大久保っちのちっちゃな研究室〜 ハーバーフェルトトライベン (Haberfeldtreiben)の世界 〜燕麦畑の狩人たち〜
 


大久保っち(おおくぼっち)のちっちゃな研究室

   大久保っちのちょっとした研究     



アジア史学習における音楽の教材化の可能性とその問題点1

 日・韓次世代学術フォーラム第2回学術大会で発表した内容の概要です。世界史授業で音楽をどう活用できるか、その問題点は何かを整理しました。

1.はじめに

 音楽教材や視覚教材の活用は、その方法によっては生徒たちの授業に対する興味・関心を持たせるのに有効な手段となりうる。とくに音楽教材については、生徒と教師との間にある距離を一瞬にして縮め、授業の雰囲気を変える効果もあるように思える。


(1)1980年代以降の世界史授業における音楽教材の活用についての先行研究

  @ヨーロッパ中世音楽からバロック音楽までを文化史の学習でどう扱うか
   山本敬久による実践報告→雑誌『歴史と地理』408号(1989年8月,山川出版社)
  A授業活用のしかたに関する三つの類型と使用可能な音楽教材についての今林常美の研究
   →同468号(1994年8月)
  B民族音楽・ポピュラー音楽も視野に入れた音楽教材の活用に関する鳥塚義和による実践例
   →同489号(1996年5月)
  C雑誌『地理歴史教育』の「特集/音楽で学ぶ日本・世界」の中の世界史学習における活用例
   イ)浜田滋郎→クラシック音楽に関して
   ロ)江波戸昭→民族音楽に関して
   ハ)難波達興→アメリカ民謡に関して
  D渡辺修司→近現代のクラシック音楽の作品を中心とした活用例
  E宮腰一→ポピュラー音楽の授業での活用


(2)研究の傾向

 @クラシック音楽・ポピュラー音楽については欧米のものが圧倒的に多い
 Aアジアの音楽については鳥塚義和が触れているのみ
 B授業展開の中でどのように活用するのかについての探究についてはまだ十分とはいえない。

(3)三つの問題意識

 @アジア史学習に関する音楽教材の研究が少ないのはなぜか、それを困難にさせている要因は何か。
 A地域の文化を理解させる上で活用できる音楽教材はないか、そして授業に活用できる場面はどこか。
 B地域の歴史を理解させる上で活用できる音楽教材は何か、授業展開上どのように使うことができるか。


2.実践における使用音楽教材の現状    (1)使用する音楽教材の内訳

 ○(便宜上いわゆる時代区分でいう)中世史から現代史までの授業範囲で使用した音楽教材‥‥約110曲
 ○世界史B(3年生対象)の授業で使った音楽‥‥87曲
 ○87曲中地域別使用音楽‥‥ヨーロッパ60曲、アフリカ4曲、南北アメリカ10曲、アジア11曲、太平洋2曲
 ○アジア学習で使用した音楽の内訳‥‥南アジア2曲、西アジア4曲、東アジア4曲、東南アジア1曲
  →ヨーロッパ史学習に対し、アジア史学習で使う音楽で適切な教材を探すことができない現状


2.実践における使用音楽教材の現状     (2)授業で音楽教材を使う場合の基準

 

@ヨーロッパ史では、時代を反映する同時代的なものを基本として使い、扱う歴史的事件・人物とそれに関する音楽が作曲された年代に開きがある場合は使用を避ける。
A音楽を授業で流す場合の時間の基本は1〜2分程度にする。
Bヨーロッパ以外の地域については同時代的な音楽が少ないため、民族音楽で、授業で扱う地域の音楽の特徴をあらわしているものを使う 。
C教材として使った音楽そのものの音楽史上での位置付けやその音楽の特徴についての説明は、生徒に対して必要と思われる場合でも簡潔に説明するにとどめる。
Dなるべく歌を教材として使い、歌詞カードに原語と対訳がついている場合、それをプリントとして配布する。

(基準を設ける理由)
@生徒が音楽を聴くことに集中できる時間が短いため、器楽曲の場合は長い時間を流すことはできない。
A導入や展開時に音楽教材を使う場合は、音楽教材の選定を誤るとその後の授業の流れそのものに悪い影響を及ぼしかねない危険性がある。

なお、歌詞がない音楽の場合はあくまでもその地域や時代のイメージ作りをさせるのが目的のため、実際の授業では授業プリント配布の際に流す場合が多い。


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