大久保っちのちっちゃな研究室~ ハーバーフェルトトライベン (Haberfeldtreiben)の世界 ~燕麦畑の狩人たち~
 


大久保っち(おおくぼっち)のちっちゃな研究室

   大久保っちのちょっとした研究     



アジア史学習における音楽の教材化の可能性とその問題点3

 日・韓次世代学術フォーラム第2回学術大会で発表した内容の概要です。世界史授業で音楽をどう活用できるか、その問題点は何かを整理しました。

5.歴史を理解する上で活用できる音楽教材と授業における展開方法


(1)「鳥よ鳥よ 青い鳥よ(새야 새야 파랑새야)」を活用した授業展開例
  導入でまず今日の授業内容(甲午農民戦争・日清戦争)を話し、それに関連した歌をこれから流すということを口頭で説明し、韓国語と日本語を併記した歌詞をのせたプリントを配布する際に音楽を流し、生徒に聴かせる。

(2)歌詞の中にある「緑豆」と「青い鳥」と「青舗売り」ということばに注目させ、このことばの意味は何だろうかという問いかけをする

(3)学習内容である甲午農民戦争・日清戦争の経過と結果を板書して授業を展開する中で、再び「鳥よ鳥よ 青い鳥よ」の歌詞を再び見るように指示し、「緑豆」と「青い鳥」と「青舗売り」のことばの意味するものが何かを生徒に考えさせる。
  →ヒントは「緑豆」が全琫準

(4)授業の最後で再び音楽を流して本時の授業のまとめとする。


6.最後に


(1)教育実践の中で感じたのは、東アジアの歴史授業の中で活用する音楽が少ないという点。
  →入手方法の情報や手段についても知らないのが現状。

(2)より生徒が歴史に興味を持って授業に臨むようになるためには教師の絶え間ない教材の工夫が必要
  →音楽教材を使った授業構成とその授業における観点別評価についても今後検討すべき点

(3)音楽教材については各国間の教育者の交流が深まり、情報交換を行うことになれば、授業で活用できる音楽教材を共有することで、その活用の幅を互いに広げていくことが可能
  →音楽教材を使うことによって、生徒の異文化理解にも役立つことも可能。

7.主要参考文献


(1)上尾信也『歴史としての音~ヨーロッパ中近世の音のコスモロジー』,柏書房,1993年
(2)伊藤俊一「歴史教育における視聴覚教材の活用とマルチメディア」~『名城大学教職課程部人間科学研究』, 1994年11月,p.13~30
(3)今林常美「欧米近現代史とクラッシック音楽-世界史教育における文化史教材の一例」~『歴史と地理 世界史の研究 160』,山川出版社,1994年8月
(4)江波戸昭『世界の音 民族の音』,青土社,1992年
(5)江波戸昭「アフリカの思想を伝える民族音楽」~歴史教育者協議会編『歴史地理教育 第407号』,1987年,p24~29
(6)大江志乃夫『岩波講座 近代日本と植民地 7 文化の中の植民地』,岩波出版,1993年
(7)柘植元一・植村幸生編『アジア音楽史』,音楽之友社,1996年
(8)鳥塚義和「世界近現代史の授業で使える音楽教材」~『歴史と地理 世界史の研究 167』,山川出版社,1996年5月
(9)成澤玲子『グリオの音楽と文化~西アフリカの歴史をになう楽人たちの世界』,勁草書房,1997年
(10)難波達興「アメリカ史学習で使える民謡教材」~歴史教育者協議会編『歴史地理教育 第407号』,1987年,p42~47
(11)浜田滋郎「歴史教育と音楽」~歴史教育者協議会編『歴史地理教育 第407号』,1987年,p20~23
(12)朴燦鎬『韓国歌謡史 1895-1945』,晶文社,1987年
(13)宮腰一「視聴覚教材の探し方・使い方(その2)」~歴史教育者協議会『あたらしい歴史教育 第7巻 授業をつくる』,大月書店,1994年
(14)山口幸男・清水幸男・寺尾隆雄・八田二三一・西木敏夫「地理教育と音教材」~『新地理 51-2』,2003年9月,p.20~27
(15)山本敬久「音楽でたどるヨーロッパの歴史-音楽を中心とした文化史学習-」~『歴史と地理 世界史の研究 140』,山川出版社,1989年8月
(16)V.ラーガヴァン編著(井上貴子・田中多佳子訳)『楽聖たちの肖像 インド音楽史を彩る11人』,穂高書店,2001年
(17)David Lambert and David Balderstone,Learning to Teach Geography in the Secondary School-A Companion to School Experience, London ; New York : Routledge, 2000
(18) 渡辺修司「世界史教育における『音』の利用~歴史的イメージと感性の形成をめざして」~『東京学芸大学付属高等学校研究紀要33』,1993年,3月,p.13~31


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