローベンチ90kg×8
    3.ディップス自重×10〜20
    4.バーベルカール20kg×8,30kg×8,30kg×8
    5.プレスダウン2セット

    水曜(重いスクワット)
    1.スクワット60kg×8,100kg×5,120kg×8,140kg×8,140kg×8
    2.ハイバースクワット120kg×8,120kg×8
    3.ラットマシンプルダウン2セット
    4.プーリーロー2セット
    5.クランチ3セット
    6.カーフレイズ3セット

    金曜日(軽いベンチ)
    1.ベンチプレス60kg×8,75kg×5,90kg×8,90kg×8
    2.ナローベンチ85kg×8
    3.ディップス自重×10〜20
    4.バーベルカール20kg×8,30kg×8,30kg×8
    5.プレスダウン2セット

    土曜日(デッドリフト,軽いスクワット)
    1.スクワット60kg×8,100kg×5,120kg×8,120kg×8
    2.ハイバースクワット100kg×8,100kg×8
    3.デッドリフト60kg×8,100kg×8,140kg×5,160kg×8,160kg×8


     パワーリフティングのオフシーズントレーニングの要領をまとめると下記のようになります。

    1. 1つの筋群に週2回トレーニングを行う
       ただし、固有背筋は回復が遅いのでデッドリフトは週1回とする

    2. 限界まで追い込むのは週1回とし、もう1回は重量を軽めにする(重い日の80%程度)

    3. 追い込むセットは2セットで十分である(逆に2セットで追い込めるように集中力を高めること)

    4. 補助種目は1〜2セットで十分である(オーバートレーニングを避ける)

     なお、各人の回復力に合わせて補助トレーニングの量は変える必要があります。また、週2回以上トレーニングできれば上記のメニューを組み直して記録を伸ばすのに十分なトレーニングを行うことができます。逆に,週4回以上のトレーニングはオーバートレーニングの元になりますので注意しましょう。

     重量設定ですが、基本的には8レップス×2セットができたら、次の週には2.5kg〜5.0kg増やしてゆきます。トレーニングを始めた頃には、自分が何kg挙げられるのかわかりませんから、8レップス×2セットが簡単にクリアできる重量(まったくの初心者でしたらバーのみ(これでも20kgあります)でOK)からスタートすると良いでしょう。毎週少しずつ重量を増やして、自分の力を確かめながら進めてゆきましょう。

     計画的にトレーニングを進めることが肝心です。必ずトレーニング記録をメモして残し、常に先週よりも1レップス以上高い目標を立て、これをクリアしてゆくのです。この少しずつの積み重ねが、1年たつと大きな成果として現れるはずです。急に力は付いてくれませんが、少しずつ着実に伸びてゆくのです(1レップスも伸びない状態が続く場合は、オーバートレーニングと判断して良いと思います)。トレーニングに近道はありませんが、成果は必ず現れるものです。

     扱う重量が増えてくると、回復までの期間が1週間では不足するため、毎回限界に挑戦していては記録が伸びなくなります。ここからは、サイクルトレーニングがお勧めです。詳しくは別なページをご覧ください。サイクルトレーニングを始めるには、トレーニングにおいて限界まで追い込めるようになっていることが前提となります(力を出し切れていない、ということは、まだ余裕があるわけですから、もう少しトレーニングで追い込むことをまず習得すべきです)。中級者以上向けのトレーニング方法といえるでしょう。






    記録は必ず伸びます!!



     これまで書いてきたことを一通り読んで頂ければ,筋肉を付けるためのトレーニングがどんなものかわかっていただけたかと思います。しかし、記録が伸び悩むことは誰にでもあることであり,私も例外ではありませんでした。一時期,自分の限界はこの程度か,とあきらめかけた時期もありました。ここでは、私がいかにして記録の停滞期を脱出したかをお話しします。

    1. 第一の壁 学生時代

       私は大学時代にボディビル部でウェイトトレーニングを始めました。当時,先輩からトレーニング種目を教わるとともに,自分で雑誌を読んでトレーニングルーチンを考えていたものです。以下のような内容でした。

      • 週6日トレーニングを行う
      • 胸,背,脚の大筋群を週2回ずつ限界まで追い込む
      • 本番セットは5セット(地獄の苦しみです(^_^;))
      • 1パートに2種目以上行う
      • 毎回フォーストレップを使う
      • トレーニング計画は立てない

      今考えると超回復GASの原則を全く無視した練習方法でした。しかし,同期には強くなる者もいましたし、雑誌には48時間で筋肉は回復するとしか書いてませんでしたから,正しいと信じてがむしゃらにトレーニングしてました。

      東北学生新人戦で6位に入賞したものの、それ以降はなかなか筋肉が付かなかったです。ボディビルダーとしての戦績は,東日本学生大会の19位が最高で,全日本大会では予選落ちでした。

      この頃は,プラトーを破るためにより強度の高いルーチン(マルチコンパウンド法,レストポース法,スーパーセット,POF法;いずれも雑誌の記事を参考にしてました)を実施していましたが,効果は一時的でしかありませんでした。また、肩や膝に常に故障をかかえる状態でした。

    2. 第2の高い壁,社会人1〜2年目

       社会人となりましたが、それでも疲れた体にムチ打ってできるだけトレーニングを続けていました。

      • 週3日以上トレーニングを行う
      • 胸,背,脚の大筋群を週2回ずつ限界まで追い込む
      • 本番セットは2〜3セット
      • 1パートに2種目以上行う
      • 毎回フォーストレップを使う
      • トレーニング計画は立てない

      この頃も,結局学生時代と同様のトレーニング方法でした。ふらふらで,仕事中に睡魔がおそうこともあり、疲労困憊の状態でした。記録は低迷し,学生時代より落ちてくる始末で、自分にはボディビルの才能がないんだ、と半ば信じ切っていました。

    3. 復活のきっかけをつかむ,社会人3年目

       この頃,ジム通いを止めて会社のサークルに入部し、会社のトレーニング室で練習をするようになりました。その関係で,再びパワーリフティングの大会に出るようになったのですが、記録は学生時代を80kg程度下まわるさんざんなものでした。

       しかし、このことが逆に,これまでの練習を根本から見直す踏ん切りとなりました。この年はいろんなシステムにチャレンジしました。

      1. エブリデイトレーニング

         例えば,ベンチプレスの場合,週5日3セットずつベンチプレスを行うものです。超回復の原理を無視してますが,これが大変効果がありました。3週間でベンチプレスが5kg伸び,上体の筋量増加が著しかったです。しかし、3週間を過ぎると疲れから逆に記録が落ちるようになりました。
         このとき学んだ基本は,10レップス×3セットを基本とし、それができたら2.5kg使用重量をアップして,また10レップス×3セットできるまで頑張るというものです。それまで、全セットでフォーストレップまで使って限界まで追い込んでいましたから,3セット目で限界を迎えるという考え方は大変新鮮な体験でした。

      2. 週1回トレーニング+漸進的負荷増加+フォーム改良

         エブリデイトレーニングで疲労した体を休めるため,トレーニング頻度を週1回とし、使用重量も大幅に減らして、毎週少しずつ重量を増やすようにしました。10レップス×3セットは続けていました。また、肩や膝に故障をかかえていたので、負担を減らすためにスクワット、ベンチプレスのフォームをパワーリフティングのフォームに変えました(このころはデッドリフトはやっていませんでした)(注記1)。この練習によってエブリデイトレーニングで伸ばした記録を更に伸ばすことができたのです。不思議でした。こんな楽なトレーニングでなぜ記録が伸ばせたのか?と。週1回、しかも限界まで追い込まなかったのに記録が伸びたのです。これまでトレーニングの常識と信じていたものが、がらがらと崩れてゆきました。

      3. サイクルトレーニング

         しかし、上記のトレーニングも一度重量が限界に達してしまうと毎回限界への挑戦となります。ここで、また記録が伸びなくなりました。このとき出会ったのが、パワーワールドニュース等で紹介されていた『サイクルトレーニング』というものです。このトレーニング方法を知ることにより、やっとコンスタントに記録を伸ばせるようになりました。記録が伸び始めたことからパワーリフティングがとても面白くなり、このころから真剣に取り組み始めました。

    4. やっとわかった、記録を伸ばすトレーニング

       以上、約12年をかけて私が学んだ記録を伸ばす、すなわち筋肉を増やすためのトレーニング方法をまとめると以下のようになります。

      • 毎回限界まで追い込むよりも、毎回負荷を増やしてゆく方が重要です
      • 私の知っているトレーニングシステムではサイクルトレーニングが最も効果的。必ず記録が伸びます
      • 毎回のトレーニング重量/回数はあらかじめ決めておく。そして、今日のトレーニングをやり遂げれば、サイクルの最後で自己記録を更新できるんだとイメージすることが大事。目標設定を明確にすることでやる気が高まり,身体のパフォーマンス向上が期待できます

       現在,私が実施しているトレーニングは下記の通りです。

       練習量が少なくて驚かれる方も多いかと思いますが,筋肉を付けるためのトレーニングは練習量は少なくし、超回復を十分に引き出すことが重要なのです(注記2)。やればやるほど良い,とはいかないところがバルクアップの難しさではあります。しかし、だからこそ時間のないサラリーマンでも記録を伸ばすことができるというのが,ウェイトトレーニングの魅力ではないでしょうか。



    【注記】
    1. パワーリフティングのフォームは、できるだけ多くの筋肉を動員してより重い重量を扱おうとするものです。ボディビルダーを目指しているときは、筋肉をアイソレートして個々に鍛えるフォームを理想としていました。パワーリフティングのフォームを採用して短時間で全身の筋肉を刺激し、休息時間を十分長くとったことも記録を伸ばせた原因かと思います。

    2. 筋力を増やすには神経系と筋肥大の両面から練習方法を考える必要があります(『スポーツの神経生理学』参照)。記録が順調に伸びているうちは、サイクルトレーニングを採用せず、がんがん練習した方が良いと思います。





    パワーリフティングのフォームについて



     これまでの話の中で。パワーリフティングのフォームは全身を使って重い重量を扱うものであり、全身の筋肉の発達には効果的である、と説明してきました。ここでは、ボディビルのフォームとパワーリフティングのフォームを比較し、その特徴を考えてみたいと思います。
    (参考文献:『パワーリフティング入門』,体育とスポーツ出版社)

    1. スクワット

      (1) ボディビルの場合(ハイバースクワット)
      【フォーム】
      バーベルを担ぐ位置は肩の上部
      背中は前傾させない
      お尻の位置はバーベルの下に来る
      膝を前方に出す
      スタンスは肩幅程度

      【特徴】
      膝を前に出すことによって大腿四頭筋の可動範囲を広く取り、大体四頭筋を集中して鍛えるフォームである。膝への負担が大きいため、高重量を扱うことは勧められない。
      (2) パワーリフティングの場合
      【フォーム】
      バーベルを担ぐ位置は肩の下部
      背中の力を使えるようにやや前傾させる
      しりは後方に突き出すように引く
      膝は足先より前方に出さない(膝を左右に十分割ること)
      スタンスは肩幅より広くする

      【特徴】
      大体四頭筋の可動範囲を狭くするとともに、背中、大臀筋、大腿二頭筋もできるだけ使用して高重量を扱うフォームである。個々の筋肉は可動範囲が狭く、膝などの関節にたいする負担が小さいため、安心して高重量を扱うことができる。

    2. ベンチプレス

      (1) ボディビルの場合(フラットベンチプレス)
      【フォーム】
      ベンチ台に自然に横になった状態である
      足、腰には力を入れない
      腕と体の角度は90度くらいになるよう脇を開く

      【特徴】
      大胸筋の可動範囲を大きくし、できるだけアイソレートして鍛えるフォームである。可動範囲が大きいことから肩を故障しやすく、高重量を扱うことは勧められない。
      (2) パワーリフティングの場合
      【フォーム】
      肩甲骨をしっかりと寄せて胸を張り、肩をしっかり固定する
      ブリッジを組み、大胸筋の可動範囲を小さくする
      脇を少し閉めて、背中の筋肉も使えるようにする
      足先は膝より出ないようにし、脚でしっかりと上体を支える(お尻は浮かして、ベンチ台に軽く触れる程度にする感じ)

      【特徴】
      大胸筋の可動範囲を狭くするとともに、背中、脚の力もできるだけ使用して高重量を扱うフォームである。個々の筋肉は可動範囲が狭く、肩にたいする負担が小さいため、安心して高重量を扱うことができる。

    3. デッドリフト

      (1) ボディビルの場合(コンベンショナルデッドリフト)
      【フォーム】
      足幅は肩幅程度
      手幅は肩幅より広くとる

      【特徴】
      腰高であり、脚への負担は少なく、背中・腰に集中して効かせるフォームである。脚が弱く背中・腰の強い人であれば、高重量を扱うことができる。
      (2) パワーリフティングの場合(スモウデッドリフト)
      【フォーム】
      足幅は肩幅より広く取る
      手幅は肩幅程度とする

      【特徴】
      腰を低く下ろし、脚の力を使うフォームである。背中を立てることができるため、背中・腰に対する負担は比較的少なく、全身の力を万遍なく使えるフォームである。脚の強い人であれば高重量を扱うことができる。






    MAX早見表



     トレーニングをしていると、自分の挙げられる最大重量が知りたくなります。そこで、ついつい1レップスしかできない重量に挑戦することになるのですが、1レップスのトレーニングというのは、怪我の危険性も高いですし、筋肉を大きくするのにはあまり有効ではありません(筋肉つくりと固有筋力つくり参照)。しかし、最大重量がいくつか知りたい、という気持ちはなかなか抑えられないものです。

     そこで、普段の練習重量から最大挙上重量を算出する方法が考えられました。算出式は、以下の通りです。

    1. ベンチプレス
         使用重量/40*レップス数+使用重量=MAX重量

    2. スクワット
         使用重量/33.3*レップス数+使用重量=MAX重量

      *参考資料 : 月刊アイアンマン(1993年4月号)

     この式は、経験式であり、何人もの人の練習重量とMAX重量をもとに係数を算出したものです。私の場合、かなり精度良く推定できています。